パナソニックは4月11日、「新たな『商売』の基準について」をテーマに、IoT家電とサービスの取り組みについてセミナーを開催した。IoT対応家電の保証を計3年間無料にする「IoT延長保証」など新たなサービスについても触れた。
パナソニック 執行役員コンシューマーマーケティングジャパン本部長兼くらしアプライアンス社 副社長国内マーケティング担当兼パナソニック コンシューマーマーケティング代表取締役社長の宮地晋治氏は「『より良いくらし』と『持続可能な地球環境』を両立し、くらしを支えるベストパートナーになれるよう取り組んでいく」とパナソニックが目指す姿を表現した。
国内家電に対するこれまでの取り組みとしては、IoTを活用した新製品や家電連動による「音声プッシュ通知」サービスなど、IoTを活用した「ちょうどいいくらし」サービスを紹介。ユーザーからは「外出時の切り忘れを外出先で操作できた」「電気代の見える化で省エネの意識が高まった」など、暮らしにおける意識が変化し、新たなアクションにつながっているとのこと。
宮地氏は「エアコンと洗濯機のアプリ利用者の満足度は、アプリを利用していない人よりも高い。便利というだけではなく、アプリを使うことによってお客様の行動や意識の変化につながっており、これは家電のハードだけではできなかったこと」とした。
昨今の環境変化については、電気代高騰を受けての「節約・節電」と「家電製品を長く大切に使いたい」というニーズの変化を捉え「時代の転換点である今だからこそ、一人ひとりに向き合いテクノロジーで暮らし、社会、地球に貢献できることは何かを追求していきたい」とコメント。
その中で「サニタリー、リビング、寝室、キッチンと多くの暮らしのシーンや居住空間に接点を持っているのはパナソニックならでは。製品をIoTでつなげることで、お客様の暮らしの変化に合わせて求められるソリューションを最適な形で提供できる可能性がある」(宮地氏)とパナソニックの強みを強調した。
一方で「家電は多くの電力を使用している」(宮地氏)とし、家庭の電力消費の75%をエアコン、冷蔵庫、照明が占めている現状についても説明。パナソニックグループの新たな環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」にも触れ、「電気代高騰、電力逼迫という社会課題にも向き合い、家電選びが節電につながる役割を担いたい。くらしの質を高めるための取り組みを強化するには、お客様とつながり続けることが必要。これを商売の基準に据える」(宮地氏)と今後を示した。
こうした動きを受け「これからの商売の基準」として「『つながり続けること』でお客様の満足度を高める」を挙げた。宮地氏は「お客様の満足度は購入時点がピークで、経年とともに満足度が減少していくのがハードの売り切り型モデル。これからはアプリによってお客様とつながり続け、購入後の接点を広げ、お客様のくらしの変化に適応し、サポートすることで、購入後も満足度を高め、体験価値を提供し続けることを商売の基準にしていく」(宮地氏)とした。
つながり続ける商売の事例としてエアコンを紹介。購入後の新たなサービスとして、IoT対応家電の保証を計3年間無料する「IoT延長保証」についても触れた。これは、1年のメーカー保証に加えて、2年の延長保証を無料で適用する「IoT延長保証」サービスを4月21日より順次拡大するというもの。購入したIoT対応商品を専用アプリにつなぎ「マイ家電登録(商品登録)」し、サービスを申し込むと、計3年間の保証サービスを開始する。すでに、2月からIoT対応冷蔵庫(9WPXタイプ・9HPXタイプ・9MEXタイプ)でスタートしており、今回エアコン、ドラム式洗濯乾燥機、スチームオーブンレンジ、自動調理鍋、テレビ、レコーダーのIoT対応商品まで拡大した。宮地氏は「今後も対象商品は拡大していく予定。このサービスによりお客様は、お買い上げいただいた商品を安心して使い続けられる」とした。
専用アプリ「エオリアアプリ」については「国内のエアコン操作アプリで最高評価を獲得している」(宮地氏)とのこと。遠隔操作に加え、2022年にはユーザーインターフェースを一新し、使いやすさを追求。2月には、住んでいる地域のエアコン運転状況がわかる地域機能も追加した。「エアコンの稼働率が50%になったら自宅のエアコンもオンにしよう、周りの人の暖房の温度が低めだから自宅の温度も下げようなど、利用の参考にできる」(宮地氏)と新たな使い方も提案する。
宮地氏は「くらしの質向上とともに社会課題解決の取り組みもしている」とし、環境省と熱中症対策の一環として「サブスクリプションを活用した普及促進モデル事業」に参画していることも紹介。埼玉県熊谷市と栃木県鹿沼市の2つの自治体が利用しており、熱中症アラート発令に対するエアコンの適切活用分析のほか、室内外環境、利用者の状況(在・不在等)とエアコン使用状況の関連性分析など、「熱中症対策・CO2削減」などで地域社会貢献につなげる。
加えて、エアコンを大事に使ってもらうためにメンテナンス情報の発信なども実施しているとのこと。「今までエアコンのクリーニングのタイミングはお客様の判断になっていたが、IoTにつなげると購入からの経過年数や運転時間などをもとに、クリーニングが必要な目安を通知できる。これによりお客様はクリーニング実施の判断がしやすくなる。技術スタッフが出張する有料でのクリーニングサービスも提供しており、メーカーならではのクリーニングで利用者からは大変満足してもらっている」(宮地氏)とIoT家電ならではのサービスもスタートしているとのこと。
故障時の対応も、遠隔診断、確認、見える化によりユーザーのストレス軽減になっているという。
宮地氏は「新たな取り組み実現のためにマーケティングの組織体制も変える。『パナソニック コンシューマーマーケティング株式会社』から『パナソニック マーケティング株式会社』へ社名を変更し、専門店、量販店など商流軸の体制から、エリア体制にすることで、地域への密着度を高める」(宮地氏)と新たな体制についても話した。
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