UchuBizとCNET Japanが共同で開催した「Space Forum 業界の垣根を超えて広がる宇宙ビジネスの可能性」が12月6日にオンラインで開催された。avatarin 代表取締役 最高経営責任者(CEO) 深堀昂氏と、日本旅行 宇宙事業推進チーム 中島修氏が登場したセッション「地上から宇宙を『身近』な存在に変えるには?」をレポートする。
セッションに登壇した2社は、宇宙が人類にとってまだ遠い存在である中で、人々が地球に居ながら宇宙を身近に感じられる活動やサービスを提供する企業という共通項を持つ。宇宙ビジネスに挑戦するにあたっては協業関係にもある。
avatarin(アバターイン)は、2020年にANAホールディングス(ANAHD)からスピンアウトして誕生したスタートアップである。CEOの深堀氏は同社の事業内容について、「我々が取り組んでいるのは、全く違う移動インフラを作るということ。その際に人の肉体を移動するのではなく、人の意識や存在感、技能を色々な場所に設置していくロボットやアバターに伝送し、誰もが社会参画を可能とすることにチャレンジしている」と説明する。
足元の事業としては、アバターを使って全国の観光地や病院内での移動やコミュニケーションを可能とするサービスを提供している。同社が目指しているビジョンは「移動の民主化」であり、「意識だけを伝送し、現実空間、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)という3つの世界を新しい移動手段を使って行ったり来たりできる世界を目指している」(深堀氏)という。
宇宙領域でも、様々な技術開発を研究している。具体的には、内閣府の「ムーンショット研究開発制度」に採択された人の技能を模倣学習する高性能なアバターロボット、通信環境が悪い宇宙向けにデータを3%程度に圧縮し、容量が圧倒的に低い中で画像がきれいに見える映像伝送アルゴリズムの研究に取り組んでいるという。
それらの研究開発の過程で、宇宙ステーション(ISS)に同社の技術を運び、子どもたちの課外授業や体験学習の一環として、ISS上のロボットを遠隔で動かすという体験会(スペースアバター操作体験)を実施。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、JAXAの前身である宇宙開発事業団(NASDA)の施設以外から人がコマンドを送って何かを動かすというは初めての試みであり、4日間で約400人が体験したという。
「これまで宇宙に行った宇宙飛行士は50年間で500人程度ということを踏まえると、アバターで宇宙に飛び出していくことには相当な可能性がある。宇宙船内で浮遊したロボットを使って人を支援したり、宇宙旅行をアバターで実現したりという世界が来るはず」(深堀氏)
また自社の技術開発以外にも、米ロスアンゼルスで高性能アバターロボットを開発するレースANA AVATAR XPRIZEの運営団体であるXPRIZE財団とパートナーシップを結び世界から約800チームを集めるなど、国際的なムーブメントも牽引しているという。それらの活動を通じて、「将来遠隔でのアバターを使った宇宙旅行だけでなく、一般の企業や人が深宇宙の探査や採掘をすることも可能になる日が来ると期待している」と深堀氏は語る。
一方の中島氏は、日本旅行という大きな組織の中で宇宙事業に携わっている。経緯としては、自ら宇宙に可能性を感じ、新規事業として宇宙事業を立ち上げたという。事業の内容は、旅行会社の宇宙事業ということで宇宙旅行ツアーの開発を目的としていると思いきや、決してそのようなものではないという。
「日本旅行はコロナ禍で事業改革を進めていて、単に旅行を提供するのではなく、今まで旅行ビジネスで培ってきたノウハウを生かして新たな価値を提供する企業グループになろうとしている。宇宙事業は『事業共創事業本部』の取り組みとして、様々なパートナー企業とタッグを組んでソリューションを提供するビジネスを展開している」(中島氏)
そして宇宙事業で目指すのが「宇宙を利活用したコンテンツビジネス」と「様々な企業や団体との共創で新たな価値を提供するソリューションビジネス」の2点である。それにより、他社のアセットやサービスを組み合わせて提供する従前の旅行ビジネスから脱却し、自社のコンテンツで勝負することを目指しているという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス