ある晴れた日の午後、スタンフォード大学のレクリエーションセンターで、筆者はロボットと一緒に泳ごうとしている。スポーツ用品店Sports Basementの親切な店員と相談してウェットスーツをレンタルし(「サーフィンには使えるが、ロボットとのダイビングに向いているかどうかは分からない」と言われた)、ロボットをクローズアップ撮影するために「GoPro」も装着している。
筆者が撮影しようとしているのは、「OceanOneK」という深海用ロボットだ。Stanford Robotics Labで、ロボット研究者のOussama Khatib氏が率いるチームによって開発された。1000m(「OneK」という名はこれが由来だ)まで潜水できる人型ロボットで、人間のような身体操作を目指して設計されている。可動式の頭部にはステレオカメラを備え、2本の腕もあり、それを伸ばして指で物体を扱うことができる。
体に付いている複数のスクリューで水中を進むが、このロボットで画期的なのは、触覚付きのコントロール機能だ。水の外にいるオペレーターが、自在に動くジョイスティックを使ってロボットとその腕を操縦し、ステレオカメラから水中の様子が3Dの映像として送られてくる(オペレーターは2基のカメラからの映像を画面で分割して見ることもできるし、3Dメガネを着用して立体で見ることもできる)。
人間のダイバー並みの敏しょうさと器用さを持つロボットに、人間には不可能な深度で手作業をさせるというのがコンセプトだ。
「OceanOneKは事実上、自分の手となり、目となる。水中にいる自分の分身のようなものだ」、とKhatib氏は語っている。
このロボットはまず、「OceanOne」という名前の試作機として誕生した。最初の開発とテストを経て、Khatib氏とそのチームは2016年に地中海で一連の潜水テストを実施する。だが、設計は問題なかったものの、もっと深く潜りたいとチームは考えた。そこでKhatib氏が取り組み始めたのが、OceanOneKだ。より堅牢で、試作機の10倍の深さまで潜ることができ、探査範囲も広くなる、そんな新しいロボットが必要だった。
しかし、さらに深く潜るとなると、試作機と比べておよそ100倍の水圧に耐えられるように設計し直さなくてはならない。そのために、Khatib氏とチームはロボットの腕にオイルを充填し、周囲の水圧に合わせてオイルを圧縮する特殊なばね機構も取り付けた。この設計は、腕の内部に組み込まれた精密な電子機器を保護できるうえ、ロボットに浮力を与えることにもつながった。
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