パナソニック、LED照明iDシリーズが累計販売5000万台突破--生産は環境に優しい新潟工場

コヤマタカヒロ2023年01月25日 10時00分

 パナソニックが2012年より発売している一体型LEDベースライト「iDシリーズ」。直管型蛍光灯に替わる照明器具としてオフィスや工場倉庫学校などさまざまな市場に投入されており、発売から10周年を迎えた2022年11月には販売台数5000万台を達している。

2012年の発売後、2015年には500万台、2016年には1000万台を突破。LED照明のスタンダードのポジションを築き始めている
2012年の発売後、2015年には500万台、2016年には1000万台を突破。LED照明のスタンダードのポジションを築き始めている

 iDシリーズが登場した2012年当時は直管蛍光灯が直管型のLEDランプに置き換えられていた時代。しかし、照明器具自体もすでに古くなってきており、蛍光灯からの交換はもとより、直管型のLEDランプの交換も迫られている。

 そこでパナソニック エレクトリックワークス(EW)社は、一体型LEDベースライト、iDシリーズに関する技術説明会と工場見学会を開催した。

LEDの自由度を生かした新定番として開発されたiDシリーズ

 iDシリーズはパナソニックの新潟工場で生産されている一体型LEDベースライトだ。新潟工場はパナソニック EW社のライティング事業部の製造拠点の1つで、ここで培われた技術やノウハウをそのほかの国内拠点や海外拠点に展開するマザー工場でもある。

 新潟工場は、1973年11月16日に照明器具(富士型2灯用)の生産で操業を開始。それからずっと継続して照明器具の製造を担っている。直管型蛍光灯照明器具の生産からLEDへの切り替えが始まったのが2010年だ。

パナソニックが最初にLED照明を発売したのが2002年。そして2010年に直管型LEDランプを発売している
パナソニックが最初にLED照明を発売したのが2002年。そして2010年に直管型LEDランプを発売している

 パナソニックでも直管形LEDランプの発売を開始した後、2011年に発生した東日本大震災による電力逼迫を受け、直管型蛍光灯から直管形LEDランプへの置き換えが加速した。

 しかし、この頃の急速なLEDへの置き換えにより、発煙や発火、感電、落下などさまざまな重大事故が発生したという。その状況を踏まえて開発されたのが一体型ベースライトiDシリーズだ。

 「改めて、LEDの良さを見直し、デザインや使いやすさ、省エネ性能や施工性、そして価格などを再構築した。これまで培ってきた技術とアイデアを惜しみなく使ってこれからのスタンダードになるようなLEDベースライトを開発した」(パナソニックEW社 菅谷豊氏)

ベースライトを持つパナソニック エレクトリックワークス社 プロフェッショナルライティングBU 施設事業推進部 ベース商品企画課の菅谷豊氏
ベースライトを持つパナソニック エレクトリックワークス社 プロフェッショナルライティングBU 施設事業推進部 ベース商品企画課の菅谷豊氏

 iDシリーズの特徴は大きく分けて3つある。1つがデザイン性だ。器具表面にネジがないシンプルなデザインを採用。さらに設置空間にスッキリ収まる薄型形状となっている。また、100種類以上の器具本体と、440種類以上のライトバーを組み合わせることが可能。空間に合わせて約4万通りの多彩なラインアップからデザインを選ぶことができる。

iDシリーズのラインアップ。無線調光タイプやリニューアル専用器具本体など場所や求める機能に合わせてさまざまな製品が選べる
iDシリーズのラインアップ。無線調光タイプやリニューアル専用器具本体など場所や求める機能に合わせてさまざまな製品が選べる
iDシリーズは施工性に関しても進化を続けており、取付現場での手間が少ないようになっている
iDシリーズは施工性に関しても進化を続けており、取付現場での手間が少ないようになっている

 2つ目が施工性の高さだ。iDシリーズはバネや引っ掛け金具などを採用することにより、簡単に施工できる。また、リニューアル専用器具本体の場合、既設の吊りボルトが使えるため、蛍光灯照明器具からの交換も簡単。2012年の発売以降、より簡単に施工できるよう進化を続けているのだ。

 例えば直付型のベースライトの場合、現行モデルは現場でのボルトカットが必要だったが、リニューアル用のモデルはボルトカットが不要になっており、1台あたりの取り付けにかかる時間を約28%短縮。さらに埋込型の場合、約55%の短縮を実現しているという。

iDシリーズは施工性に関しても進化を続けており、取付現場での手間が少ないようになっている
iDシリーズは施工性に関しても進化を続けており、取付現場での手間が少ないようになっている
従来モデルでは現場でボルトのカットが必要だったが、リニューアル専用の器具本体の場合、ボルトのカットが不要。また、配線スペースが大きいため、配線処理もスムーズにできるようになっている
従来モデルでは現場でボルトのカットが必要だったが、リニューアル専用の器具本体の場合、ボルトのカットが不要。また、配線スペースが大きいため、配線処理もスムーズにできるようになっている

 そして3つ目が省エネ性能の高さだ。蛍光灯と比べて約3年で償却できる高い省エネ性能を実現。2012年に発売した初代モデルでは110.6lm/Wだったランプ効率は2022年モデルでは193.9lm/Wまで効率化しているのだ。

iDシリーズの消費効率の変化を示したグラフ。2014年に160.4lm/Wとなり、2019年には193.9lm/Wに達している
iDシリーズの消費効率の変化を示したグラフ。2014年に160.4lm/Wとなり、2019年には193.9lm/Wに達している

