Soulさんがクリスマスの日に目覚めると、うれしいサプライズがあった。クリスマスの靴下の中に意外なプレゼントが入っていたわけではない。思いもよらない通知がスマートフォンに表示されていたのだ。新しい仮想通貨が発行され、Soulさんにはその一部を無料で受け取る資格がある、というものだった。
これは詐欺のように聞こえるかもしれない。ナイジェリアの王子を名乗る人物からメールがきた、という話と同じくらいばかげている。趣味で投資をしている30代の男性で、匿名を希望したSoulさんが「受け取る」ボタンを押して、取引手数料を支払うと、2000ドル(約23万円)相当のトークンがウォレットに振り込まれた。
謎に満ちた仮想通貨の世界において、これはエアドロップと呼ばれるイベントで、おそらく皆さんが思うほど珍しいことではない。
多くの従来型企業は上場して、一般の人々に株式を提供することで、資金を調達している。Web3(ブロックチェーンが統合されたインターネット)で事業を展開する組織は、人々が取引所で売買できるトークンを発行することで、資金調達を行う。こうしたトークンの発行には、エアドロップが伴うこともある。具体的には、そのWeb3上の組織が提供するツールを使用したことがある人のウォレットに大量のトークンが振り込まれたりする。例えば、Adobeが上場し、認知度を高めるために、過去12カ月間に「Photoshop」を利用したことのあるすべての人に100株を提供したと考えると、分かりやすいかもしれない。
「エアドロップは顧客獲得コストと考えることができる」。そう話すのは、調査会社Delphi DigitalのAlex Gedevani氏だ。エアドロップは2つの点で有用性がある。第一に、マーケティングとして機能する。タダでお金がもらえるという期待ほど人々の関心を引くものはない。第二に、ブロックチェーンアプリがトークン発行時にエアドロップを実施することが決まり事になった。その結果、利益をもたらすエアドロップが将来的に実施される可能性があることを知っている投機家たちが、新しいアプリを試している。
2020年から趣味で投資をしているSoulさんは、「Web3が非常に楽しみになった」と話す。「エアドロップは、何でも試してみようという動機を与えてくれる」
クリスマスの日のエアドロップを実施したのは、OpenDAOという組織だ。大規模なNFTマーケットプレイスである「OpenSea」で売買したことのある人は皆、OpenDAOの「$SOS」トークンを受け取ることができる。米国時間1月12日の時点で、約30万のウォレットがエアドロップを受け取っている(エアドロップとしては珍しく、OpenDAOはOpenSeaと正式に提携しているわけではない。OpenDAOの目的はOpenSeaと異なる方法でトレーダーをサポートすることだが、それは本記事の内容とは無関係である)。
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