歴史的に、人間の創作プロセスを説明するのは困難とされてきた。米国の小説家でジャーナリストだったTheodore Dreiserはかつて、「芸術とは、人間の魂に蓄えられた蜜である」と語った。19世紀の画家であるVincent Van Goghは、「私は絵を夢に見て、夢を絵に描く」という言葉を残している。多くの人にとって、芸術は、潜在意識下の想像という深い井戸から引き出されるものだ。
それでは、人工知能(AI)によって作り出された芸術を、その芸術の概念に当てはめることはできるのだろうか。人類が芸術を定義しているのであれば、その定義を短いキーワードに縮めて生成ツールに入力するだけで十分なのだろうか。
それはもはや、理論上の問題ではなくなっている。8月下旬、AIによって作り出された芸術作品が、州の美術コンテストで優勝した。Jason Allen氏は、AI画像生成ツールの「Midjourney」で生成された画像の中から選んだ作品群を、コロラドステートフェアのデジタルアート部門に出品した。優勝作品「Théâtre d'Opéra Spatial」は、絵の大部分を占める入り口から差し込むまばゆい太陽と、ゆったりと間をとって配置された人物が描かれており、大きな可能性を感じさせる。
Midjourneyでは、コマンドを入力するだけで、誰でも個性的で創造的な作品を生成することができる。このAI画像生成ツールで人間に求められる唯一の要素は、プロンプトだ。ユーザーが生成したい画像を説明する言葉を入力すると、このAIは60秒以内に4枚の新しい画像を生成する。
「Discord」へのアクセスさえあればよい。Midjourneyは現在ベータモードにあり、一般のユーザーに公開されている。
Allen氏はMidjourneyを使用して多くの画像を作成し、自身でトップ3に絞り込み、それらの作品を拡大してキャンバスに印刷した。同氏はDiscordサーバーで、1位を獲得したことを発表し、以下のように記した。
私はMidjourneyの作品をコンテストに出品することで、メッセージを発信しようとした。自分のお気に入りの「Théâtre d'Opéra Spatial」で優勝できたことについて、これ以上ないほど興奮している。
皆さんのご想像どおり、反応は賛否両論だった。あるデザイナーは、大きな問題は、「審査員たちがAIの作品であることに気づいていなかったことであり、(このことは)人間とAIのイラストに関する議論にとってマイナスの材料になってしまう」とTwitterでコメントした。Allen氏の優勝は、人間による入力をほとんど必要とせずにAIが美術作品を作り出せることの証明となった。
Allen氏は実際には画像を微調整しているが、AIは既存のアートからさまざまな要素を抽出して組み合わせることで、新しい作品を完成させている、と指摘するデジタルアーティストもいる。あるアーティストは、以下のようにTwitterに記している。
これに関して私が問題視しているのは、彼らが「AIを使用した」こと自体ではなく、AIを使っていることで、ここにあるすべてが、オマージュや研究でさえ行われない方法で、多くのアーティストの作品から文字通り盗まれたものになっているということだ。
ここで懸念される要素は、創作の定義である。プロンプトを入力して、出力を微調整し、自分の作品だと主張するだけで十分な創作と言えるのだろうか。プロンプトはその人のアイデアかもしれない。「宇宙のバロック」「まばゆい太陽の周りに集まった王族」、あるいは、もっと具体的なプロンプトを入力したのだろうか。出力された何百枚もの画像から1枚を選出したのかもしれない。しかし、それは、真にその人の作品になるのだろうか。
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