Joe Biden米大統領は米国時間8月9日、「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)に署名した。半導体業界における米国の強さを取り戻すため、今後5年間で半導体メーカーに527億ドル(約7兆1000億円)が提供される。
同法によって既に、スマートフォンチップ設計を手掛けるQualcommが、チップメーカーであるGlobalFoundriesのニューヨーク州工場から半導体を追加で42億ドル(約5700億円)分購入することになったと、ホワイトハウスが9日に公開したファクトシートの中で明らかにした。また、Micronは、メモリチップ製造拠点の構築に400億ドル(約5兆4000億円)を投じる計画だと、ホワイトハウスは述べた。これによって、メモリチップ製造に占める米国のシェアは、2%から10%に増加する可能性がある。
「CHIPS法は、米国での半導体製造を目指すわれわれの取り組みを加速させるものだ」と、Biden大統領は9日、ホワイトハウスのローズガーデンでの演説の中で述べた。「半導体を発明したのは米国であり、この法律によって半導体を母国に取り戻す」
ファブと呼ばれる半導体製造工場の新設には、巨額の費用がかかる。CHIPS法によって、最先端ファブ新設費用の100億ドル(約1兆3500億円)のうちの約30億ドル(約4050億円)分が軽減されるとIntelは述べた。同社は、アリゾナ州、オハイオ州、ニューメキシコ州、オレゴン州のファブの新設と改修に400億ドル以上を投資しており、この法律によって最大の恩恵を受ける企業の1社だ。
米半導体工業会(SIA)によると、1990年にはプロセッサーの37%が米国で製造されていたが、現在その割合は12%にまで低下しているという。CHIPS法は、この傾向を逆転させて、半導体産業の強化を目指すものだ。半導体は、電気自動車、ノートPC、兵器システム、洗濯機、玩具など、電源プラグまたは電池によって電力を使用するあらゆるものにおいて、なくてはならない存在となっている。
同法が誕生したのは、チップ不足によって、米国の産業と軍隊が現在、国外で製造されるプロセッサーにどれだけ依存しているかが浮き彫りになったためだ。Intelがこの10年、進化に苦戦する中で、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスンが主導権を握るようになった。半導体産業の育成を目指す中国は、これらの企業に競合するSMICなどの国内半導体メーカーに補助金を提供している。
チップ不足により、新型コロナウイルスのパンデミックの最中に「PlayStation 5」を渇望していた消費者は落胆し、米国の自動車工場は閉鎖に追い込まれた。CHIPS法が珍しく両党の支持を得て、下院で243対187、上院で64対33という賛成多数で7月に可決されたのも、チップ不足が原因だった。
米国における半導体製造の弱体化とともに高まっているのが、地政学的懸念だ。中国は台湾を自国の領土だと主張し、Nancy Pelosi米下院議長が先ごろ台湾を訪問して以来、軍事演習を実施して武力による威嚇を続けている。ロシアによるウクライナ侵攻と、それに続くハイテク製品輸入の停止も、自国の産業を持たない国家がどれだけ脆弱になり得るかを物語っている。
CHIPS法には、390億ドル(約5兆3000億円)の製造インセンティブが含まれている。そのうちの20億ドル(約2700億円)は、自動車メーカーや軍事備品メーカーが必要とする旧世代チップを対象としている。また、研究開発の促進と業務従事者訓練の向上に充当される132億ドル(約1兆8000億円)も含まれている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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