家族のごはんをサポートするアプリ「うちれぴ」--サッポロが実現した買い物から調理の一気通貫 - (page 2)

スーパーから調理家電まで食材情報が連携

 今回のスマートレシートとの連携がもたらしたもう1つの価値が、うちれぴが事業設計段階から掲げていた、買い物からレシピ決め、調理までのスマートなデジタルサービス化を実現したことだ。

 市場にさまざまなレシピ系アプリサービスが存在する中で、うちれぴが目指すのは、他の食品メーカーやスーパーマーケット、調理機器メーカーとも連携し、買い物から調理まで料理に関する一連の体験をシームレスにつなぐワンストップサービスである。

 「うちれぴの事業化を検討した2019年当時、世界では家電メーカーやレシピ系コンテンツを提供している企業がIoT家電を使った調理のワンストップサービスを始めていたのですが、日本では食文化面での独特さと各分野での企業の壁が存在していたため、このようなサービスをつくるのが難しい状況でした。うちれぴではそこをブレイクスルーできれば面白いサービスになると考えて、サービス開発を進めています」(保坂氏)。

 現時点でうちれぴが実現しているサービスの流れを説明すると、まずお店で会計する際に、レジでスマホのスマートレシートのアプリ、もしくはスマートレシートと事前に連携させたお店の会員証を立ち上げて、バーコードを読み込んでもらう。すると、スマートレシートに購入した食材などの購入情報が「電子レシート」として表示される。次にうちれぴ内でスマートレシートのタブを開くと、レシート情報が読み込まれ、以前からストックしているものも含めて食材を管理できるようになる。そこから家庭にある食材を使ったレシピ検索によって献立を選び、メニューを選択して調理をすると、使った食材がうちれぴ内の一覧から自動で消える仕組みとなっている。

 またその際には、シャープの「ヘルシオ」や「ホットクック」を使った調理メニューも表示される。無線LANに接続できる同製品群のユーザーであれば、同社のIoT対応のキッチン調理家電と連携したレシピを紹介する専用サイト「COCORO KITCHEN」レシピサービスを通じてレシピを調理家電にダウンロードし、食材をセッティングするだけで自動調理ができる。

次は冷蔵庫とのつなぎとデータ活用に注力

 今後の展開に関しては、まずは東芝テック・シャープとの連携の枠組みで、個々のサービスを磨きつつ、買い物から調理までの体験をシームレスにつなぐサービスとしての利便性をアピールしていく。その上で、入り口では食品販売系・産直系のショッピングモールや通販サイト、調理段階では他メーカーのスマート家電・調理家電との連携を目指すとのことである。さしあたっての次なる一手としては、ユーザーの負荷を減らすために、冷蔵庫内管理の自動化等も模索しているという。

 「冷蔵庫は、買い物や調理家電と密接に関わってきます。入り口となる『何を買ってきたか』と出口となる『何を作ったか』を捉えることができれば冷蔵庫内在庫をざっくりと把握できるようになります。現状のうちれぴはこの考え方のもと在庫を把握してレシピ提案をしていますが、その際に、食材の有無だけを考慮しており、食材の量までは把握できていません。世の中には冷蔵庫内在庫を把握するサービスが色々と出てきていますので、それらと連携することで、これまで以上に便利な体験を作り出すことができると考えています」と河内氏は明かす。

 入り口から出口までのワンストップ化を訴求することで、機能面における利便性を提供するだけでなく、データ活用の強化も図る。そこでは当然マネタイズ面も含めて、レシピのパーソナライズ化でソフト面のサービス向上を追求していく構えである。

 「もともとうちれぴは、『ユーザーが何をつくろうか決めてそれを実際に料理に落とし込む機能』と、『作った料理に対して家族がどんな気持ちを持ったのか、感想を蓄積する機能』を主軸とするアプリとして立ち上げました。また、買い物から調理までのワンストップサービスという観点においては、これまでは下流側を伸ばして調理以降のデータを取得してきました。今回のスマートレシートとの連携により上流側が伸び、買い物のインプット情報が入ってくることで、サービス全体が拡張し、利便性が大幅に向上します。さらに、うちれぴ内で蓄積されるデータそのものの価値向上が図れます。最終的には、嗜好や健康面からユーザーごとに最適な献立を提案できるようにすることを目指しています」(河内氏)

食領域のサービスは日本の企業が作っていくべき

 現在レシピ領域に関しては、たくさんの食品メーカーとの情報連携を実現しているが、買い物の領域や調理家電の領域でも同様にオープンな関係でさまざまな企業とつながり、ユーザーにとって便利な世界観を実現していきたいと河内氏は訴えかける。

 「これまで日本企業は、協業や共創を苦手としてきたと感じています。そこでわれわれがハブとなり、買い物系と調理系といった異なる業界間や、食品メーカー同士をつなぐことで、食の領域で新しい価値を生み出せると考えています。それを実現することによって、企業と消費者の双方に喜んでもらえるサービスづくりができるのです。デジタルを活用した調理のワンストップサービスは海外の方が進んでいる状況ですが、食の分野は地域毎に発展してきた食文化が密接に関わってくるが故に地域性が強い領域なので、日本では日本の企業がサービスをつくっていくべきです。各分野の国内企業の皆さま、われわれと一緒に新しい食領域のデジタルサービスの仕組みをつくりましょう」(河内氏)

「うちれぴ」事業を推進するサッポロHD 経営企画部 新規事業準備室の保坂将志氏、濱田結花氏、河内隼太郎氏
「うちれぴ」事業を推進するサッポロHD 経営企画部 新規事業準備室の保坂将志氏、濱田結花氏、河内隼太郎氏

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