大手仮想通貨取引所のCoinbaseは、米移民税関捜査局(ICE)に金融犯罪の捜査に役立つデータ分析ツールを提供する契約を結んでおり、その一環として提供される機能の1つが物議をかもしている。
ICEとの契約は2021年に報じられていたが、監視団体Tech Inquiryによる米情報公開法に基づく請求を通じて、このほど契約の全文が明らかになり、The Interceptが米国時間6月30日に最初に報じた。
契約を通じて「Coinbase Analytics(現Coinbase Tracer)」が提供するサービスには、「ブロックチェーンエクスプローラー」「資金の入出金のマルチホップリンク分析」「取引の追跡とシールドトランザクション分析」が含まれる。Coinbase Tracerは官民両セクターの顧客に販売されている。
Coinbaseは、これらのサービスに関して、「公開されている情報源を基にしており、Coinbaseのユーザーデータを利用することはない」との免責事項も公開している。
ChainalysisやNansenといった複数の企業が、同様の分析ツールを提供している。このようなツールは、デューデリジェンスの実行や投資インサイトの探求、マネーロンダリングの追跡、テロ資金調達の調査などあらゆる目的で、仮想通貨ブロックチェーン上の膨大な公開取引データをソフトウェアを用いて調査するものだ。
しかし、CoinbaseがICEに提供していたサービスの中には、もうひとつ目を引く機能があった。
ICEの捜査官が現在、ウェブベースのCoinbase Tracerプラットフォームを通じてアクセスできるとみられるサービスには、「過去の地理的追跡データ」が含まれているのだ。
ほとんどのパブリック型ブロックチェーンは、取引の地理的追跡データにアクセスしたり保存したりしないため、公開されている情報源からCoinbaseがどうやってこのデータを提供しているのかは明らかでない。
ICEによると、この契約は、データの収集や追跡に関するすべての法や政策、規制を順守しているという。
Coinbaseはコメントの依頼にすぐには応じなかったが、6月30日に以下のようにツイートしている。
「明確にしておきたいことがある。Coinbaseは固有の顧客データを販売していない」「Coinbase Tracerは公開のソースから情報を得ており、Coinbaseユーザーのデータを利用することは決してない」
1/ We want to make this incredibly clear: Coinbase does not sell proprietary customer data. Our first concern has been and always will be providing the safest and most secure crypto experience to our users.
— Coinbase (@coinbase) June 30, 2022
ICEとの契約は、「イーサリアム」とすべての「ERC-20」規格トークン、「ビットコイン」「ライトコイン」「テザー」「EOS」「ステラ」「リップル」など、12のブロックチェーンのデータのみを対象としている。1年間の契約は2021年8月に発効し、2022年8月9日に期限を迎える。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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