東日本電信電話(NTT東日本)は1月19日、グリラスとICT/IoTを活用した食用コオロギのスマート飼育の確立を目指す実証実験を1月より開始したと発表した。第一歩として、NTTe-City Labo(NTT中央研修センタ)内の一室を食用コオロギの飼育施設として新たに整備し、実証の基礎となるコオロギの飼育における環境要因のデータ収集および分析を開始する。
グリラスは、徳島大学発のベンチャー企業として、食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を国内で行っている。
NTT東日本が、なぜ食用コオロギを手がけるのか。食料問題は“持続可能な社会の実現”のために解決しなければならない社会課題であること。また、グリラスが持つ、大量生産に向けた自動養殖システム検討の課題に対し、NTT東日本のICT技術を活用することで食用コオロギの供給拡大に貢献すること。NTT東日本は約3000のビルなど不動産を持っており、そうしたアセットの活用――の3つの点を挙げた。
2019年6月に国際連合より発表された報告書によると、今後30年で世界人口は97億人への増加が見込まれ、これに伴う食料問題への対応が課題となっているという。
特に「タンパク質危機」と称される動物性タンパク質の不足は顕著で、その解決策として国際連合食糧農業機関は昆虫食を推奨。一方で、世界では年間約9.3億トンの食品ロスが発生しており、その量は全世界で生産されている食品の約3分の1に相当するという。
グリラスではこれらの社会課題の解決策として、飼育時に必要な餌や水の量と、温室効果ガスの排出量が少ない食用コオロギを、食品ロス由来100%の独自配合飼料を用いて生産している。しかし、最新の情報工学的アプローチを取り入れることは、十分にはできていなかったという。
こういった状況を踏まえ、同実験では、グリラスの有する食用コオロギの飼育ノウハウと同社が提供するICT/IoTソリューションを掛け合わせ、より最適な食用コオロギの飼育環境の構築および、確立などを目指す。
NTTe-City Labo内の一室に食用コオロギの飼育施設(食用コオロギ養殖ブース)を整備。実証の基礎となるコオロギの飼育における環境要因のデータ収集および、分析を開始する。
なお、同施設は稼働後の一般見学の受け付けも予定しており、タンパク質危機や「食品ロス問題」「食料安全保障」といった社会課題の解決策として期待される食用コオロギに関する展示と共に、実際の飼育風景が見学できるという。
今後は、同実験を通じた食用コオロギのスマート飼育環境の構築・確立を目指すとともに、需要拡大を見据えて、飼育施設拡大も含めた事業化に向けての検討を進めていくという。
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