コーポレートブランド刷新の意図とスポーツ事業の展望--ミクシィ木村社長に聞く - (page 2)

赤池淳子 佐藤和也 (編集部) 藤代格 (編集部)2022年09月15日 10時00分

「千葉ジェッツふなばし」ではホームとして利用する大型多目的アリーナが2024年に完成予定、「FC東京」では国立競技場をより活用

――「FC東京」や「千葉ジェッツふなばし」のグループ会社化などスポーツ領域の事業展開もされていますが、この領域を通じてミクシィが目指すものは何でしょうか。

 目指したいのは、スポーツを中核とした熱いコミュニケーションを作っていくことです。スポーツほど人の感情を揺さぶるコンテンツはなかなかありません。生身の人間がぶつかり合うドラマや、そこから紡ぎ出される感動と高い熱量があり、人と人とが切磋琢磨していく。そこに心を打たれることは、今後もなくなるべきではないと思っています。

 それをいかにサステナビリティを持たせて経営、運営、発展させていくかが大きなテーマです。ホーム戦はスタジアムで一緒に応援し、アウェイ戦なら「Fansta」で近くの「HUB」などのライブビューイングできるお店を探して仲間と楽しんでもらうイメージです。

 一度実際のスタジアム観戦で熱量を高められれば、ライブビューイングでもより感動値を高められます。当社は、いまのところバーチャルスタジアム構想よりもリアルなコミュニケーションに力を入れており、コロナ後のリバウンド消費の時には、みんなでワイワイ応援したり、新規ファンを気軽に観戦に誘えるよう、地盤作りを行っています。

――スポンサーから始めた「千葉ジェッツふなばし」や「FC東京」が、現在はグループ会社となっています。こうしたチーム運営を行うこと自体もアクションとしては想定通りだったのでしょうか。

 このパターンも想定はしていました。米国のスポーツビジネスを見ていると、チームと箱の統合経営を行っていて、街ぐるみで経済圏を作ってビジネスとして成り立っています。そのため、チームと箱を統合して経営していくためのお手伝いをしていく必要があると考えました。例えば「千葉ジェッツふなばし」の場合はチームを所有し、三井不動産と一緒にホームアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」の建築も進めています。

三井不動産とミクシィが、千葉県船橋市に建築中の多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」(※画像は外観イメージ)。収容は1万人規模で、2024年春開業予定
三井不動産とミクシィが、千葉県船橋市に建築中の多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」(※画像は外観イメージ)。収容は1万人規模で、2024年春開業予定

――「FC東京」もグループ会社化されましたが、こちらも新スタジアムの建築構想などを進められるのでしょうか。

 都心のサッカー専用スタジアムはあるべきだと考えていますが、直近10年においては、建て替えたばかりの国立競技場を有効活用することが重要だと考えています。国立競技場でFC東京の試合も既に何度か行われていますが、サッカー専用スタジアムではないものの、思ったより良いという印象でした。

 国に財源がない中で新たなスタジアムを作るよりも、今ある新しい国立競技場を有効活用することが、国益になるのではないかと思っています。とはいえ、富裕層をいかに呼んで来れるかという視点では「VIPルームがあって現代アートが買える」というようなリッチな体験作りが必要ですが、現在の国立競技場にはその点で制約が多いのが残念です。

 逆に、建築中の「LaLa arena TOKYO-BAY」ではお客様同士がコミュニケーションを取りやすい空間やこれまでになかった観戦体験を提供したいと考えています。三井不動産グループが管理・運営する商業施設「ららぽーと」の旗艦店でもある「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」とも隣接していますので、相互に行き来して総合的に楽しめる場作りが可能であることが、新アリーナの特長だと思います。千葉はポテンシャルが高いエリアだと思いますので、こうした取り組みでさらに良い都市になればと思います。

――スポーツチームの海外展開は考えられていますか。

 現状すぐの海外展開は考えていませんが、海外チームとのアライアンスを行い、選手の流動性を高めることは目指しています。日本国内から選手をリクルーティングするにあたっても、海外で経験もできる組織であるという点を利点にできます。特に、「千葉ジェッツふなばし」の場合は優れたリクルーティング力はチームの生命線となっています。GMの池内氏が優秀ですし、新監督とともに池内体制を作っていき、揺るがないチーム作りができるのではないでしょうか。

「記録」をスポーツベッティングで、「記憶」をNFTでスポーツの財源に

――スポーツ領域に取り組み始めてから気が付かれた点などはありますか。

 やはり財源が圧倒的に足りないということです。日本の財源はこのままだとどんどん苦しくなっていく。その視点で海外を見ると、財源として2つが見えてきます。それが「スポーツベッティング」と「NFT」です。これにより、スポーツの持っている無形資産「記録」と「記憶」が活かせます。

 記録に関しては、さまざまなデータがスポーツベッティングの予測に使われています。米国では2018年の合法化以降、資金化されて税収が上がり、スポーツの競技団体やチームに還元されています。

