シャープ呉CEO、第3四半期累計業績が最終赤字--「最終日まで業績を積み上げる」

 シャープ 社長執行役員兼CEOの呉柏勲(ロバート・ウー)氏は3月7日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを配信した。

 2023年最初となった今回のCEOメッセージは、「2023年度の年間黒字必達に向けて」と題しており、2023年度方針として、黒字化を最重要経営課題に位置づける姿勢などを示した。
 
 メッセージの冒頭では、2022年度第3四半期および第3四半期累計業績が、ともに最終赤字となったこと、年間の業績についても、2016年度以来の赤字となる見通しであることを示しながら、「業績悪化の要因のひとつは、SDP(堺ディスプレイプロダクト)の業績低迷にある。また、ブランド事業においても、円安や原材料価格高騰などの影響を受け、収益力が大幅に低下している。この結果、第1四半期以降、毎期、赤字BUの数が増加している」と現状を報告。

 「2022年度は残り1カ月を切った。市況は依然として厳しいままだが、2023年度の発射台となる今期の着地は、今後業績を反転させていく上で極めて大きな意味を持つ。いま一度、社員全員が現状を正しく認識し、危機感を持って日々の業務のなかで、節流や在庫圧縮を徹底するとともに、全員営業の姿勢で、『誠意』をもって、積極的にお客様を訪問し、既存顧客のビジネス拡大やオンラインなどの新規チャネルの開拓につなげ、最終日まで業績を積み上げていこう」と呼びかけた。

 2023年度の経営計画については、2022年12月以降、審議を重ねていることを示しながら、「2023年度は『年間黒字必達』が最重要経営課題になる」と述べた。

 また、業績悪化の大きな要因であるSDPについては、現在、再生シナリオの見直しを進めていることを示したほか、今後、中期的視点に立った構造改革を加速していくこと、赤字となっているBUでは不採算事業の構造改革や、さらなるコスト削減、人員適正化による事業の筋肉質化を進めていることに触れ、「進捗をきめ細かく管理、サポートし、何としても黒字転換を果たしていく」と宣言した。

 その上で、「全社で引き続き節流を徹底するとともに、4象限経営の方針のもと、高付加価値商品比率の拡大や、海外市場や空白市場、オンラインチャネルなどの新規販路の開拓に取り組み、さらなる事業拡大、収益力向上を目指す」とした。

 さらに、「シャープがこの難局を乗り切り、近い将来、反転攻勢に打って出るためには、いまから成長に向けた布石を数多く打っていくことが重要である」とし、話題の対話型AIツール「ChatGPT」を引き合いに出して説明した。

 「ChatGPTの公開以降、さまざまな分野でAIを活用した新サービスが立ち上がっており、AIはいよいよ本格的な実用段階に入りつつある。今後はAIの使い方が企業の競争力を左右すると言っても過言ではなく、まさにシャープの『創意』が試される時でもある。大胆かつ柔軟な発想で、スピード感を持って新たな事業に挑戦し、シャープならではのAIoTの世界を早期に創り上げよう」とした。

 さらに、成長に向けた布石の成果として、2023年1月に米ラスベガスで開催したCES 2023において、VR用ヘッドマウントディスプレイのプロトタイプを公開し、その後も多くの引き合いがあることを報告。「VR用ヘッドマウントディスプレイのプロトタイプは、ディスプレイやカメラ、センサー、レンズなどの独自デバイスを総動員し創り上げたものである。完成品としても、そして個々のデバイス単体としても大きな注目を集めている」と手応えに自信をみせた。

 さらに、「2022年4月以降、デバイス各事業を横断した営業活動による販売拡大に取り組んでいる。シャープには、デバイスやハード、アプリケーション、プラットフォームなどを総合的に提案できるという他社にない強みがあり、今後は新たな領域を中心に、『One SHARP Solution』を積極的に展開し、事業間のシナジーを最大化することで、シャープの総合力をより一層高めていきたい」と述べた。

 また、呉社長兼CEOは、中長期視点で「研究開発投資」や「ブランド投資」、「人材投資」を継続的に行っていく考えを示し、「持続的成長を支える確かな経営基盤の構築も進めていく」と述べたほか、「こうした取り組みを、スピード感を持って実行していくことを狙いに、現在、各事業本部長と組織体制の見直しについても議論を進めている。事業グループの再編や新規事業を担う新たな組織の設置、新規分野を中心とした若手社員の幹部登用、組織階層のフラット化などを進めていく考えである」と述べ、組織再編に取り組む考えを明らかにした。

戴前会長の著書から学ぶ難局を乗り越え方

 今回のCEOメッセージのなかでは、前会長である戴正呉氏の著書である「シャープ再生への道」(日本経済新聞出版)が、2月22日に上梓されたことについても紹介。戴氏自身が5000冊を購入し、シャープの全マネージャーに配付するとともに、2月24日から3月1日にかけて各事業所を訪問し、社員に向けて、6年間の苦労に対する労いと感謝の言葉を贈ったことも紹介した。

「シャープ再生への道」(日本経済新聞出版)
「シャープ再生への道」(日本経済新聞出版)

 呉社長兼CEOは、「本書には、経営基本方針のエッセンスが凝縮されている。なかでも、私がとくに大切にしたい言葉は、『あなた自身が、物事を面倒と思った時は、それはやり方が合っていない。あなた自身が、物事を困難と思った時は、それは能力が足りない』という言葉である。つまり、何事にも絶対に諦めず、あらゆる方面から検討すること、そして、常に学び続けることが大切であるということだ」と述べ、「足元の業績は非常に厳しい状況にあるが、私はシャープのCEOとして、困難から決して目を背けず、自分自身の能力をさらに磨き上げることで、必ずこの難局を乗り越えていくんだと、改めて決意した。社員の皆さんも、日々の業務の中で壁に直面したり、悩んだりすることがあるだろうが、そうした時にこそ、この本に目を通し、私たちの基本に立ち返ることで、次の一歩を踏み出すヒントにしてほしい」とした。

 呉社長兼CEOは、メッセージの総括として、「2023年度の事業環境は、インフレの加速により一段と厳しくなる見通しにあり、こうしたなかでシャープが確実に黒字転換を果たすためには、より高い目標を設定した挑戦計画に取り組むとともに、幾重にもバックアッププランを用意し、毎四半期に着実に成果を上げていかなくてはならない。非常に難易度の高い取り組みになるが、全員の力で早期に黒字化を成し遂げ、将来の反転攻勢へとつなげていこう。私たちは何としても『年間黒字』を成し遂げなければならない。残り1カ月、そして2023年度に向け、一人ひとりが会社の現状を正しく認識するとともに、危機感を持ち、これまで以上に積極的な姿勢で、目標達成と業績向上に取り組んでいこう」と述べた。

 2022年度は赤字見通しという厳しい事業環境のなかにあるシャープが、再生の道に転じることができるか。戴氏が社長に着任した時代のシャープのように、社内に危機感と改革の意識を徹底できるかが鍵になる。

 なお、シャープでは、トルコ・シリア地震の被災地および被災者への支援についても発表しており、日本赤十字社に500万円、ジャパン・プラットフォームに250万円、日本ユニセフ協会に250万円をそれぞれ寄付。総額で1000万円の支援を行う。

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