仙台市の沿道が「大きなシェアオフィス」に--主催者に聞く社会実験の狙いと背景

 10月16〜17日の2日間、仙台市青葉通で行われた社会実験「AOBADORI MACHI to HATARAKU」。誰でも使用可能なオフィススポットの設置、そしてキッチンカー出店やイベント実施など、沿道利活用と新しい働き方への適応を軸とした取り組みだった。買い物や観光スポットにもアクセスしやすい立地であり、ワーケーションの視点からも今後の大きな可能性を感じる。

 この社会実験は、青葉通まちづくり協議会が主催したもの。では、どのような理由と狙いから実施されたのか。泉田朝一郎氏、菅野直樹氏の2人に詳細を聞いた。

(左から)青葉通まちづくり協議会の泉田朝一郎氏、菅野直樹氏
(左から)青葉通まちづくり協議会の泉田朝一郎氏、菅野直樹氏

青葉通を大きな「シェアオフィス」に

 仙台駅前から続く青葉通。多くの企業がオフィスを構えるほか、アーケード商店街や百貨店なども近隣にあり、実にさまざまな人々が行き交う場所だ。この通り全体を舞台にするということで、国内でも珍しい形の取り組みと言えるだろう。では、いったいどのような着想から、この社会実験が生まれたのだろうか。

泉田氏:現在、仙台市が歩道空間の拡張に取り組んでいます。その空間の利活用については、私たちも魅力向上などを目的として活用していきたいと考えていました。2019年と2020年にも社会実験を行っていて、その際は家族連れなどをターゲットとし、週末に芝生を敷いてテーブルを設置するという活用検証。そして今回は、多様化する“働き方”に着目しての社会実験です。

菅野氏:青葉通の沿道には、オフィスワーカーや店舗販売者など色んな方々が集まって日々仕事しています。そこで働いている方はもちろん、市外、県外から訪れる人も少なくありません。これは、仙台市中心部の中でも特徴的なことです。では、そうしたワーカーのために、どんな企画が響くのか。これが、この社会実験を考えたキッカケでした。執務室に閉じこもるのではなく、少しだけ外に出てみる。歩道上や地下通路などの公共空間、そして40数社ある青葉通まちづくり協議会の会員企業のオフィスも解放してもらいながら、働く場所を広げてみようと。そうすれば、沿道が大きなシェアオフィスになるのではと考えたんです。


 以前から形を変えつつ、青葉通の沿道利活用を目的として取り組んできたとのこと。今、どうすれば青葉通の魅力につながり、多くの方々に利用してもらえるのか。“実験”という名の通り、これで終わりではなく、先々を見据えた取り組みのようだ。

泉田氏:この社会実験が、新しい魅力の創出や賑わいにつながっていければ良いなと思っています。青葉通にはさまざまな働き方があるため、多様な職場環境の可能性を探りたいというのが狙いの1つですね。実際、ここからどのような形で次につながっていくのか。拡大の可能性も含め、アンケート内容など皆さまの声をもとに検討していきます。

菅野氏:特に地下通路の活用については、仙台市からのお話もあって利活用を考えていました。以前は噴水があったのですが、これを撤去してイベント広場にしたものの、上手く機能していないことが課題だったんです。

いかに継続するのかが課題

 青葉通まちづくり協議会が発足したのは、2012年8月のこと。宮城県でも大きな被害が出た、東日本大震災の翌年である。発足当時は景観条例の制定(ガイドライン)のため、沿道にオフィスを持つ企業に会員になってもらい、勉強会を通じてガイドラインを作ってきた。それから、少しずつ魅力づくりなどに取り組み始め、活動の重点がシフトしたことで社会実験が始まったのだという。

菅野氏:今回の社会実験は、夏頃から構想が始まりました。ですから、準備期間は2〜3カ月ですね。協議会活動と言いながら、限られた予算の中でどう取り組むのかなど課題は山積み。しかし、幸いにも多くの協力を得られたので成り立った実験です。例えばアロマやBGMなど、多くの企業が賛同し協力してくださいました。


 ただ、大切なのは今後のこと。ただのイベントとして終わっては意味がなく、ここから先にどうつなげていくのか、むしろアンケート結果などのフィードバックを集めた後が本番とも言えそうだ。

泉田氏:この取り組みを、いかに継続させていけるのかが今後の課題です。実際のところ、企業等からの協力や協賛で成り立っている部分が大きいので、予算の捻出も難しい問題になってきます。企画自体は毎年やっていきたいと思うものの、規模や頻度などの検討は必要ですね。


 一時的に協力を得らえても、継続という視点では、必ずしも同じように継続できるとは限らない。もちろん予算のみではなく、街を巻き込んだ取り組みだからこそ、実施に向けては慎重に検討せざるを得ない部分が多いだろう。

現場で感じ取った大きな可能性

 インタビューは、東二番町交差点地下通路に設けられた、ポップアップオフィスで行った。その最中も地下通路には多くの人々が行き交い、足を止めて説明を受けたり、実際に椅子へ座って利用したりする人がたくさん。この様子を見て、お二人も今後に向けた手ごたえを感じたようだ。

泉田氏:想像していたよりも、多くの方々に使っていただけている感じがありますね。まずは沿道で働く方々へのアピールが第一ですが、一定の認知が広がってくれば、外から仙台市を訪れる方々からも活用の可能性は広がってくる気がします。

菅野氏:思いのほか興味を持ってくださる方が多いですね。調査検証という意味では、その場所の使い心地をぜひ知りたいと思っています。アンケート調査を行っているので、どのような声があがっているか楽しみです。


 そう笑顔で話す姿からは、この取り組みが青葉通の魅力創出などにつながる可能性を感じ取ったことが伺える。青葉通沿道における多様な働き方への対応はもちろん、ワーケーションに訪れた方々にとっても利便性が高まりそうだ。

 今回は2日間の限定だったが、これが“通常”になっていけば、仙台市はワーケーションに訪れやすいスポットとして認知が広がるかもしれない。この社会実験が、今後の沿道利活用においてどのような形へと成長していくのか。2023年以降の取り組みにも、ぜひ注目したいところだ。

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