SNSが慢性疾患に悩む人々の助けに--広がる共感と疾患の知識 - (page 3)

Nasha Addarich Martínez (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年08月08日 07時30分

コミュニティーとつながり

 コミュニティーと社会的なつながりが、障害がある人々のメンタルヘルスを改善し、死亡率を低下させる可能性もあることは、複数の研究で明らかになっている。2010年のメタ分析レビューでは、強固な社会的関係を持つ人々は健康上のさまざまな問題を乗り越えて生存する可能性が50%高いことが分かった。ソーシャルメディアは、同じ症状を体験している人が、そうした社会的つながりを築く場を提供する。

 「PatientsLikeMe」のようなウェブサイトは、患者が同じ病気を患う人からの有益な情報やサポートを集約した場を提供する。Facebookなど、その他のプラットフォームには、特定の慢性疾患に焦点を当てた、よりニッチなグループが存在する。これらのグループは、サポートを求めている人やコミュニティー作りの活動に関わりたい人にとって、素晴らしいリソースだ。

 ソーシャルメディアのユーザー数は約46億2000万人に上る。つまり、常に多くの個人がオンラインにアクセスしているということだ。そのおかげで、必要なときにいつでもサポートを得ることができる。オフラインではなかなか難しいことだ。これらのプラットフォームは、自分の苦しみを分かってくれる人と話せるサポートグループを地元で見つける手段としても優れている。

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提供:John M Lund Photography Inc/Getty Images

ポピュレーションヘルスと予防

 CDCによると、米国成人の10人に6人が慢性疾患を抱えているという。それらの慢性疾患の中には予防できるものもあり、ソーシャルメディアが、危険因子に関する情報に簡単にアクセスできるようにすることで、予防を促すことができる。

 慢性疾患患者としての体験をソーシャルメディアで話す人が増えるにつれて、科学者や研究者が以前よりもはるかに簡単に、それらの病気の身体への影響に関するデータを収集できるようになっており、それが治療の改善につながる可能性もある。研究者は、ソーシャルメディアでの患者の会話を分析して、病気や症状、効果的な対処方法への理解を深めることができる。患者の立場からもそれは同じで、例えば、保健当局が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症状の長期化の可能性を認める前に、多くの人は、ソーシャルメディアを通して、長引くコロナウイルス症候群について知ることができた。

 ソーシャルメディアが研究や臨床試験の被験者を募集する場となることで、健康に関する研究に役立ってもいることが明らかになっている。調査によると、ソーシャルメディアは予算面と被験者の人数に関して、従来の募集方法よりも優れた結果を出しているという。被験者の人数(と人種)が多ければ多いほど、研究結果の正確性も高まる。

ソーシャルメディアと慢性疾患についての懸念

 ソーシャルプラットフォームで慢性疾患について話し合ったり、教育したりすることには、多くの利点がある。ただし、プライバシーや誤った情報、患者がオンラインで直面するかもしれない精神的負担に関する潜在的な懸念もある。

プライバシーの懸念

 患者の健康データのプライバシーを守ることは、ソーシャルメディアと慢性疾患に関する重大な懸念事項の1つだ。慢性疾患を抱える人々にとって、ソーシャルメディアは自分の精神的健康および肉体的健康について語ることのできるはけ口となっている。この種の情報をオンラインで公開することのリスクの1つは、医療IDの窃盗(他人の医療情報を盗んで、保険会社に不正な請求をすること)だ。米国退職者協会(AARP)によると、2021年には、約4万3000人が医療ID窃盗の被害に遭ったという。

誤情報の拡散

 ソーシャルメディアでの虚偽情報の拡散は、目新しいことではない。ただし、誰かの健康に影響を与えるような内容なら、結果は壊滅的なものになる可能性がある。誤った情報が広まり始めると、それを簡単に封じ込めることはできない。米国人の半数以上が、ソーシャルメディアを通じてニュースを入手していると答えていることを考えると、これは驚くべきことだ。ソーシャルプラットフォームでの慢性疾患に関する誤った情報は、偏見、不正確な自己診断、民間療法や我流の治療法につながり、健康に害を及ぼす可能性がある。

患者の負の感情

 慢性疾患患者は、ソーシャルメディアを通じて他者とつながり、支えられていると感じているが、ソーシャルメディアで見つけた情報から、フラストレーション、混乱、悲しみなどの否定的な感情が生じることもある。ソーシャルメディアがスティグマの感覚を増大させ、患者のアイデンティティーが疾患に浸食される可能性を生み出すとする研究もある。

【注釈】
この記事に含まれる内容は情報提供のみを目的としており、健康や医療に関する助言を目的としたものではありません。健康状態や疾患について懸念がある場合は必ず医療提供者に相談してください。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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