パナソニック エレクトリックワーク社とロボットホーム子会社であるResidence kitがインターホンを活用したスマートホームに取り組んでいる。7月14日にはインターホンシステムの共同開発を発表。マンションインターホン機器とアプリを連携し、住まいのIoT化を目指す。
Residence kitは、賃貸不動産に特化したIoT機器とソフトウェアの開発を手掛けるロボットホームの子会社。ロボットホームが企画、開発する集合住宅に対し、インターホンを活用したIoTサービスを提供している。「ロボットホームが提供しているのは木造で小規模の集合住宅。Residence kitはそこにしか導入できなかったが、今回の共同開発により、中〜大規模の集合住宅にも使っていただけるようになる。さらに新築だけでなく、既存の集合住宅でもIoT化を進められるのは大きい」とResidence kit 代表取締役の松園勝喜氏は共同開発する意義を説明する。
共同開発は、パナソニックのマンションインターホン機器とアプリを連携し、パナソニックも入居者アプリとの連携のためのマンションインターホン機器のソフトウェア開発していくというもの。開発が進めばインターホンを起点に、IoT機器を活用できるなど、スマートホーム化が期待できる。
パナソニックとResidence kitでは、現在インターホンとスマートフォンの接続に成功。アプリの開発に着手しているとのこと。住まいにおける欠かせないツールになっているインターホンだが、スマートフォンとの接続には苦労もあった。「そもそもスマートフォンとの接続を考えて開発されたものではないため、どうやって接続すればいいのかわからない状態。当初は1人で接続について取り組み、ようやくつながった段階で、チームに引き継いで今に至る」(松園氏)と時間と労力を費やす。
「インターホンの開発自体が古く、担当者も変わっている。そうした中で、パナソニックの方には仕様書などをひもときながら取り組んでいただいた。そうやって開発を進めていた最中、今度は半導体不足が表面化し、開発のスピードはダウン。ストップしたり、遅れたりしながら、なんとかここまでこぎつけた」(松園氏)
中でも時間をかけたのはセキュリティ面だ。「インターホンとスマートフォンをつなげるには、インターネットを介して通話する端末をつなぐ役割をするサーバーが必要になる。最初に候補に上がったサーバーは運用上セキュリティ面に問題があり、別のシステムを利用することにしたため、仕様の変更が必要になった。その修正部分をウクライナの開発パートナー企業にお願いしていたのが2022年の初旬。当時の状況下にも関わらず、当社に連絡をくれた担当者のおかげで、ようやくつなげることができた」(Residence kit kit事業部事業部長の海福長樹氏)と発表直前までのやりとりを明かす。
Residence kitは、入居者、オーナー、賃貸仲介会社、賃貸管理会社の全てのプレーヤーをつなぐ不動産経営の自動化を目指すプラットフォーム。IoT機器が設置された物件で暮らす入居者は、それらのIoT機器を入居者専用アプリで操作でき、管理会社とのやり取りもアプリ内のチャットで可能だ。
開発自体は2018年にスタートし、約4年に渡り取り組んできた。「IoTを軸に常に使われる入居者アプリを作りたいと思って取り組んできた。入居者の方に便利な生活を届けられる一方、賃貸管理の効率化にもつながる。現在、入居中になにかあると電話での問い合わせが大半だが、IoT化が実現すれば、チャットベースのやりとりに代わり、これはテキストデータなので、解析もしやすい。インターホンとの連動はずっと考えていたが、私たち1社ではできることが限られる。今回パナソニックと組むことができ、その可能性がぐっと広がった」(松園氏)と手応えを口にする。
「数多くの不動産テック企業が登場しているが、私たちは黎明期からここに取り組んできたという自負がある。デバイス開発からシステム開発まで請け負えるコアなスタッフがいるのは、私たちならではの強み。そうした強みを最大限にいかしながら、できない、難しいとされていた住まいのIoT化を進め、暮らしを便利にしていきたい」(松園氏)とした。
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