Appleは2015年から、年間2億台以上のiPhoneを出荷している。ピークとなる会計年度は2015年と2021年で、2億3000万台以上のiPhoneを出荷した。2015年はiPhone 6シリーズが登場し、画面を4インチから4.7インチ・5.5インチへと大幅に拡大させたタイミングだった。そして2021年はデザインの大きな変更と5G対応を果たしたiPhone 12シリーズが、コロナ禍にも関わらず好調だった。
(データ:Statista https://www.statista.com/statistics/299153/apple-smartphone-shipments-worldwide/)近年、先進国を中心にiPhoneはシェアを拡大させているにも関わらず、iPhoneの最大の生産台数は前述の2億3000万台で頭打ちとなっている。そもそものスマートフォン市場の飽和状態もさることながら、他の要因もまた指摘することができる。
その一つが、資源の問題だ。単純に考えて、2億台ものiPhoneが世に生み出されるということは、一台あたり200gとすれば400トン以上の資源が地球から採掘され続けていることになる。単純に考えて、これが持続的だと捉える方が間違っている。
欧州化学会議(EuChemS)は炭素、イットリウム、ガリウム、ヒソ、銀、インジウム、タンタルの7つの元素が、スマートフォン製造のために持続不可能な形で用いられることによるリスクを警告している。
これらの元素は地球のグリーンシフト(脱炭素)のために必要な機器にも用いなければならないにもかかわらず、スマートフォンによって無駄遣いし、枯渇を招くとの論調だ。
この意見はかなり偏っている。なにもスマートフォンのみが悪いわけではなく、欧州に主要スマートフォンメーカーがないことも加味すべきだ。ただし、資源の枯渇は、スマートフォンメーカーがスマートフォンを作り続けられなくなることを意味することは間違いなく、無視できる意見ではない。
また、スマートフォンのライフサイクルの中で、80%の二酸化炭素排出が製造工程で起きる。これはiPhoneでも、Pixelでも同様で、故にスマートフォンの製造を減らすことが環境保全につながる点を指摘する科学者やアナリストが多い。
また、スマートフォンの製造を担ってきた中国の地政学リスクも、スマートフォン製造をこれまで通り進めることができなくなる可能性をもたらすものだ。
中国と台湾の関係悪化や紛争の勃発は、iPhoneのサプライチェーンを見ると非常に危機的であることがわかる。iPhoneの心臓部であるAシリーズチップは台湾で作られており、これを中国に持ち込んで組み立てられなくなれば、iPhoneが完成しなくなる。
それ以外にも、先週、ゼロコロナ政策の中でiPhoneの製造を続けてきたFoxconnの工場で激しい抗議活動が起きた。そもそもコロナ封鎖によってiPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxの製造に影響が出る点を、Appleはプレスリリースで警告していた。
こうしたリスクの中で、Appleがこれまで通りiPhoneの製造を続けていけるのかどうか、持続性があるかどうかに注目が集まる。
資源の問題、気候変動への対策について、Appleはより先進的に取り組んできた。レアアース、レアメタルのリサイクルは進んでおり、主要な外装パーツであるアルミニウムは、リサイクルだけでなく、二酸化炭素を排出しない精錬方法を実用化した。
またiPhoneの箱を小さくして輸送を効率化したり、ユーザーの充電により多くのクリーンエネルギーを活用する仕組みを米国で始めるなど、カーボンフットプリントの縮小策を次々に実現している。
一方、地政学リスクについても、Apple siliconの米国での製造計画や、TSMCの半導体の熊本での製造など、主要パーツの製造地の変更、インドでの製造の拡大など、対策を打ちつつある。ただし性急な脱中国もまた避けるべきで、難しい舵取りが続くことになる。
Appleがこうしたリスクに対して、あるいはスマートフォンを毎年作り続けるべきではないという意見に対して、どのような答えを出していくのだろうか。
スマートフォン搭載の希少金属に枯渇の危機--温暖化にも影響か(11/22) 中国Foxconnの「iPhone」製造工場で従業員が激しい抗議活動(11/24)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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