皆さんが筆者と同じような人間なら、空港の保安検査は誰よりも速く通過したいタイプだろう。筆者は毎回、手荷物のX線検査を記録的な速さでサッと終わらせて、検査など意に介さない人々を驚かせている。しかし、自分を監視しているのは、米運輸保安庁(TSA)のハイテク機器だけではない、ということを意識することはそれほど多くない。
空港の保安検査場には探知犬が隠れており、驚異的な嗅覚によって、麻薬や爆発物、そのほかの輸出入禁止品をこっそり持ち込もうとしている可能性のある人間を捕まえている。探知犬は、自らの嗅覚を使って、X線スキャナーのような金属製ロボットにはない能力を発揮している。しかし、生物のような嗅覚を持つ、半分ロボットで半分動物の、におい探知サイボーグともいえる存在を作ることができたとしたら、どうなるだろうか。
学術誌「Biosensors and Bioelectronics」の2月号に掲載された論文を通じて、イスラエルのテルアビブ大学の科学者たちが、生物学的センサー、具体的にはバッタの触覚を使用して、「においを嗅ぐ」ことのできる初めてのロボットの開発に成功したことを発表した。
テルアビブ大学の生物医学エンジニアで、本論文の共著者の一人であるBen Maoz氏は電子メールで、「バッタの触覚のような基本的な器官は、一つひとつのにおいについて、それぞれ異なる信号を生成することができる」と語った。「それを行うのに脳は必要ない」
簡単に説明すると、研究チームはまず「独自の装置」を使用して、本物のバッタの触覚が機能する時間を引き延ばした。そして、その触覚を車輪の付いた小型ロボットに接続し、人間の嗅覚受容体がにおいを認識する仕組みを再現。その後、その装置全体をさまざまなにおいにさらし、その結果として発生した、においに関連する電気的活動を記録した。この方法で、チームは、このバイオハイブリッドロボットがすべてのにおいを識別しているのかどうかを把握することが可能となった。
そして、それはうまくいった。
「においは、私たちが身の回りのことを把握する手段の1つである」とMaoz氏。「私たちは嗅覚を使用して、食べ物や香水といった無害なものと、ガス漏れや腐った食べ物などの有害なものを識別することができる。この概念を活用すれば、人間は将来的にロボットを利用して、現時点では識別不可能なものを識別できるようになるだろう」
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