では、独立性の問題はどうだろうか。そもそも多くのユーザーがTwitterの代替を探しているのは、Twitterのような一企業やイーロン・マスク氏のような存在がSNSやプロトコルを支配して、一方的な都合を押し付けている状態に対する反発という側面もある。Blueskyにはそのような危険性はないのだろうか。
実はBlueskyは、もともとTwitter社内で分散型SNSを研究するプロジェクトとして始まり、その後ジャック・ドーシー元TwitterCEOの支援のもと2022年にパブリック・ベネフィットLLCとして独立したという経緯がある。2020年にジャック・ドーシー氏が取締役会によってCEOの座を追われそうになったという事件が発生し、トップの交代がプロジェクトやプロトコルの中立性に影響してはいけないという危機感もあって、資本的にTwitterから独立した公益企業として活動する方向性を打ち出したのだ。
また、AT Protocol自体はMITライセンスで公開されたオープンソースのプロジェクトになっており、今後はそれをもとにユーザーが独自にアプリやサーバーを実装する動きも活発化することが予想される。
つまりSNSとしてのBlueskyやそれを実現しているAT Protocolは、Twitterに比べて独立性が高いうえ、気に入らない部分があるならばユーザーがコードを独自に発展させていく自由も保証されているのだ。
しかし解決されていない問題もある。Twitterのような巨大なSNSを運用する上でネックとなるのがサーバーの運用コストと、投稿されるコンテンツのモデレーションにかかるコストだ。
実際、利用者の多いマストドンのサーバーや、マストドンと同じActivityPubプロトコルで運用されるMisskeyのサーバーの運営費用は莫大になることがあり、寄付だけでは安定して維持することが難しいという問題がある。
また、投稿されたコンテンツが法令を遵守しているかをチェックし、違反のあるコンテンツをタイムリーに削除してユーザーにとって安全な場所を作るのにも大きなコストがかかる。
プロトコルの外側にあるこれらの運用にかかわる問題は、真に分散化したSNSを実現するために避けて通れない、大きなハードルなのだ。
こうして大きく注目されているBlueskyだが、開発者のWhy氏(@why.bsky.world)がプライベートに日本を訪問していたタイミングで、世界で初のBlueskyミートアップが東京で開催された。
会場にはBlueskyに熱中しているユーザーが80名ほどが集まり、まるで十数年前にTwitterが誕生したときと同じ、新しい技術や人と人のつながりに熱狂する空気が溢れていた。
イベントでは今後BlueskyがDM(ダイレクトメッセージ)機能にも対応することや、今後公式のAndroidアプリも公開予定であるといった具体的なロードマップだけでなく、現在のアプリがAT Protocolのテストのためのレファレンス実装であり、このベータテストの結果を踏まえてプロトコル自体を洗練させていくなどの遠大なビジョンについても開発者から情報提供があった。
世界中の人にとって、もはやなくてはならないツールにまで進化したSNS。Twitterの未来に暗雲が広がる今、Blueskyは分散型を武器に新しい青空を切り拓くことができるのだろうか?
今後もBlueskyと分散型SNSの進化から目が離せない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」