Microsoftが人気チャットボット「ChatGPT」の開発元であるOpenAIに100億ドル(約1兆3000億円)を出資する交渉を進めていることが、その契約をよく知る情報筋らの話として報じられている。
Semaforによると、Microsoftは、他の複数の企業が関与する契約の一環として、OpenAIに対する100億ドルの出資を検討しているという。出資者候補に送られた文書には2022年末までの完了を目指すと書かれていたが、完了したかは不明だとしている。
The Wall Street Journal(WSJ)は先週、OpenAIが株式公開買付けによる既存株式の売却を交渉中で、OpenAIの評価額は約290億ドル(約3兆8000億円)になる見込みと報じていた。Microsoftらが関与する100億ドルの出資について報じたSemaforも、OpenAIの評価額は約290億ドルになる見込みとしている。
OpenAIは非営利組織として創設されたが、2019年3月に「利益に上限のある」営利企業OpenAI LPを創設し、営利と非営利のハイブリッド体制に移行した。従業員と投資家を引きつけて、目標を達成した場合は上限付きで利益を還元するためだ。上限を上回る利益は、OpenAIの非営利部門に還元される。OpenAIは当時、大規模クラウドコンピューティングとAIスーパーコンピューターに今後数年間で数十億ドルを投資する必要があるとしていた。同年7月、MicrosoftはOpenAIに10億ドル(当時のレートで約1080億円)を出資し、自社の「Azure AI」スーパーコンピューティング技術を基盤にOpenAIが汎用人工知能(AGI)を開発することを発表した。
Semaforの情報筋らによると、今回の新たな出資の後、Microsoftは出資額を回収するまでOpenAIの利益の75%を得るという。回収後はOpenAIの株式保有率に応じて利益が分配される。つまり、Microsoftは49%、その他の投資家らが49%、OpenAIの非営利組織が2%を得る。
ChatGPTは2022年11月のリリース時に、文学、政治、科学、コーディングについて自然に見える回答だけでなく、補足の質問も返すとして、世界を驚嘆させた。Googleの経営陣は、これがオンライン検索事業を覆す可能性があるとして、ChatGPTに対する「厳戒警報」を発したと報じられている。
ChatGPTやAIモデル全般は稼働にコストがかかり、現時点でChatGPTの回答の信頼性は低い。Q&AサイトのStack Overflowは、ChatGPTが生成した回答を同サイト上で一時禁止にしている。信ぴょう性があるように見えて実は誤った回答があまりにも多く、モデレーターの手に負えないためだ。
Microsoftによる追加投資の可能性に関する報道に先立ち、The Informationは先週、MicrosoftがChatGPTを「Bing」に統合して、同社の検索エンジンを強化する可能性があると報じていた。7日には、MicrosoftがChatGPTを「Office」アプリに組み込み、「Word」「PowerPoint」「Outlook」のオートコンプリートやサジェスチョンといった既存のAI機能を拡張する可能性があると報じている。
ChatGPTをめぐっては、一部の学校や大学で、ChatGPTで生成した小論文を学生が提出することに対する懸念が高まっている。ニューヨーク市教育局は先週、管轄する学校組織のオンライン端末およびインターネットに接続するネットワークでChatGPTへのアクセスを禁止したが、ChatGPTの背景技術を学ぶことが目的である場合はアクセスを許可するとした。ChatGPTの「学生の学習に対する悪影響」と「コンテンツの安全性や正確性」について懸念しているという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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