パナソニック エレクトリックワークス(EW)社は、脱炭素社会を実現するためのソリューションの一つとして、店舗や商業施設で消費するエネルギー収支をゼロにすることを目指す、ZEB(Net Zero Energy Building、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の拡大に取り組んでいる。
そのZEB対応の施設の第1弾として、沖縄県名護市にある地域密着型特養老人ホーム「久辺の里」のプレス見学会を実施した。
日本政府は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体ゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。この目標に向けて、電気自動車ハイブリッドカーが促進されたり、ソーラーパネルによる太陽光発電では促進されている。この脱炭素に向けた取り組みの中で商業施設に導入されているのがZEBだ。
空調、換気、照明、給湯、昇降機の5つの設備が省エネ対象となっており、省エネとソーラーパネルの活用などの創エネのレベルによって、「ZEB Oriented(40%以上の省エネ)、ZEB Ready(50%~75%の低減)、Nearly ZEB(省エネと創エネの組み合わせで75%以上の低減)、そして100%低減のZEBに分類されている。
このZEBの市場規模は2025年に4000億円、2030年には7000億円に成長すると予想されており、(矢野経済研究所推計)。パナソニックEW社は、2019年10月に一般社団法人 環境共創イニシアチブが認定している「ZEBプランナー」に登録。マーケティング本部 綜合営業企画部のなかに、事務局とZEB推進チームを設置した。
パナソニック エレクトリックワークス社綜合営業企画部 電材営業開発グループの小西豊樹氏は、「ZEBが大きな市場に成長する中で、弊社には照明や空調を始め、さまざまな設備の品ぞろえがあり、設備ごとの商流をフルにいかせるということで、ZEBプランナーとして取り組むことになった」と語る。
そして、2022年度より、パナソニックEW社マーケティング本部は、ZEBの推進を本格的にスタートする。ZEB推進チームは、施主や地域の工務店など連携。ZEBプランナーの立場で基本計画、設計にアドバイスを行ったり、設備選定の提案や省エネ設計を行う立場だ。
ZEBには、パッシブと呼ばれる高断熱・高性能ガラスの採用や自然エネルギーを活用するなど建築的手法と、空調や換気システム照明などに高効率設備を採用する技術による手法の2つがある。この中でZEBにおけるパナソニックの強みとなるのが、主にビル設備に関する部分だ。例えば、高効率の空調、換気システム、照明器具を用意している。
そしてEMS(エネルギー・マネジメント・システム)の導入による設備連携と見える化、さらなる省エネ性能の向上などもできる。また、運用面では24時間365日の保守と、地域電気工事店との連携によるワンストップサービスを用意できる。
太陽光や水素、蓄電池などによる創エネの提案とレジリエンス性能の向上。画像センサー入退室管理システムなどの連携による周辺サービスによって、快適性や生産性を高める仕組みについても一貫して対応できるというわけだ。
ZEB推進チームが初めてサポートを行ったのが、ビルメンテナンスなどを手掛けるビケンテクノグループが運営する社会福祉法人美健会の地域密着型特養老人ホーム「久辺(くべ)の里」だ。今回実際に見せてもらった。
久辺の里は、「温室効果ガス排出抑制に寄与する建物づくり」をコンセプトに掲げ、設備と運用の両面で省エネとCO2削減にアプローチした施設。建物はRC鉄筋コンクリート造りの地上3階建てで、延床面積は2914平方メートル。収容人数は特養20床、短期入所20床、デイサービス20名となっている。
高効率空調の採用や、換気システム、そして高効率のLED照明などを導入することで省エネ化を実現。省エネ基準を示すBEI値(設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値)は0.48となり、50%以上の省エネとなる「ZEB Ready」を達成している。
「今回の施設は高齢者が入居されるので、快適性は犠牲にできないということだった。それと省エネをどうやって両立していくか、難しい問題だったが、しっかりアドバイスができたと思っている」
さらに久辺の里は地域の避難所にもなっているため、蓄電池を導入。いざというときは近隣の方々も避難できるようになっているそうだ。
ZEB推進チームにはZEBプランナーが7名(リーダー1名、主任技術員3名、技術員3名)在籍し、さらに日本全国8地区の営業部に所属する約200人の開発営業担当者と連携しながらZEBに対応していくという。さらに、照明や空調、太陽光、蓄電池などの設計はパナソニックEW社 ライティングBUのテクニカルセンターや照明エンジニアリングセンターと連携する仕組みだ。
パナソニックEW社のZEBプランナー事業は2022年度から本格的なスタートを切る。2022年度の目標は年間40件、受注金額は年間20億円だが、これを25年度には160件/100億円、30年度には280件、220億円に拡大していく目論見だ。
「国主導、自治体主導のゼロカーボンの地域づくりと、世界のCO2削減の要求からくる民間企業のZEBのニーズ。これらのニーズにパナソニックは答えていきたい」(小西氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス