2022年ともなると、テクノロジー業界が真に斬新と言えるものを投入することはめったにない。確かに、テクノロジーはより速く、よりスマートで、より信頼できるものになった。しかし、あえて言わせてもらうと、やや退屈でありきたりなものばかりになってしまった。
こうした流れに逆らう企業があるとすれば、それは掃除機や「TikTok」で有名になったヘアカーラー「Airwrap」の開発元として最もよく知られているDysonだ。同社には大胆なデザインを手がけてきた長い歴史があり、面白みに欠けたものが多い家電製品に鮮やかな紫色や黄色を散りばめ、テクノロジーに対して人々が抱くイメージを覆してきた。
しかし、最新の製品「Dyson Zone」に関しては、そのデザイン哲学が少し行き過ぎなのではないかとの声もネット上には多い。オーバーイヤー型のノイズキャンセリングヘッドホンにひと工夫加えて空気清浄機能と一体化させた製品で、3月に発表され、このほど949ドル(約13万円)という価格と発売時期が明らかにされた(日本での展開は未定)。各イヤーカップに2重構造のフィルターを搭載したコンプレッサーが内蔵されており、顔の下側を覆うクリップ式の取り外し可能なシールドで、口と鼻の周りの空気を循環させる仕組みだ。
Dysonは、空気清浄機に関する専門知識を生かして、大気汚染に悩む地域で移動中も人々が自分の身を守れるようにしたいと考えており、Dyson Zoneはそうした思いから開発された。同社は複数の大学と提携して都市部の大気汚染に関する調査を実施しており、大気汚染が健康に及ぼす多大な影響について理解を深めている。世界保健機関(WHO)によると、大気汚染が原因の疾病で早すぎる死を迎える人は世界で年間700万人に上るという。2050年には世界人口の7割が都市部に住むようになると世界銀行は予測しており、Dysonは今すぐ行動を起こしたかったとしている。
ただ、Dyson Zoneについては、実際に機能するかどうかよりも、その斬新なデザインに大きな注目が集まっている。これは筆者も含めて意見が分かれるところだ。
「この製品が目を引くのは明らかだ」と、Dysonで長年エンジニアを務め、現在は同社が新設したウェアラブル部門を率いるJames Terry-Collins氏は、先ごろ行われたインタビューでこう述べた。メディアではさかんに「奇妙」と形容されたり、「バットマン」に登場するマスクをした悪役「ベイン」と比較されたりしているが、筆者はDyson Zoneを表現するのに使ってほしい言葉は何かと尋ねた。
「独自性(distinctive)だ」とTerry-Collins氏は答えた。同氏によると、Dysonのやり方はこれまで目にした他のどの製品とも異なる外観の製品を作ることだが、それが「象徴的なデザイン」になるのだという。Dyson Zoneも、そのようなものとして見てほしいと同氏は述べた。
Dyson Zoneは、現時点でまだ入手できない。2023年1月に中国で発売され、3月には米国、英国、香港、シンガポールでも発売される予定となっている。
発表に先立ち、米CNETはDyson Zoneが開発された英マームズベリーにある同社のキャンパスを訪れた。Dyson Zoneを分解したところを見ると、このデバイスが技術の粋を集めたものであることは明らかだった。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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