フードテック官民協議会、推進ビジョンとロードマップ案を発表--概要レポート - (page 4)

「サーキュラーフード(循環型食品)」認証制度の議論

 続いてサーキュラーフード推進WTの発表を紹介しよう。サーキュラーフード推進WTは、「サーキュラーフード(循環型食品)」の推進に向けて活動している。WT代表の渡邉崇人氏(グリラス代表取締役)は「どういうものがサーキュラーフードで、どういうふうに作られたものかを認証していく制度をまず作ろうと考え、認証制度の案をこの1年でディスカッションしてきた」と語る。

 「サーキュラーフード認証はサーキュラーフードの認知度向上を最優先として、間口を広げていこうと考えている。食品ロスを削減していくことが大きな最終目標なので、循環型食品を広く認知してもらって消費していただくことで食品ロスの削減につなげていきたい」(渡邉氏)

 そこでまずは「食品ロス」について定義した。「食のサプライチェーンから外れたものは当然食品ロスになるが、食品を作る際に発生する非可食部を含む残渣、植物の茎や葉っぱも資源をかけて生産したものの一部になる。そこで非可食部を含んだ残渣も食品ロス、ここではFLW(フードロス&ウェイスト)として再定義している。このFLWが加工処理されることで新しい食品に生まれ変わり、食のサプライチェーンに再度合流した物と、FLWが加工処理を経て飼料や肥料など食品製造に寄与する新しい製品に生まれ変わったものについて、われわれはサーキュラーフードとして認証を与えても良いのではないかという議論になっている」(渡邉氏)

「食品ロス」の定義
「食品ロス」の定義
「サーキュラーフード」の定義
「サーキュラーフード」の定義

 サーキュラーフード認証の対象案として挙げられたのが青果物や畜産物、加工食品などの「CF商品」と、その原材料である「CF原材料」、そして肥料や土壌改良材、飼料などの「CF(サーキュラーフード)資材」の3つだ。

サーキュラーフード認証の対象範囲(案)
サーキュラーフード認証の対象範囲(案)

 認証基準としては、現在のところ「導入段階」と「成長・成熟段階」の2段階で基準を変えていくことを原案としてまとめている。

 基準としてはFLWの含有率や使用量、環境負荷低減への取り組み、トレーサビリティなどガ挙げられるが、特に「FLWの含有率や使用量で大きな議論になった」と渡邉氏は語る。

 サーキュラーフードを認証する上で厳格かつ高いレベルでの取り組みが求められると事業者に負荷かかかることもあり、「間口を広く取ってさまざまな商品を認証していき、取り組みを広げていくことが必要なため、段階を2つに分けようという結論になった」と渡邉氏は語る。

 「導入段階ではかなり緩くして、FLWを少しでも使用していれば認証するところから入る。成熟段階や成長段階、これは3年後をめどに考えているが、その時期に来たら資材・原材料は含有率95%以上といったところを目指していく。また、ブロンズ、シルバー、ゴールドなどと認証を階層化していくことで、価値をよりフレキシブルにやっていけるのではないかと考えている」(渡邉氏)

サーキュラーフードの認証基準(案)
サーキュラーフードの認証基準(案)

 認証主体も導入段階は「認証基準策定主体=認証主体」の1団体でスタートし、成長・成熟段階では「認証基準策定主体」と「認証主体」の2団体に分けて運用する案になっている。

サーキュラーフードの認証主体(案)
サーキュラーフードの認証主体(案)

 「来年度にはワーキングチーム内でドラフトとして一度動かしてみて、そこからより認証基準を洗練させていき、発表できる形に作り上げていきたい」(渡邉氏)

 

消費者の培養肉に対する認知度が初めて過半数を突破

 最後に、「細胞農業CC(コミュニティサークル)」の発表を紹介したい。細胞農業CCでは細胞農業(培養肉)関連のコミュニケーションや情報発信、情報収集を行っている。細胞農業における現在の研究課題を記載するなどWebサイトでの情報提供を強化しているほか、培養肉や植物肉、昆虫食など代替タンパク全般に関するイベントなども開催したという。

 また、同CCでは細胞農業に対する消費者の意識調査を2020年から年に2回のペースで実施している。

細胞農業CCでは細胞農業に対する消費者の意識調査を実施している
細胞農業CCでは細胞農業に対する消費者の意識調査を実施している

 細胞農業CCのメンバーで日本細胞農業協会理事の岡田健成氏は「培養肉の認知度が最近上昇傾向にあり、最新の結果では『名前だけでも知ってる』という人が過半数をついに超えた」と語る。

培養肉の認知度が過半数を突破した
培養肉の認知度が過半数を突破した

 「2020年の12月の調査から比較すると+14.6ポイントにも上った。一番大きいのは『名前は知っている』という人たちだが、各種メディアの影響力も相まって認知が向上してきたのではないかと思う」(岡田氏)

 培養肉に対する期待としては「味がおいしいこと」が最も高く、懸念としては「安全性」が最も高いという結果になった。

培養肉は社会的意義よりも「味」や「安全性」に関心が集まっている
培養肉は社会的意義よりも「味」や「安全性」に関心が集まっている

 「動物愛護や食糧危機の回避というところは消費者にとっては第一ではなく、味と安全性が非常に大事ということだ」(岡田氏)

 

 細胞農業は培養肉だけでなく「精密発酵によってミルクやレザー(皮革)なども作れるため、精密発酵について情報発信を強化していきたい」と岡田氏は語った。

 細胞農業CC外の活動だが、2022年には日本細胞農業協会ではベンチャーキャピタルのPlug and Play Japanと共催で精密発酵に関するイベントを開催し、約170人が参加したと岡田氏は紹介した。

 「われわれが情報と人的ネットワークを提供し、事業者は場所や広報機会を提供していただくといった連携によって、今後もこの業界を盛り上げていく活動ができると思っている」(岡田氏)

 

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