シャープ呉CEO「業績悪化早期に区切り」--大きな転換点となる2023年がスタート

 シャープ 代表取締役社長兼CEOの呉柏勲(ロバート・ウー)氏は4月4日、社内イントラネットを通じて、「2023年度のスタートにあたって」と題したCEOメッセージを社員に向けて配信した。

2023年度はシャープにとって大きな転換点となる1年

 2022年4月に、呉氏が社長兼CEOに就任してから1年を経過するとともに、2023年度がスタートしたことにあわせて発信したものであり、「2023年度に、私たちがなすべきことは、早期に業績悪化に区切りをつけ、年間最終黒字を達成するとともに、将来の持続的成長へと舵を切っていくことである。2023年度は、シャープにとって大きな転換点となる1年。私が先頭に立ち、構造改革や開源節流を断行していく」と、CEOとしての新年度の決意を示した。
 
 メッセージの最初のテーマは、「新規事業の早期具体化」とし、4月1日付で実施した事業推進体制の見直しについて説明した。

 呉社長兼CEOは、「今回の組織変更の最大の狙いは、将来の持続的成長を牽引する新規事業の早期具体化である」と前置きし、「これまでにも、新商品や新サービス、新たな市場に事業を展開する4象限経営の方針のもと、新規事業の創出に取り組んできたが、今回、その責任体制をより明確にすべく、各事業本部および子会社に、新規事業を専門に担う組織を設置した。今後は、これらの組織が中心となって、シャープの事業変革を加速することを期待している」と述べた。

 また、最先端AIやロボティクス技術など、全社のイノベーションを支える機能を束ねる「Innovationグループ」を新設したことに触れ、「各事業において、新事業を次々と立ち上げていくためには、そのエンジンとなる革新技術の開発や、基盤となる独自プラットフォームの構築など、技術面の強化やサポートが不可欠である。こうした考えから新設した組織になる」と位置づけた。

 さらに、既存の5つのグループについても、事業本部間やグループ間のシナジーの最大化を図るべく、体制を見直したことに触れた。

 ここでは、ブランド事業において、これまでの3グループ体制を再編。SAS(Smart Appliances & Solutions)事業本部およびSESJ(シャープエネルギーソリューション)を中心とした「Smart Life & Energy事業グループ」、SBS(スマートビジネスソリューション)事業本部およびDBI(Dynabook)を中心とした「Smart Office事業グループ」、通信事業本部およびTVS(TVシステム)事業本部が中心となって、XR分野をはじめとした映像や通信、ソフトウェア技術を融合した新たな製品やサービスの創出を目指す「Universal Network事業グループ」を設置したことを示した。

 また、デバイス事業では、「Display Device事業グループ」と「Electronic Device事業グループ」をつなぐ「Device Business Committee」を新設した。

 さらに、各BU(ビジネスユニット)においても、同様の考え方をベースに体制の見直しを行っており、「2023年度は、シャープグループの総力をあげて、新規事業の早期立ち上げに取り組み、将来の大きな成長へとつなげていく」との姿勢を強調した。

シャープ4月1日付け新体制
シャープ4月1日付け新体制

 2つめのテーマは、「海外事業の強化」である。シャープでは、海外事業の拡大に力を注ぐ方針を打ち出している。

 呉社長兼CEOは、「足元では世界的な景気減速により、各地で需要が後退しつつある。だが、こうした逆風下においても、シャープが、今後も販売を着実に伸ばしていくためには、地域ごとに、市場動向や競争環境をきめ細かく分析するとともに、地域と事業の連携をより一層強化し、スピード感を持って新たな打ち手に次々と挑戦していくことが重要である。こうした考えから、今後は、各地域を束ねる『地域代表』の役割や責任をより明確にし、それぞれの地域において、各事業本部との連携を密に取りつつ、ブランドやマーケティングの強化、現地発の新規事業の創出、構造改革の加速、さらには経営の現地化やITシステムの見直しなど、さまざまな改革を推進していく」と宣言した。

333人が新たに入社「一日も早く戦力になれるように」

 3つめのテーマが、新入社員に向けたメッセージだ。シャープでは、4月3日に、入社式を開催し、333人が新たに入社した。内訳は、技術系176人(男性 159人、女性17人)、ビジネス系が 45人(男性25人、女性20人)、関連会社が112人となっている。

 入社式においては、「強いブランド企業“SHARP”」の早期確立を目指す同社の経営方針や、若手社員に期待していることについて、呉社長兼CEOが言及したことに触れながら、「CEOメッセージは、会社が進む方向性や置かれている環境、重点施策、私の考え方、社員に持ってほしい心構えなどについて説明している。発信したメッセージはすべてイントラネットに掲載している。ぜひ読んで理解を深め、これから始まるシャープでのキャリアのベースにしてほしい」と述べた。

 その一方、「各職場の先輩社員には、新たな仲間を温かく迎え入れるとともに、新入社員が一日も早く戦力になれるように、自ら範を示しつつ、後輩の指導、育成に努めてほしい」と要望した。

 なお、入社式で呉社長兼CEOは、経営方針としてESGに重点を置いていること、4つの柱として、「健康関連事業のさらなる強化」、「カーボンニュートラルへの貢献」、「人(HITO)を活かす経営」、「真のグローバル企業への変革」をあげており、これらの取り組みを通じて、「強いブランド企業“SHARP”」の確立を図っていくことを強調したほか、新入社員への期待として、「Creativity&Innovation、Passion&Motivation、Ambition、Entrepreneurshipを大きく育んでもらいたい」と述べながら、「2022年度のStart-up Competition(新規事業提案会)では、新入社員も堂々と提案をしてくれた。会社は機会を提供するが、声を上げるのは社員次第である。高いモチベーションで日々の業務に取り組み、自らの能力を高めてもらいたい。また、シャープには、キャリアアップするチャンスは無限にある。シャープの飛躍的な事業拡大の一翼を担える人材となり、事業ビジョンの実現に向けて活躍することを期待している」を語っていた。

 CEOメッセージの最後に呉社長兼CEOは、「繰り返しになるが、2023年度は、シャープにとって大きな転換点の1年になる。全員の力で、なんとしても、年間最終黒字を達成するとともに、新規事業の早期具体化や、海外事業の拡大に取り組むことで、シャープの未来を自らの手で切り拓いていこう」と、社員に呼びかけた。

 2023年度の黒字化が必達目標であることを、新年度最初となる今回のCEOメッセージで、改めて徹底した格好だ。

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