パナソニックホールディングスは、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績を発表した。売上高は前年比13.4%増の8兆3789億円、営業利益は19.3%減の2885億円、調整後営業利益は12.2%減の3141億円、税引前利益は12.2%減の3164億円、当期純利益は4.0%増の2655億円となった。
パナソニックホールディングス 代表取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏は、「くらし事業やオートモーティブ、コネクトなどの販売増に加えて、為替換算により増収となった。売上高、利益、EPS、ROE、EBITDAは、2月公表値を上回る着地となっている。また、純利益は米国IRA(インフレ抑制法)補助金見合いの税額控除によって増益になった」と述べた。
さらに「上期は調整後営業利益で539億円の減益であったが、下期は103億円の増益となっている。第4四半期も増益になっている。これまでは原材料価格の高騰やサプライチェーンの乱れに影響されていたが、事業会社の競争力強化などによって改善している。原材料高騰に対する価格改定によるカバー率は2021年度には約3割であったが、2022年度は約7割。さらに第4四半期に向けてカバー率が高まっている」とした。
原材料および物流費高騰のマイナス影響が年間で2243億円となったが、価格改定や合理化などの効果が2246億円となり、ほぼ相殺する格好となっている。為替影響はインダストリーやエナジーではプラス、くらし事業などではマイナスの影響があったが、全社合計では為替影響はゼロとなっている。
2022年度第4四半期において、IRA補助金として、法人税の還付が適用されることを想定し、補助金見合いの税額控除により、当期純利益に400億円を計上した。
なお、IRAは、米国における過度なインフレ抑制と、エネルギー政策の推進を趣旨としているため、得られる補助金は、北米での電動車の普及のために活用。米国における車載電池事業への投資に活用するとともに、北米事業の強化および拡大に向けて、顧客とともに有効活用していくことを考えているという。
セグメント別業績は、くらし事業の売上高は前年比10%増の3兆4833億円、調整後営業利益が91億円減の1224億円となった。国内家電事業における上海ロックダウンの影響や、下期以降の需要減に伴う減販影響があったものの、重点事業である欧州空調や、国内および海外の電材、北米ショーケースが堅調に推移して増収となった。だが、国内家電では、価格改定などの効果があったものの、減販影響をカバーしきれずに全体で減益となった。
くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年比7%増の8967億円、調整後営業利益は105億円減の528億円。空質空調社の売上高は前年比12%増の7610億円、調整後営業利益は1億円増の216億円。2023年4月に発表した衣類乾燥除湿機のリコールに関する費用も計上しているという。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年比30%増の3519億円、調整後営業利益は91億円増の123億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年比11%増の1兆45億円、調整後営業利益は71億円増の520億円。なお、中国・北東アジア社の売上高は前年比9%増の8673億円、調整後営業利益は58億円増の229億円となった。
オートモーティブの売上高は前年比22%増の1兆2975億円、調整後営業利益が118億円増の142億円となった。顧客の自動車生産が回復して増収となった。
コネクトの売上高は前年比22%増の1兆1257億円、調整後営業利益は125億円増の282億円。プロセスオートメーションによる販売減はあったものの、アビオニクスが航空市場の回復により増加。海外向け堅牢モバイル端末の伸⻑や、Blue Yonderの販売成⻑により、増収となった。
インダストリーの売上高は前年比2%増の1兆1499億円、調整後営業利益は234億円減の633億円。EVリレーや産業用リレー、環境車用コンデンサなどの増販があったものの、半導体事業の譲渡に伴う商流変更による減販影響や、下期からの市況悪化によって減収になった。
エナジーの売上高は前年比26%増の9718億円、調整後営業利益が312億円減の396億円となった。産業・⺠生は市況悪化によって、ICT・⺠生機器向けリチウムイオン電池や、B2B向けリチウム一次電池を中心に減販となったが、車載はEV需要の拡大により、北米を中心に生産や販売が拡大。価格改定も寄与して増収となった。
その他/消去・調整は、売上高が3507億円、調整後営業利益が42億円減の464億円となった。エンターテインメント&コミュニケーションでは部材調達の状況が改善したが、市況悪化の影響を受けて減収。ハウジングでは水廻りや建材商材などが牽引して増収になった。
