Teslaが自社の何千台もの自動車に自動運転を教えるために開発したAIテクノロジーを披露した。同社は現在、他社に先んじて、運送業界に革命を起こそうと努力している。
「Dojo」と呼ばれるこの人工知能システムは米国時間8月23日、「Hot Chips 34」カンファレンスで発表された。Dojoは、Teslaの「D1」チップを多数連結してできた、巨大な「ExaPOD」で構成されている。その役割は、現在路上を走行しているTeslaの車両から送られてくる動画を処理して、現実世界での運転がどのようなものなのか学習することである。このトレーニングプロセスは、運転支援機能「フルセルフ ドライビング」(FSD)の基礎をなしている。Teslaの計画では、最終的に、FSDの操縦する自動車が高速道路のインターチェンジや駐車場、信号機のある道路を走行するようになる予定だ。
Teslaは多くの顧客から何年も前に代金を受け取っているにもかかわらず、FSD製品を提供するのに苦労している。AIをトレーニングして、複雑な現実世界に対応させるには、Teslaが予想していたよりもはるかに強力なコンピューティング能力が必要であることが明らかになったからだ。Dojoの大規模なコンピューティング能力の狙いは、Teslaの自動運転を実現することにある。
FSDは現在、限定的なベータテスト段階にあり、人間による監視が常に必要なので、Teslaの自動車を真の自動運転車とみなすことはできない。しかし、Teslaの最高経営責任者(CEO)のElon Musk氏は、このテクノロジーが完全自動運転車への道を開くと期待している。完全自動運転車とは、人間のドライバーが一切介入せずに自動操縦できる自動車のことであり、実現まで道のりは困難を極めている。
Teslaが初めてDojoに言及したのは、2021年の自社イベント「Tesla AI Day」でのことだった。Hot Chipsでは、DojoのD1チップが機能する仕組みや、何十、何百というD1チップがどのように繋ぎ合わさって、ひとつの巨大なコンピューティングファブリックを構成しているのかといったことが詳しく説明された。
Teslaの自動運転車ハードウェア開発を指揮するGanesh Venkataramanan氏はHot Chipsの講演で、「われわれは、これらのAIアクセラレーターをアクセラレート(加速)させる必要がある」と語った。
Dojoには、Teslaが運転支援や自律走行車に必要とする動画処理だけでなく、さまざまなAIモデルに対応できる柔軟性がある。Teslaの野望の幅広さを考えると、この柔軟性は重要だ。同社が取り組んでいるプロジェクトのひとつに人型ロボットの「Optimus」があるが、このロボットには、全く異なる環境を進んでいく能力が必要になるだろう。
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