パナソニックHD、オートモーティブ、コネクト販売増で増収--事業環境変化で年間見通しは下方修正

 パナソニックホールディングスは、2022年度第3四半期(2022年4~12月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比14.8%増の6兆2245億円、営業利益は14.6%減の2342億円、調整後営業利益は19.3%減の2318億円、税引前利益は8.6%減の2554億円、当期純利益は16.7%減の1628億円となった。また、第3四半期(2022年10~12月)の連結業績は、売上高は前年同期比14.3%増の2兆1606億円、営業利益は15.6%増の844億円、調整後営業利益は1.8%減の859億円、税引前利益は20.7%増の888億円、当期純利益は30.5%増の556億円となった。

2022年度第3四半期連結業績
2022年度第3四半期連結業績

 パナソニックホールディングス 代表取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏は、「上期に赤字だったオートモーティブやコネクトが、第3四半期には販売増と為替の効果により増収となり、大幅に黒字転換。調整後営業利益は、第3四半期にエナジーの減益幅が大きく、全体としてもわずかに減益となった」と述べた。

パナソニックホールディングス 代表取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏
パナソニックホールディングス 代表取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏

 セグメント別の第3四半期(2022年10~12月)業績は、くらし事業の売上高は前年同期比10%増の9040億円、調整後営業利益が46億円減の311億円となった。「欧州のA2W(エア・トゥ・ウォーター)や海外電材の販売が増加したが、家電事業が減販になった。家電は日本、中国、東南アジアで前年実績を割っている。中国では前年の77%の水準だった。また、為替や原材料高騰などの外部環境の悪化は、成長事業を中心とした増販益や、国内外の価格改定でカバーしたが、中国における一時費用の影響で減益になった」と総括した。

2022年度第3四半期セグメント別実績
2022年度第3四半期セグメント別実績

 くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比2%増の2412億円、調整後営業利益は24億円減の209億円。家電事業の販売減が影響。為替を除く実質ベースでは減収になっている。

 空質空調社の売上高は前年同期比10%増の1799億円、調整後営業利益は3億円増の18億円。好調な欧州A2Wなどの増販益があり、増収増益となった。

 コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比38%増の930億円、調整後営業利益は43億円増の37億円。日本および米国での増販や、価格改定により増収増益の結果となった。

 エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比11%増の2607億円、調整後営業利益は19億円増の153億円。海外電材商品が堅調に推移した。なお、中国・北東アジア社の売上高は前年同期比3%増の2216億円、調整後営業利益は41億円減のマイナス17億円の赤字となった。

2022年度第3四半期くらし事業分社の実績
2022年度第3四半期くらし事業分社の実績

 一方、オートモーティブの売上高は前年同期比27%増の3463億円、調整後営業利益が100億円増の115億円となった。「顧客の自動車生産が回復したことを受けて増収になったほか、半導体などの部材高騰の影響はあったものの、部材高騰分の価格改定やコストダウンなどによって増益になった」という。

 コネクトの売上高は前年同期比30%増の2886億円、調整後営業利益は206億円増の140億円。「PCやスマートフォン分野での投資減速の影響を受けたプロセスオートメーションが販売減となったが、海外向けの堅牢モバイル端末や、航空市場の回復によるアビオニクスの伸長、Blue Yonderの売上増や収益改善が貢献した」という。

 Blue Yonderの2022年度第3四半期の売上高は3億700万ドル、SaaS ARRは、5億9900万ドル。リカーリング率は72.0%、SaaS売上比率は44.5%といずれも上昇している。

 「第2四半期にSaaS ARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)が目論見よりも低く、Blue Yonder単体では赤字になったが、ここには一過性のものもあった。第3四半期では、経営体質の強化を図り、リカーリング比率も高まっている。だが、経営体質としてまだダブつきがあるのも事実だ。今後も経営体質強化のための施策を打つ必要があり、ネイティブSaaSの最前線の営業強化など、リソースシフトも行わなくてはならない。四半期ごとには上下することもあるが、リカーリング率やSaaS ARRの指標を重視している」などと述べた。

 インダストリーの売上高は前年同期比3%増の2906億円、調整後営業利益は22億円減の167億円。「中国を中心としたICT端末やFA市場、グローバルにおける環境車を除く車載分野などの市況が低迷したことに加えて、半導体事業の終息影響によって減収になった」という。

 エナジーの売上高は前年同期比26%増の2474億円、調整後営業利益が187億円減の6億円となった。「市況悪化により、民生向けのリチウムイオン電池やデータセンター向け蓄電システムなどの販売が減少したが、車載電池の生産や販売は拡大。価格改定の効果もあった」としたほか、「原材料高騰に加え、産業および民生分野での減販損、将来に向けた開発費の増加によって減益になった」としている。

 その他/消去・調整は、売上高が837億円、調整後営業利益が67億円減の120億円となった。エンターテインメント&コミュニケーションおよびハウジングが、市況悪化の影響を受けた。

足元の事業環境の変化を踏まえ、利益を下方修正

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績見通しを下方修正した。売上高は2022年10月公表値を据え置き、前年比11.0%増の8兆2000億円としたが、営業利益は400億円減の前年比21.7%減となる2800億円、調整後営業利益は400億円減として前年比16.1%増の3000億円、税引前利益は300億円減の前年比16.8%減となる3000億円、当期純利益は250億円減とし、前年比17.8%減の2100億円とした。