 記憶に関しては、NFTです。米国のプロバスケットボール、NBA選手のスーパープレーをトレーディングカード化したデジタルプラットフォーム「NBA Top Shot」は、初年度で700億円ほどのマーケットに育っています。例えるなら、日本でおなじみの「プロ野球チップス」のカードがDX化されたイメージです。

 つまり、このトレーディングカードの価値は“記憶”です。スーパースターにまつわるカードを持っていたい、スーパープレーを呼び起こすための1つの触媒としてカードがあるわけです。それがデジタルになると、リアルタイムで見たスーパープレーがそのまま記憶として入手できる。友達に自慢できたり、トレードもできる。それがインターネット上で起こっています。

 記憶は新しければ新しいほどホットですし、それを持っていたいという気持ちはあると思います。それが米国ではビジネスとなり、流通しています。この手法を日本でもさまざまなスポーツの財源にできないだろうかと考えています。「記録」のスポーツベッティング、「記憶」のNFT。この2つは日本のスポーツの財源を支えていく上で必要だと思っています。

 私は、経済同友会の「スポーツとアートの産業化委員会」で副委員長を務めていますが、そこで政治提言をいくつかまとめており、そのなかには地方の箱物の整備から、スポーツベッティングやNFTの整備まで、いろいろな提言があります。記録と記憶というスポーツにしか成し得ない無形資産をお金に転換して、日本のスポーツの発展に寄与したいと思っています。

ミクシィがDAZNと共に取り組む「DAZN MOMENTS」では、β版のサービスを開始。応援する選手のNFTコンテンツを購入できる
ミクシィがDAZNと共に取り組む「DAZN MOMENTS」では、β版のサービスを開始。応援する選手のNFTコンテンツを購入できる

――日本におけるスポーツベッティング導入までの課題や、障壁となっていることは何でしょうか。

 賭け事はやり過ぎると社会悪になりますし、「なんとなくイヤだ」という印象があると思います。ただ、公営競技には7兆円のマーケットがあり、パチンコ・パチスロ業界は最盛期には39兆円、今でも10数兆円規模です。実は日本ほどギャンブルっぽいものに対して寛容な国はない。昔から夏祭りではヒモを引っ張っておもちゃを当てる景品くじが定番ですし、ショッピングセンターにはガチャガチャのベンディングマシーンがずらりと並びます。予測できない未来を楽しむところがある。

 ただ、それをやり過ぎないために、きちんと整備しなければならないことが2つあります。1つは「八百長の防止」、もう1つが「依存症の防止」です。

 八百長の防止についてはAIの技術がどんどん進んでいるので、明確に摘発できるようになっています。テクノロジーの発展により、八百長ができないものになります。さらに、スポーツベッティングによる収益を合法的に税収とし、スポーツリーグやチームに還付金として戻せば、選手自体の賞与も上げることができます。八百長して小遣いを得るよりメリットの方が大きい状況を作れば、結果的に八百長の防止ができると考えます。

 依存症の防止は、デジタル化することでトレーサビリティが非常に上がり、防ぎやすくなります。例えば、既に私たちは公営競技の事業を行っていますが、登録には免許証などの身分証と銀行口座が必要です。審査を経て登録が完了し、年齢、使用金額、居場所を全て把握しながら行っています。

 アンダーグラウンドな賭博だとお金の行き所もどこか分かりません。しかし、全てデジタルで行ってトレーサビリティを高め、きちんと税収として徴収するモデルができあがれば、依存症の対策も十分に行えます。具体的には未成年に使わせないことも当然ですし、使用金額の上限を、自己申告や家族の申告によって設定することも簡単にできます。

――誤送金されたコロナ給付金がオンラインカジノに使われたとされる事件もありましたが、まだスポーツベッティングにもそういったマイナスの印象がありそうです。

 そもそも日本ではアンダーグラウンドのオンラインカジノの利用者も多く、日本のスポーツも既にベッティング対象にされているという現実があります。アメリカが2018年にスポーツベッティングを合法化したのも、まさにそれが要因でした。

 スポーツベッティングやオンラインカジノなどのベッティング産業は歴史的にイギリス系の企業が強く、米国のプロスポーツを対象にしたスポーツベッティングも、アンダーグラウンドで活況でした。だったら自分たちの国で仕組みを作り、自分たちの税収にしていこうと考えたわけです。マネーロンダリングの観点からもトレーサビリティを高める目的で合法化されました。それからもう4年たった2022年の日本では、まだ議論中、という状況ではあります。

  ――スポーツベッティングを合法化した場合、日本の市場はどの程度になるでしょうか。

国内の公営競技では現在、JRAの競馬が圧倒的に大きく、その規模は3兆円程度。公営競技全体では7兆円程度あります。スポーツベッティングが合法化されれば、公営競技と同じ7兆円程度の規模になるのではないかと予想されています。

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