楽天グループは5月16日、同日開催された取締役会において、公募および、第三者割当による新株式発行を決議したと発表した。調達する資金は、約3321億円。
公募による新株式発行では、4億6810万2100株を予定。国内外における同時募集とする。
加えて、代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏の関係者である三木谷興産および、スピリット、並びにサイバーエージェント、東急を割当先とする第三者割当による新株式発行(並行第三者割当増資)も実施する。普通株式7879万9000株を予定しており、三木谷興産2814万2500株、スピリット2814万2500株、サイバーエージェント1876万1700株、東急375万2300株を割り当てる。
なお、三木谷興産とスピリットは発行価格等決定日において決定される発行価額に基づく払込金額の総額がそれぞれ150億円程度。同様に、サイバーエージェントは100億円、東急は20億円程度を見込んでいる。払込金額の総額が見込みを超過した場合、発行価額で除した数(100株未満切り捨て)の普通株式についてのみ申し込むことになるという。
調達した資金は、償還資金として活用する。「楽天モバイル」における第4世代移動通信システム(4G)および、第5世代移動通信システム(5G)に関する基地局等に係る設備投資として400億円を活用し、1483億円を端末購入資金、顧客獲得に関する費用、ローミング費用といった運転資金として充当する予定だ。
同社グループはこれまで、国内外において、Eコマース、トラベル、デジタルコンテンツなどのインターネットサービス、クレジットカードといった多岐にわたる分野で70以上のサービス展開。楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に、サービスを有機的に結び付けながら「楽天エコシステム(経済圏)」を形成している。国内外の会員が複数のサービスを回遊的、継続的に利用できる環境を整備することで、会員ひとり当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化等の相乗効果の創出、グループ収益の最大化を目指しているという。
近年、ユーザーのモバイルシフトが着実に進んでいる中、「楽天市場」をはじめ、同社サービスにおけるモバイル経由の取扱高は一貫して増加傾向にある。
モバイル端末を最も重要なユーザーとのタッチポイントと捉え、楽天モバイル事業の一層の拡大に注力してする一方で、財務健全性の強化も重要な課題と認識。これまで、所有する「楽天銀行」の株式の売出しや、楽天証券ホールディングスによるみずほ証券に対する「楽天証券」の一部株式譲渡をはじめとして、さまざまな非有利子負債性(資本性)資金の調達にも取り組んでいる。加えて、楽天証券ホールディングスの株式上場の準備を進めているほか、親会社や子会社での戦略的業務提携なども柔軟に検討しているという。
今回、モバイルセグメントの営業損失の逓減傾向が確かなものとなり、今後の収益化の目途が立ったこと、前倒しでの基地局設置の実現により当該設備投資額の定常状態への移行が見込まれることなどを背景に、モバイル事業の成長に必要となる資金調達総額を相当程度見通すことが可能になったという。
そこで、新株式発行による資金調達が、当該方針に基づく最適な財務戦略上の選択肢と判断したと説明している。
楽天グループは、サイバーエージェントによる第三者割当を契機として、協業を通じた更なるサービスの充実を目指す。今後協業していく分野として、インターネット広告における広告媒体の営業強化、コンテンツの相互提供などを検討している。
東急とは、2020年7月に両社が蓄積するオンラインとオフラインのデータを活用したデータマーケティングソリューションを提供する「楽天東急プランニング」を共同で設立。2020年9月の営業開始以降、広告・データマーケティング領域のほか、Online Merges with Offline(OMO)領域でのソリューション開発を進めている。今回の第三者割当による関係強化を通じて、東急線沿線を中心にオンラインとオフラインの垣根のない利便性の高いサービスを実現することを企図するという。
なお、新株式発行に伴い、一株当たり株主持分等の希薄化が生じるが、モバイル事業の拡大による楽天エコシステムのさらなる発展や、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、財務基盤の拡充、並行第三者割当増資の各割当先との関係強化などが、当社の企業価値の向上および、既存株主の利益につながるという。
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