「スマートウォッチに関して言えば、問題点は、チップを完成品と緊密に統合しなければならないことだ」。調査会社Techsponentialのプレジデント兼主任アナリストであるAvi Greengart氏は、そう語る。「Qualcommには、『Snapdragon Wear 3100』やSnapdragon Wear 4100などのチップがあるが、それらをソフトウェアやハードウェアとうまく連携させて、消費者が買いたくなるような製品に仕上げることができていない。Appleはそれを見事にやってのけている」
競争は激しいが、QualcommのW5シリーズには、次世代のウェアラブルへの道を開く可能性を秘めた機能がある。
QualcommのW5+チップの重要な特徴の1つが、バッテリー持続時間だ。W5はバッテリー持続時間の改善を実現しているが、さらなる省電力機能を備えたW5+では、これまでの製品よりも最長で24時間長くバッテリーを持続できる。Apple Watchのほとんどのモデルはバッテリーが1日以上持続しないことや、Wear OSを搭載する主要スマートウォッチでさえ、せいぜい3日しか持続しないことを考えると、バッテリー持続時間の改善は非常に重要だ。
Snapdragon W5シリーズが5Gに対応していないのは、バッテリー持続時間を重視していることが理由かもしれない。5Gは、より高速なウェブサーフィンを実現するが、依然としてバッテリーを大量に消費する。そのため、セルラー接続機能を備えたスマートウォッチは、当面、モバイルサービスの使用時に旧式の低速な4G LTEネットワークにしか接続できない(4G LTEでも音楽のストリーミングに問題はないので、心配は無用だ)。Qualcommに、5G機能を備えたウェアラブルデバイスが登場しそうな時期についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。
4G LTEの制約は、W5を使用する他のデバイスにも当てはまる。Qualcommによると、例えば、写真や動画を共有できるFacebookのスマートグラス「Ray-Ban Stories」には、旧式のSnapdragon 4100チップセットが搭載されているという。今後登場する拡張現実(AR)グラスはW5を採用するかもしれない。5Gは利用できないが、同チップセットの優れたバッテリー効率の恩恵を受けられる可能性は高い。W5によってバッテリーを小型化できれば、スマートグラスが設計しやすくなるかもしれない。バッテリーの小型化は、スマートグラスの見た目を可能な限り普通のメガネに近づけるうえで、非常に重要だ。
ご存じないかもしれないが、Qualcommのチップは2018年からカメラをサポートしている。当時、同社のチップは、カメラを搭載しないスマートウォッチに内蔵されていた。写真や動画を撮影できるスマートウォッチもいくつか登場したが、それらは中国で発売されたか、あるいは、子供向けの製品であるかのどちらかだった。メインストリームのスマートウォッチには、まだカメラが実装されていないが、バッテリー持続時間の改善によって写真撮影の負荷を軽減するW5が登場することでで、そうした状況は変わるかもしれない、とQualcommは考えている。
ディック・トレイシーの時代からガジェットオタクが夢見てきた機能である、腕時計での双方向のビデオ通話、より滑らかな動画再生、「ミー文字」風の3D文字盤などが実現するかもしれない。これらはすべて、カメラがスマートウォッチに搭載されれば可能になる機能だ。
Qualcommによると、現在、W5を搭載する25種類の製品が開発中だという。最初に登場するのは、8月に発売予定の次期「OPPO Watch」だ。Qualcommは、正式な名称がまだ決まっていない「TicWatch」が、W5+を採用する最初のスマートウォッチになる予定だと述べたが、カメラの有無などの詳細は一切明かさなかった。QualcommのKedia氏は、残りの23種類のデバイスにARグラスが含まれるのかどうかにも言及しなかった。
「現在開発中の25種類の製品について、皆さんにお話しできるといいのだが、それは現時点では無理だ。それらの製品によって、次世代のウェアラブルデバイスは全く新しい意味を持つことになるだろう」(Kedia氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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