オフィス照明が「空間省エネ」と「空間快適」を作り出す

 さら新潟工場ではオフィス照明が作り出す空間づくりを実際に体験できるようにするため改修を実施。2階のオフィスにさまざまなオフィスの照明環境が体感できる6つのエリアを用意した。

空間省エネと空間解析を実際に比較体感できるよう新潟工場のオフィスを改修し、5+1のエリアを作り出した
空間省エネと空間解析を実際に比較体感できるよう新潟工場のオフィスを改修し、5+1のエリアを作り出した

 新潟工場の照明改修プランニングを担当したパナソニックEW社 中央エンジニアリング部 照明ソフト開発課の不破正人氏は「弊社は照明器具メーカーとして製品を販売していますが、最終的に照明は空間に収まった状態でその良さを示す必要があります。それを実現するために空間省エネ設計や空間快適設計が実際に比較体感できる空間を用意して、オフィス照明の効果を実証したいと考えました」と改修の理由を説明する。

パナソニックEW社の中央エンジニアリング部 照明ソフト開発課で、新潟工場の照明改修プランニング担当を務めた不破正人氏
パナソニックEW社の中央エンジニアリング部 照明ソフト開発課で、新潟工場の照明改修プランニング担当を務めた不破正人氏
照明器具は製品や仕様を見ただけでは実際の効果がわかりにくいのが課題だという。「明るさ×電力の比較体験エリア」では明るさ(照度)ごとの視環境や空間の印象の違いを消費電力ごとに比較体感するために調光器具に改修した。作業のしやすさや、明るさごとに向いている業務の違い、そして消費電力を実際に試すことができる
照明器具は製品や仕様を見ただけでは実際の効果がわかりにくいのが課題だという。「明るさ×電力の比較体験エリア」では明るさ(照度)ごとの視環境や空間の印象の違いを消費電力ごとに比較体感するために調光器具に改修した。作業のしやすさや、明るさごとに向いている業務の違い、そして消費電力を実際に試すことができる
調光機能のあるiDシリーズのLEDベースライトを設置し、オフィスの実空間で明るさと消費電力の違いを体感できる
調光機能のあるiDシリーズのLEDベースライトを設置し、オフィスの実空間で明るさと消費電力の違いを体感できる
実際にオフィスの明るさを変えてもらった。机上面照度300lxは明らかに暗く、これだけだとデスクワークは厳しい印象
実際にオフィスの明るさを変えてもらった。机上面照度300lxは明らかに暗く、これだけだとデスクワークは厳しい印象

 続いて「タスク・アンビエントエリア」。作業面と周辺面の光をあえて不均一にしたタスク・アンビエント照明が体感できる。作業面には最適な500〜750lxの明かりを提供しながら、周辺面の照明を100〜300lxに明かりを抑えることで省エネを実現している。均一照明に比べて20〜60%の省エネ効果があるという。

空間全体としてはやや暗めだが、デスクや柱に光があたっているため暗さを感じなかった。天井にスポットライトが取り付けられているのがわかる
空間全体としてはやや暗めだが、デスクや柱に光があたっているため暗さを感じなかった。天井にスポットライトが取り付けられているのがわかる
LEDベースライトだけの場合と、スポットライトと小型シーリングライトを併用した場合で、作業面照度はそのままで、消費電力は約45%削減できる
LEDベースライトだけの場合と、スポットライトと小型シーリングライトを併用した場合で、作業面照度はそのままで、消費電力は約45%削減できる

 パナソニックではタスク・アンビエントを実現するために小型シーリングライトの開発やより細かな調光機能を実現。また、「空間の明るさ感指標:Fue」を用いて人が感じる視界内の明るさを総合的に計算し、数値化することで最適な明るさを実現している。ただし、タスク・アンビエント照明は個人作業には向く反面、チーム作業等には適さないため、従来照明との使い分けが重要だ。

オフィス空間の目的や業務内容に応じて、タスク・アンビエント照明と従来照明を組み合わせて設定している
オフィス空間の目的や業務内容に応じて、タスク・アンビエント照明と従来照明を組み合わせて設定している

 従来どおりの均一な照明空間に最新性能のiDシリーズを設置した「iDシリーズ紹介エリア(最新技術体感)」や、業務に合わせて場所を自由に選ぶことでリラックスや集中などの効果が得られる「ABW(Activity-Based Working)オフィス×メリハリ照明エリア」、「オフィス改革エリア」、「オフィス・カフェエリア」を用意。それぞれで実際に働きながら効果を体感し、検証を続けている。

業務に合わせて空間を移動して働くABW型オフィスでは照明とオフィス家具の組み合わせによって集中しやすい空間などが作り出せる
業務に合わせて空間を移動して働くABW型オフィスでは照明とオフィス家具の組み合わせによって集中しやすい空間などが作り出せる
仕事内容に合わせて働く人自身が移動することで、作業効率や快適性を高めることができる
仕事内容に合わせて働く人自身が移動することで、作業効率や快適性を高めることができる
3階の社員食堂の脇に「メリハリ照明手法」を採用したカフェスペースを併設。カフェ風の照明カウンターのほか、集中できるスペースを確保
3階の社員食堂の脇に「メリハリ照明手法」を採用したカフェスペースを併設。カフェ風の照明カウンターのほか、集中できるスペースを確保

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