米航空宇宙局(NASA)が深宇宙でパンを作る予定は(まだ)ない。しかし、人類が太陽系の深部を探査する準備段階において、パン作りに欠かせない酵母が重要な役割を果たすかもしれない。
打ち上げを控えたNASAの無人探査ミッション「Artemis I」(アルテミス1号)のロケットは、宇宙船「Orion」を月の周回軌道に投入するだけではない。同時に、さまざまな副次的ミッションを宇宙空間に送り出す予定だ。その1つ「BioSentinel」は、酵母菌を深宇宙に運び、宇宙放射線が長期ミッションに取り組む人間に及ぼす影響を詳しく調査しようというものだ。
NASAは米国時間8月12日の発表の中で、宇宙放射線をナノスケールのデモリションダービー(自動車をぶつけ合うレース)に例え、宇宙空間を飛び交う放射線が、生体細胞に損傷を引き起こす可能性を指摘している。宇宙飛行士を月だけでなく、いずれ火星にも長期間派遣することを目指すNASAにとって、これは対処すべき問題だ。
BioSentinelでは、生物学的メカニズムがヒトの細胞に近いとされる酵母菌の生体反応をモニタリングする。宇宙船には、酵母菌の細胞をモニタリングするためのバイオセンサーが搭載され、宇宙放射線の測定データと、酵母菌が示す反応を比較することが可能となる。NASAは、この情報が、宇宙空間で人間の安全を守るための解決策を見つけ出すのに役立つことを期待している。
「BioSentinelは今までにないミッションだ」と、NASAのエイムズ研究センターでBioSentinelのプロジェクトマネージャーを務めるMatthew Napoli氏は述べている。「これまでで最も遠い宇宙に、生きた生物を送り込むミッションになる。実に素晴らしい」(同氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」