アマゾンジャパンは2022年に入りインフラ設備投資に力を入れている。ラストマイルデリバリーの起点となるデリバリーステーション(DS)は、2021年に5拠点、2022年には18拠点を新設し、全国で45拠点となった。これまで配達時間がかかっていた地域にもDSを設けることで独自宅配システムの強化に力を入れている。
その1つ、沖縄県の那覇空港に近い豊見城(とみぐすく)DSは沖縄県最大規模のマルチテナント型物流施設内に設けられ、これまでは注文から5〜7日以上ほどかかる配達時間を最短で翌日と大幅に短縮するだけでなく、独自配送サービス「Amazon Flex」の導入によって置き配を含む配達場所の指定を実現している。
大げさかもしれないが、このDSの進出は沖縄のライフスタイルを大きく変化する可能性がある。
那覇市内に住む人たちに話を聞いたところ、これまでにも宅配便は利用されていたが、その多くは近所では見つからない商品を探すためで、宅配を使用するシチュエーションとしてはよくある緊急で欲しいものを注文することはできなかったという。
また、欲しいモノが安く見つけられても、配達料が高い上に届く時間も遅い場合がほとんどで、利用したくてもしづらかったという。700万点以上の商品で翌日配送が可能になるというアマゾンのDS進出への期待は大きく、開設され前から話題になっていたとのことだった。
アマゾンのDSやフィルフィメントセンター(FC)などの配送部門を担当するアマゾンロジスティクス(AMZL)で、日本国内の全エリアを担当するディレクターのAwanish Narain Singh(アヴァニシュ ナライン シング)氏は、沖縄に拠点を設置した理由として対し「成長が見込め、配達のスピードを上げてお客様の買物体験をより良くするために設置を決めた」と述べる。
沖縄県では2022年の3月14日から、離島などの一部エリアを除いてお急ぎ便が利用できるようになっていたが、豊見城DSの新設とAmazon Flexの導入でドライバーと直接契約できるようになり、置き配がデフォルトになる。ユーザーとドライバー両方にとっての時間の無駄となる再配達が減らせるとしている。
さらに、DSを進出する目的として挙げているのが地域に雇用機会をもたらすことだ。具体的な採用者数は公開されていないが、ステーションマネージャー、シフトアシスタント、ラーニングコーディネーター、ドライバーマネージャー、安全衛生管理など職種は多岐に渡り、11月末から始まるセールスシーズンなど需要が増える時期に採用を増やすことも予定している。
現時点でAmazon Flexが対応できる範囲はまだ限られているが、シング氏は「利用の拡大が見込めれば豊見城DSのキャパを拡大するか、場合によってはDSを別の地域に増やす可能性もある」とコメントしている。
そうした意味ではアマゾンが沖縄地域に本格的に進出するのはこれからだ。同社は、沖縄が発祥の地である空手にスポットをあて、注文した帯が飛行機でDSに集荷され、1時間ほどの距離にある道場に置き配で届けられるという、沖縄を舞台に制作された動画を11月末に公開。多方向から力を入れているようとしていることが伺える。
親子三代で出演している少林流聖武館の島袋一家に話を聞いたところ、館長を務める島袋善保氏は、「普段の移動の足は自動車で買物をする時間も範囲も限られるため、通販は一家全員で利用していて、スポーツ用マスクのような手に入りにくいものを購入する時は便利だ」とのこと。
今までは注文してから配達されるまで1週間かかることもめずらしくなかったが「注文から翌日に届くようになり、時間を気にせずに受け取れるのであれば利用する頻度はこれから上がるかもしれない」とも話した。
本社がある米国では業績下降による過去最大の人員削減計画を発表しているアマゾンだが、一方で日本市場に対しては、11月21日に初発刊された「Amazon Economic & Community Impact Report」によると、DSなどの設備投資と雇用創出などの営業費用として2021年単年で1兆円以上を投資している。同年の直接雇用社員数は1万1000人で、DSでは数千人の新たな雇用を創出したと発表している。そうした日本市場への動きが2023年にどうなるのか、引き続き動向に注目する必要がありそうだ。
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