一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)連結業績見通しは、売上高は前年比1.4%増の8兆5000億円、営業利益は前年比49.0%増の4300億円、調整後営業利益は前年比36.9%増の4300億円、税引前利益は前年比43.8%増の4550億円、当期純利益は前年比31.8%増の3500億円とした。売上高は為替影響を除く実質ベースでは前年比4%増になる。
「需要の回復や、IRA補助金見合いの利益計上によって増収増益の計画。当期純利益は過去最高水準となる」とし、「インダストリー以外の4つのセグメントは、市況の改善を前提としており、いずれも増収増益の見通しとした。減収減益の見通しであるインダストリーはICT端末向けの需要が前年を下回る想定だが、下期からは回復基調に転じると見ている。また、過去2年間に渡り、大きな影響を受けていた原材料価格高騰、半導体不足や部材不足によるマイナス影響は、2023年度はおおむね解消すると見ている」とした。
原材料や物流費高騰のマイナス影響は350億円を想定。これに対して、価格改定や合理化の効果では863億円を見込んでいる。
なお、IRA補助金総額の約半分となる800億円を、調整後営業利益に見込んでいるほか、繰延税金資産200億円の計上を見込み、IRAによる当期純利益への影響額は1000億円を想定している。
セグメント別業績見通しは、くらし事業の売上高は前年比3%増の3兆5800億円、調整後営業利益が376億円増の1600億円とした。「欧州の空調や、国内および海外の電材事業の伸⻑に加えて、国内家電のマーケティング強化や価格改定、中国家電の需要回復などにより増収を見込んでいる。くらし事業はすべての分社で増益を見込んでいる」という。
くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年比9%増の9760億円、調整後営業利益は192億円減の720億円。空質空調社の売上高は前年比12%増の9040億円、調整後営業利益は199億円増の420億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年比1%減の3500億円、調整後営業利益は17億円増の140億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年比3%増の1兆300億円、調整後営業利益は118億円増の640億円。なお、中国・北東アジア社の売上高は前年比3%減の7990億円、調整後営業利益は162億円増の380億円となった。
オートモーティブの売上高は前年比6%増の1兆3700億円、調整後営業利益が38億円増の180億円。「自動車生産の回復や、環境車向けのインダストリーセグメント商材の販売増がある」という。コネクトの売上高は前年比1%増の1兆1400億円、調整後営業利益は118億円増の400億円。Blue Yonderが、成⻑に向けた戦略投資の影響で減益となるが、アビオニクスなどの増販益、調達課題解消に伴う原価改善などにより増益を見込んでいる。「Blue Yonderは、とくに重視しているSaaS販売が順調に成⻑している。戦略投資を除く実力値ベースでは増益を見込んでいる」とした。
インダストリーの売上高は前年比5%減の1兆900億円、調整後営業利益は33億円減の600億円。リレーやコンデンサなどは増販を見込むほか、原材料高騰を合理化や価格改定でカバーするが、為替影響などがあり、減収減益の計画としている。エナジーの売上高は前年比6%増の1兆300億円、調整後営業利益が954億円増の1350億円とした。「車載向けは、EV需要の拡大継続や生産性改善により、好調に推移。産業・⺠生向けは、足元では市況悪化による減販が続くが、第2四半期後半からの販売回復を見込み、年間では増販を見込んでいる」という。なお、IRA補助金総額の約半分となる800億円は、エナジーセグメントに含んでいる。その他/消去・調整は、売上高が2900億円、調整後営業利益が294億円減の170億円としている。エンターテインメント&コミュニケーションおよびハウジングはいずれも増収を計画している。
一方、成長領域とする「車載電池」、「サプライチェーンソフトウェア」、「空質空調」への取り組みについても説明した。
車載電池では、2023年2月にカンザス工場の建屋工事を着工。2023年4月にはヘキサゴンプルスとの契約を締結したことを報告。サプライチェーンソフトウェアでは、Blue Yonderが今後3年間で2億ドルの戦略投資を行い、成⻑に向けたトランスフォーメーションを推進。空質空調では、欧州のA2W(Air to Water)事業が引き続き大きく成⻑。チェコ工場での生産増強については、2022年10月の発表に続き、2023年3月にも追加発表したことを示した。
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