ユーカリヤは4月11日、国土交通省が主導する3D都市モデル構想「PLATEAU(プラトー)」のデータをプレビューできるブラウベースのウェブアプリケーション「PLATEAU VIEW(プラトービュー)」に、地理情報システム「Re:Earth(リアース)」が採択されたと発表した。ノーコードのCMSを使用し、誰でも自由に作成、公開できるため、開発運用コストの削減に貢献できるとしている。
PLATEAUは、国交省が2020年にスタートした3D都市モデル整備、活用、オープンデータ化のプロジェクト。PLATEAU VIEWは、デジタル空間上に再現された都市を見ることができ、空間上に情報のレイヤーを自由に重ねることで、新たな気付き、視点を得られることが特徴だ。
公共のデータは、紙で保存、管理されている事が多く、データとして活用できなかったほか、データ化されていても、独自のシステムを使っていたり、エンジニアでなければ入力や閲覧ができなかったりと、情報の活用が限られていた。
Re:Earthは、エンジニアでなければ使えない、情報の更新、活用ができないといった状況を変えるため、ノーコードになっていることがポイント。「3次元地図データの整備は進められている状況だったが、それに合致したソフトウェアがなかった。Re:Earthは、オープンソースで提供しており、誰もが使える仕様にしている。そのため、大きな予算を持たない地方自治体でも使える」(Eukarya 代表取締役社長CEOの田村賢哉氏)と説明する。
加えて、独自の「プラグイン機能」を導入しているため、機能拡張も自在。「技術のハードルを下げ、実際に使う人が自分たちで機能を加えられるようにした」(田村氏)と誰もが使えることを前面に打ち出す。
徹底した使いやすさを実現したRe:Earthの背景には、ユーカリヤ独自の採用手法が大きく寄与する。「一流のエンジニアメンバーが、高度な処理やセキュリティ面も含めて、最先端の技術をいち早く取り入れ、システムを構築している。エンジニアはグローバルベースで採用しており、米国、カナダ、中国、インド、シリアなど国籍はさまざま。中でも、戦力になっているのはシリアの難民のメンバー」(田村氏)と話す。
ユーカリヤは、エンジニアとデザイナーを中心としたチーム構成で、うち数人が難民認定を受けているとのこと。「エンジニアの採用は、シリコンバレーなどにいかないと優秀なメンバーが探せないというのが一般的なセオリー。しかし私たちにとって大事なのは、世界中のすべての人が私たちのプロダクトを使えるようになること。こう考えた時に、最も過酷な環境にある人と仕事をしようと思った。実際にレバノンやトルコの難民の方が暮らす居住エリアに行って、エンジニアを探したところ、とても優秀なエンジニアとめぐりあえた」(田村氏)と独自の採用ルートを切り開く。
田村氏の「だれでも使えるシステムを作ることで、雇用を生み出す」という思いはさらに広がり、現在はシングルマザーにデータ作りをお願いするなど、仕事の幅を広げる。
こうした雇用形態を加味し、ユーカリアではコロナ禍がスタートした直後の2020年2月から完全リモートワークに移行。「日本だけオフィスに集まっていると海外で働くメンバーとコミュニケーションの差が生まれてしまっていた。完全リモートワークにしたら、その差が縮まり、より成果が生まれやすくなった」(田村氏)と働き方改革も進める。
Re:Earthが目指すのは、地方自治体の人たちが自分たちでも使えて、作れる3D都市モデル。「そのためにはオープンソースにすることが第一だった」とオープンソース化に重きを置く。
他社製品への切り替えが困難になるベンダーロックをなくし、オープンソース化を推進するユーカリヤ。「クラウドサービスの部分で収益を上げるビジネスモデル。開発スピードはかなり速いと自負しているので、ユーザーには、ユーカリヤのクラウドサービスを使ったほうが楽と思っていただいている」(田村氏)と強みを話す。
今後は、PLATEAUに留まらず、デジタル公共財のオープンソース化も見据える。田村氏は「例えば地震等の災害があった時に地図データに被災地の状況が刻々と記録されれば、多くの人が助かる。しかし現状では一定の人が所有しているため、地図が見られない。もしくは見られてもデータ書き込めない状況が生じている。これを開放して一般の人たちが書き込めれば、より素早く被災地の状況を把握できる。何か起きたときに、資源があれば、それに基づいてあらゆることが可能になる。そうした世界を作っていきたい」と今後について話した。
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