コーポレートブランド刷新の意図とスポーツ事業の展望--ミクシィ木村社長に聞く

 コーポレートブランドを2022年4月にリニューアルしたミクシィ。「モンスターストライク(モンスト)」やSNSの「mixi」をはじめ、近年はスポーツ関連ビジネスにも力を入れ、Jリーグの「FC東京」やB.LEAGUEの「千葉ジェッツふなばし」をグループ会社化するなど年々事業の幅を広げている。4月のリニューアルでは、社名は「ミクシィ」のまま(※10月1日に「MIXI」と英文表記に変更予定)、新コーポレートブランドロゴを採用。タグラインに「心もつなごう。」を追加している。

 これらコーポレートブランドのリニューアル背景と経緯、そして同社が新たなチャレンジと位置づけるスポーツ観戦市場や公営競技市場への取り組みや狙いについて、代表取締役社長の木村弘毅氏に話を聞いた。

ミクシィ 代表取締役社長の木村弘毅氏
ミクシィ 代表取締役社長の木村弘毅氏

コロナによりコミュニケーションの分断が起こった

――木村社長は2018年に代表取締役社長に就任されましたが、就任してからのこの4年間について聞かせてください。ちょうどこの3年間はコロナに翻弄された期間でもありました。

 経営環境でも各国の政治面でもコロナの影響を大きく受けるなかで、どうやって会社のかじ取りをしていくかを考えた3年間でした。

 私はIT産業を、インターネットプロバイダーの契約数の伸びや、スマートフォンのハードウェアの成長とともに発展してきた産業だと思っています。しかし国内では既にスマートフォンの保有率が約9割と言われ、上りエスカレーターのように伸びていく事業はほぼ皆無ですし、海外でもプラットフォーマーの役割を再検討する論争が起きています。

こうした状況から、インターネットをより民主化していこうというWeb3のムーブメントも生まれているわけです。

 それに加えてコロナで各国が鎖国状態になり、コミュニケーションが断絶した影響がとても大きかったと思います。日本に外国人の方も来られず、日本人も海外へ行かない、かつてないほどの鎖国状態が続きました。海外情勢の変化もあり、まさにコミュニケーションの分断が起きています。

 米国においても金融引き締めが起こり、リセッション(景気後退局面)が起こるのではないかと言われているなど、コロナがあらゆる面で影を落としています。日本では先日、経済産業省が「未来人材ビジョン」を発表しましたが、その内容も非常に厳しいものでした。そんな状況の中で、新しいことに踏み出すためのきっかけがなく、みんなが苦しんでいる――そんなことを感じ続けた数年間でした。

――特に苦労された部分は何でしょうか。

 事業を進める上では、社会の既成概念を変えるのは時間がかかる、と感じています。例えば当社も参画している「スポーツエコシステム推進協議会」ではスポーツの新しい財源を作ってサステナビリティを高めていこうとしていますが、新たな財源を作るために必要な規制の撤廃までの歩みが遅い。慣性の法則が働いて、なかなか変化できないと強く感じています。

全員が同じ方向に向けて歩んでいくための企業理念の整理

――今回のコーポレートブランドのリニューアルはいつごろから考えられていたのか、またその意図などを教えてください。

 きっかけとなったのは、SNSやゲームだけでなく、スポーツなど新しい事業が増えていったタイミングです。企業体としてどこを目指して行くのかを明確に示さないと、全員が同じ方向に向けて歩んでいけません。従業員や役員、株主など様々なステークホルダー全てに関わる問題だと思っていたので、あらためて理念体系を整えました。

 世界にはさまざまな問題がありますが、僕は全てコミュニケーションの問題だと思っています。コロナで移動が制限され、コミュニケーションも制限されると、ほかの国に対して思いをはせることも難しくなる。サッカースタジアムやバスケのアリーナでみんなで声を出して応援することが禁止され、QOL(Quality of Life)が下がってしまった。

 我々がより豊かな社会を営んでいく上で注視すべきなのは、やはりコミュニケーションです。私たちミクシィは、SNSの「mixi」やゲームの「モンスト」、子どもの写真・動画共有アプリの「家族アルバム みてね」などのサービスを通して、仲間と心を通わせたり、身近な人々とのコミュニケーションを担っています。

 こうしたコミュニケーションの活性化が豊かな社会を永続させることにつながると、ここ数年コロナによってより強く感じています。そこに向かって全身全霊をかけて最速で挑んでいく。そのためには理念に共感してくれた仲間が集まってくる必要があります。そんな思いがあり、もう一度企業理念を整理しようと考えました。

【ミクシィが新たに制定した企業理念】

パーパス:豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。
ミッション:「心もつながる」場と機会の創造。
ミクシィ・ウェイ:ユーザーサプライズファースト

ブランドの再定義にあたり、「ミクシィが提供するコミュニケーションサービスはきちんと人々の心もつなぐものだ」、と再認識したという
ブランドの再定義にあたり、「ミクシィが提供するコミュニケーションサービスはきちんと人々の心もつなぐものだ」、と再認識したという

――今回は社名の変更はされずに、コーポレートロゴの変更のみ行われました。この決定までは、社内でどのような意見が出たのでしょうか。

 社名を変えるべきではないか、という意見もありました。GoogleがAlphabetという上位会社を作っているように、さまざまなグループ企業の上に立つブランドが、SNSサービスと同じ名前を引きずったままで本当に良いのか? コミュニケーションを標ぼうする上位概念のブランドを作るべきではないか? という意見もありました。

 しかし、当社は「人と人とをミックスしていく」「コミュニケーションを生んでいく」ということを当初から目指してきたわけですから、人々のコミュニケーションを司るという意味で、社名はミクシィのままでいこう、と結論付けました。

 一方で、コーポレートブランドロゴは、太文字にして普遍性を持たせた、大文字の「MIXI」に変更しました。10月からは社名表記もカタカナではなくアルファベット大文字の「MIXI」に変わります。また、スポーツやゲームのようなアドレナリンが湧いてくる熱いコミュニケーションを「レッド」、SNS「mixi」や「家族アルバム みてね」のような温かいコミュニケーションを「オレンジ」に設定。両方とも暖色系の色味で、僕たちが届けるコミュニケーションは温度があるという意味をこのロゴに集約しました。

 そして新たにタグラインとして「心もつなごう。」を採用しています。IT企業ですと、いかに通信をつなげたり、情報をやりとりしてもらうかに視点が行きがちですが、僕たちはただ単純に通信するだけではなく、それによって心と心がつながることを意識しています。「家族アルバム みてね」であれば、単純にお子さんやお孫さんの写真を家族に共有して終わりではなく、そこにコメントがあったり、「かわいいな」とか「元気でやってるな」という感情もつなぎ合わせてはじめて、僕らのサービスになります。スポーツも勝った、負けたで一喜一憂しますが、その空間や場所、機会を作ってはじめて、心までつないだものになると思っています。

新コーポレートブランドロゴにはタグラインとして「心もつなごう。」を採用。「MIXI RED」は“熱いつながり”を、「MIXI ORNG」は“温かいつながり”を表現する「エモーションロゴ」として使われる
新コーポレートブランドロゴにはタグラインとして「心もつなごう。」を採用。「MIXI RED」は“熱いつながり”を、「MIXI ORNG」は“温かいつながり”を表現する「エモーションロゴ」として使われる

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