国際宇宙ステーション(ISS)は2030年まで稼働する予定だが、ロシアは2024年以降に撤退する意向を表明した。同国の国営宇宙開発機関Roscosmosの責任者であるYuri Borisov氏がVladimir Putin大統領との会合でそう宣言したと、国営通信TASSが報じた。
Borisov氏は「われわれはパートナーに対するすべての義務を確実に果たすが、2024年以降にISSから撤退する決定が下された」と語った。一方、米航空宇宙局(NASA)のBill Nelson長官は、ISSから撤退するというロシアの計画について公式に通知されていないとしていた。
Nelson氏は米ZDNetに対し、「NASAは、2030年までのISSの安全運用に取り組んでおり、パートナーと調整している。NASAはいずれのパートナーからも決定について知らされていない。地球低軌道上の重要な存在を維持するために、将来に向けた機能を構築し続けている」とコメントしていた。
その後、ロシアがNASAに対し、独自の宇宙ステーションの運用開始までは撤退しないと通知したことが報じられた。その運用開始は2028年になる見込みだ。
TASSの報道によると、ロシアは独自の宇宙ステーション「ROSS(Russian Orbital Service Station)」の開発を始めるという。ROSSはロシアの有人宇宙工学にとっての最優先事項になるだろう。
NASAの元宇宙飛行士でISSの船長を務めたLeroy Chiao氏は、ロシアは早期撤退すると圧力をかけているが、独自ステーションの建設コストが原因で、2030年までISSから撤退できないだろうと語った。
Chiao氏は米ZDNetに対し「ロシアははったりをかけているのだろう。独自のステーションを構築する予算はないはずだ」と語った。欧州宇宙機関(ESA)によると、ISSの開発、建設、運用のコストは合わせて1000億ユーロ(約13兆4000億円)を超えるという。
ESAによると、ISSの資金は単一の国ではなく、米国、ロシア、カナダ、日本、ESAに加盟する欧州20カ国中の10カ国が30年以上にわたって提供してきたものだ。したがって、ロシアが単独でステーションを構築・維持できるだけの資金を調達することは非常に難しいかもしれない。
ISS規模のステーションを構築するのに必要な時間も、ロシアがISSから撤退できるかどうかの重要な要素だ。Chiao氏は「やるとしても、ステーションの構築には6~10年はかかるので、いずれにしてもISSの終了まで留まることになるだろう」と語った。
ISSの主要な貢献国がロシアと米国であることを考えると、ロシアの早期離脱はプロジェクトにとってどのような意味があるのかという疑問が浮上する。
カナダ宇宙庁(CSA)、ESA、日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米国と協力して2030年までISSを稼働させると約束してはいるが、Roscosmosが本当にISSから撤退した場合、ISSの維持は非常に困難になる。
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