ハウスコム、社員が幸せであるための「働き方革命」--社員の声を聞き、実行する力

加納恵 (編集部)2022年09月12日 08時30分

 長時間労働のイメージが強く、土日勤務が基本――不動産業界における働き方は「きついのが当たり前」と思われがちだ。しかし、その当たり前を変える取り組みは、不動産各社ですでに始まっている。その中の1社であるハウスコムでは「働き方革命」と名付け、多様性を重視した働き方改革をスタート。その内容は「ノー残業デー」から「PCの自動システムダウン」「限定社員制度」まで多岐に渡る。数多くの改革を推し進めるハウスコムの革命は、どうやって起こり、どのように進めているのか。ハウスコム 代表取締役社長執行役員の田村穂氏に聞いた。

ハウスコム 代表取締役社長執行役員の田村穂氏
ハウスコム 代表取締役社長執行役員の田村穂氏

ライフスタイルに合わせた働き方が選べる「限定正社員制度」とは

――「働き方革命」では、数多くの改革に着手されています。まずこれらの課題をどうやってあぶりだされたのでしょうか。

 声を上げてくれる社員の意見をピックアップした結果です。それぞれの課題をプロジェクト化して、取り組むことで社内に周知し、広めていった結果、現在のように数多くの働き方改革に取り組んでいます。

 もちろん声を上げてくれる社員と上げにくい社員がいることは確かですが、産休や育休、子育て中など、仕事と家庭の両立が難しいと思われる環境の社員ほど積極的に声をあげてくれるので、助かっています。

ハウスコムの働き方改革
ハウスコムの働き方改革

――声を上げやすい、風通しの良い企業風土だからこそだと思います。

 社員が働きやすいように、出来る限り耳を傾けてはいますが、なかなか全部に行き届かない部分もありますので、声を上げてもらえることは大事ですね。例えば病気によって髪が抜けてしまった社員がいてヘアウィッグの補助があればという声が上がったことがあります。これは、周りの人間ではなかなか気づけないこと。ただ、一人声を上げてくれることで、同じ思いをしている社員もいたと思いますし、会社側が気づけた部分でもあります。

――「女性活躍推進」など、女性の活躍も盛んですね。

 ライフステージの変化とともに、働き方に影響を受けるのはまだまだ女性の方が多いです。ハウスコムでは男性の育休取得も積極的に推進していますが、なかなか全員が取得というまでにはいかない。

 だから、というわけではないのですが、女性が活躍しやすい会社でありたいと思っています。採用も積極的にしていて、店舗によっては全員女性スタッフというところもあるくらいです。ただ、現時点では、仕事とプライベートのバランスを見ると、やはりまだ仕事のほうが多いという社員が多いのは事実で、「お金を稼ぐには犠牲がある」という考えは払拭できていません。そこをどうにか変えたいなと思っています。

――働き方の自由度が増すと、ライフワークバランスも取りやすいように感じます。

 ノー残業デーやPCの自動システムダウンなど、「働きすぎない」工夫に加えて、限定正社員制度を取り入れています。これは、地域、時間、曜日などを限定して働ける働き方で、転勤がないなどはもちろん、日曜日は働かないなどの選択もできます。不動産会社は土日勤務が当然のように思われていますが、限定正社員制度を使えば、自分の生活に合わせた働き方を選べるのが特長です。

 実際、新入社員で仕事を始めてみると、1年目は仕事を覚える、2年目は後輩もでき、仕事もいろいろ出来る範囲が広がって楽しくなる。4年目くらいからがライフワークバランスで悩んだり、自分のキャリアについて考えたりする時期に入ります。この4年目をきちんと越えられるコースをつくる必要がありました。ここを乗り越えると、さらに仕事が楽しく、長く働いてもらえる。そのためのサポートが会社として必要だと考えています。

 ハウスコムでは、仕事と生活はバランスを取り合うものではなく、どちらも充実させて互いに融合するものであるという考えの下「ワークライフハーモニー」として、推進しています。

 加えて、65歳以上の方もパートタイムで勤務していただく形も整えています。定年だからではなく、長年働いてきてもらった知見をいかし、後輩を育てるという意味でも、勤務してもらえるのはありがたいですから。

――社員の立場に立った制度を整えられていますが、制度をつくる中で難しいなと感じる部分はありましたか。

 ハウスコムはリアル店舗あってこその会社なので、いわゆる本社と店舗のギャップみたいなものはありましたね。本社でできて、店舗では難しいと言われる制度もありました。そうではなく、本社で始めてみて、店舗まで広げる形をとることで、できることはたくさんあるなと感じました。

働き方改革が生産性の向上にもつながる仕組み

――働き方革命を推進して、良かったと感じる部分はどこでしょうか。

 社員が働きやすくなることが第一なのですが、会社としても生産性が上がっています。ハウスコムでは社員の労働時間と売上を時給計算しているのですが、これが以前の10倍近くに伸びています。これには業務をシステム化して、以前は主流だった紙をデジタル化したからですが、パソコンを使った業務を20時までと決めることで、生産性を飛躍的に向上できました。残業時間の減少にもつながりますし、こうした取り組みは非常に大切ですね。

――今の取り組みの中で課題に感じている部分はありますか。

 会社が大きくなるにつれ、伝わり方が鈍くなるというか、きちんと行き届かないことですね。今までは、社員の顔と名前が一致するのが当たり前でしたが、社員数が増えるにつれ、そこが追いつかなくなってきました。そのためにも必要なのは、権限移譲かなと思っています。私から役員や店長に権限を移譲して、社員と近い距離を作る。そうすることで、伝わりやすさは増すはずです。

 これは仕事においても同様で、現場が働きやすくなるように権限を移譲しておくことは大事だなと。そういう自由度を現場に持たせておきたいと思っています。

――働き方革命のゴールはありますか。

 ゴールというわけではないのですが、本当にいい会社にするためには、社員が幸せでなくてはいけない。本当にいい人に入社してもらうにはクリーンな世界でなければなりません。

 ハウスコムは不動産仲介会社ですから、今まで営業スキルを強くするためだけの筋肉をつけてきて、ほかの筋肉を使う環境を作ってこられませんでした。しかし、仲介会社だけではなく、お客様と入居後もつながり続けるような会社でありたいと考えています。そのためには、営業以外の筋肉もきちんとつけていかなければならない。そのためには、社員がきちんと知識を身につける制度を整える必要もありますし、働きやすい環境をつくることも大切です。

 社員が幸せに働ける会社であることは、お客様にとってもいいサービスを提供できるということです。そこがある意味ゴールだと思っています。

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