2022年度連結業績見通しの修正
2022年度連結業績見通しの修正

 なお、米国におけるIRA法(インフレ抑制法)の影響は、細則が発表されていないため見通し修正のなかには織り込んでいない。現在、稼働しているネバダ州の工場は2023年1月から同法の対象となり、建設を進めているカンザス州の工場は、2024年度以降に見込んでいる生産および販売を開始した後に対象となる。試算ではネバダ工場で年間13億ドル、カンザス工場は約10億ドルの効果が想定されるが、現金化のスキームやP/Lへの計上方法などが確定できないとの理由から反映していない。

 梅田グループCFOは、通期の見通し修正について、「売上高は据え置いたが、為替影響を除く実質ベースでは減少している。また、足元の事業環境の変化を踏まえて利益を下方修正した。セグメント別では、オートモーティブとコネクトの調整後営業利益を上方修正したが、くらし事業、インダストリー、エナジーで下方修正した」と述べた。

 くらし事業は、売上高は据え置き、3兆4000億円としたが、調整後営業利益は、くらしアプライアンス社の販売減や、中国での一時費用の増加により、前回公表値から100億円減の1250億円とした。

 オートモーティブも売上高は据え置き、1兆2900億円としたものの、調整後営業利益は10億円増の110億円。顧客の自動車生産の減少を見込むが、価格改定や固定費削減により、調整後営業利益は上方修正した。

 コネクトは、モバイルソリューションズやアビオニクスにおける調達課題の改善が寄与し、売上高は120億円増の1兆1100億円。調整後営業利益は、アビオニクスとBlue Yonderの改善により50億円増の210億円とした。

 インダストリーは、売上高は据え置き、1兆1400億円としたが、調整後営業利益は200億円減の690億円。そのうち、ノートPCなどのICT端末の分野で110億円減、車載分野で40億円減、中国のFA分野で50億円減とした。「2022年度のノートPCの生産台数見通しが大幅に下振れしている。ノートPCは2023年度も厳しさが想定されるが、比較的早期の回復が見込まれるデータセンターの需要をしっかりと取り込みたい。車載では、中国でのコロナ影響などによって、グローバルの生産台数の成長が想定よりも鈍化。中国のFAは、半導体分野などでの投資意欲が想定よりも弱く、前年割れの状態が続いている。中国における新たな経済刺激策により、6月以降に持ち直すとの見方があり、市場動向を注視している」と述べた。

 エナジーの売上高は10億円増の9540億円、調整後営業利益は150億円減の420億円。内訳は産業・民生で80億円減、車載で70億円減とした。「産業・民生では、ICTや動力向けのリチウムイオン電池の需要が減少したほか、景気減速に伴ってITインフラ投資が急減速。データセンター向けの蓄電システムの需要も減少した。これらは2023年度第2四半期以降での需要回復を見込んでいる。また、車載では、水酸化リチウムなど一部の部材が、下期以降、想定以上に高騰しており、一時的に収益を圧迫。売価への反映を進めているものの、反映されるまでには期ズレが発生する。2023年度第1四半期以降は、相場の安定と売価への反映により、正常化を見込んでいる。さらに、電解液をはじめとして相場と連動して売価反映ができない材料についても想定以上の高騰が続いている。お客様との契約の見直しを進めるとともに、調達先の複数化などにより、2023年度に影響の縮小を見込んでいる」とした。

 だが、材料価格の影響が大きいものの、車載分野においては、旺盛な需要が継続しているため、「成長戦略に変更はない。一時的なマイナス影響と捉えており、対策を進めていく」と前向きな姿勢をみせた。

 その他/消去・調整は、売上高は130億円減の3060億円、調整後営業利益は400億円減の3000億円とした。エンターテインメント&コミュニケーションにおけるテレビの販売減と、為替影響などにより、調整後営業利益を下方修正した。

 一方、成長領域とする「車載電池」、「サプライチェーンソフトウェア」、「空質空調」への取り組みについても説明した。

 車載電池では、2022年11月に、カンザス工場の整地を開始し、2022年12月には、米Lucidと契約を締結。サプライチェーンソフトウェアでは、さらなる成長に向けたトランスフォーメーションを推進し、第3四半期には業績の改善が見られているという。また、空質空調では、欧州のA2W事業が引き続き大きく成長。2022年11月には、欧州でシステムエアの空調事業を1億ユーロで買収することを発表している。

 今回の説明会では、2023年5月に、パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏が、グループ戦略説明会を開催することを公表したが、梅田グループCFOは、「2021年度からの2年間は、各事業会社において、攻めるべき領域を定め、そこでの競争力を徹底的に高める期間しており、ポートフォリオマネジメントは事業会社が将来の事業立地を見据えながら行うことにフォーカスしてきた。この2年間が、2023年3月に終わる。パナソニックホールデイングが2年間は封印してきたものを4月から解き、ROICや営業キャッシュフローを見ながら、低収益事業については、トップダウンによるポートフォリオマネジメントを行う可能性がある。2023年4月以降は、ギアチェンジという言葉を使って、ポートフォリオマネジメントを推進していくことになる。その内容について、2023年5月に説明することになる」と述べた。

 パナソニックグループとしての新たな取り組みが明らかになりそうだ。

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