大手ハイテク企業を狙い撃ち--反トラスト、プライバシー法案の成立を急ぐ米議会

Marguerite Reardon (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年07月12日 07時30分

 米議会では、プライバシー法の成立と反トラスト法の改正に向けた動きがいよいよ大詰めを迎えている。実際に立法化されれば、Amazon、Apple、Google、Metaなどの大手ハイテク企業がビジネスの見直しを迫られることは必至だ。

米国会議事堂
提供:Marguerite Reardon/CNET

 米議会では現在、消費者のプライバシーと企業の自由な競争の確保を目的とした法案が審議されている。可決されれば、大手インターネットテクノロジー企業を規制する米国初の法律が誕生することになる。これらの法案は上下両院で超党派の支持を得ているが、追い込みの段階に入っても苦戦を強いられている。今も交渉は続いているが、11月に予定されている中間選挙では民主党が両院で過半数を失う恐れがあるため、時間の猶予はない。次の議会での立法化を目指すという手もあるが、立法の優先順位は変わりやすく、成立が先送りになれば両法案が骨抜きになる恐れがあると専門家は懸念する。

 向こう6週間、つまり議会が夏期休暇に入るまでの期間が「決定的に重要」だと指摘するのは、連邦取引委員会(FTC)の元委員長で、現ジョージ・ワシントン大学法学部教授のBill Kovacic氏だ。

 「危ないのは、何の進展もないまま来年を迎えることだ」と、Kovacic氏は言う。「次の議会で再挑戦することもできるが、それは博打のようなものだ。消費者のプライバシーを保護し、デジタルプラットフォームを規制する強固な法律が生まれる可能性は大幅に下がってしまう」

 民主党、共和党両党の議員たちは5年近く前から、大手テクノロジー企業の力や影響力を抑制すると約束してきた。しかし、これまでのところ成果はほとんど上がっていない。議員たちはAmazon、Apple、Google、Meta、Twitterのような巨大企業が持つ力に警戒感を強め、こうした企業が中小規模のプレーヤーのビジネスを妨害し、個人データを自社の利益のために利用し、インターネット上で共有され消費されるものをコントロールすることで、消費者に害を及ぼしていると批判してきた。

 現在、議会で審議されている法案と、その成立を阻んでいる要因をまとめた。

反トラスト法:鍵を握るChuck Schumer議員

 反トラスト法に関しては、2つの改正法案が上院での採決を控えている。可決され立法化されれば、反トラスト法の改正としては過去数十年間で最も重要なものとなる見込みだ。

 2021年10月にAmy Klobuchar議員(ミネソタ州選出、民主党)とChuck Grassley議員(アイオワ州選出、共和党)が提出したAmerican Innovation and Choice Online Act(米国のイノベーションと選択のためのオンライン法)は、企業が自社のプラットフォーム上で、自社製品を競合製品より優先的に扱うことを禁じるものだ。立法化されれば、Googleは、検索結果のページで自社製品を競合他社のサイトやサービスより目立つように表示することはできなくなり、Amazonは、自社のECサイトにおいて、ページの最上部に他社製品よりも自社製品を優先して掲載することはできなくなる。

 一方、2022年2月にRichard Blumenthal議員(コネティカット州選出、民主党)とMarsha Blackburn議員(テネシー州選出、共和党)が提出したOpen App Markets Act(開かれたアプリ市場法案)は、アプリストアの運営者がアプリ開発者に対して、ユーザーがアプリ内で購入した場合にアプリストアの手数料を求めることを禁じるものだ。この法案は現在アプリ市場を実質的に支配している企業、すなわちAppleとGoogleを狙い撃ちにしている。現在、両社は一部の国を除き、アプリ内課金を実施しているすべてのアプリに対して、自分たちが用意した決済手段を使うこと、売上に応じた手数料を支払うことを義務付けている。

 どちらの法案も両党の支持を得て下院を通過し、2022年の初めには超党派の力強い支持を得て委員会も通過した。しかし両党の上院議員によれば、上院での議場採決前に解決しなければならない懸念がまだ残されているという。

 Klobuchar議員は、どちらの法案も可決に必要な票を確保できると請け合うが、上院トップのChuck Schumer院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は依然として上院での採決日程を明らかにしていない。この矛盾を指摘したのが、ネット中立性などの複雑な問題を面白おかしく解説することで知られるコメディアンのJohn Oliver氏だ。同氏は6月上旬、自身が司会を務めるHBOの風刺番組「Last Week Tonight」の中で、17人の議員の子供たちが大手ハイテク企業で働いているか、過去に働いていたという記事を取り上げた。Schumer院内総務の娘も、1人はMetaのマーケティングマネージャー、もう1人はAmazonの登録ロビイストだ。

 Schumer院内総務は法案への支持を繰り返し表明しており、現在はKlobuchar議員とともに必要な票の確保に励んでいる。

 一方、The Wall Street Journalによると、Amazon、Facebook、Googleといった大手ハイテク企業も、関連する団体を通じて反トラスト法に反対する広告キャンペーンを展開しており、2021年1月以降、すでに3640万ドル(約50億円)以上が投資されている。

 各社の最高経営責任者(CEO)も議員のもとを自ら訪れ、法案に反対するよう働きかけている。報道によれば、GoogleのCEO、Sundar Pichai氏は先ごろ、ワシントンを訪問した際にSchumer院内総務と接触したという。Politicoの記事は、AmazonのCEO、Andy Jassy氏がSchumer院内総務や他の議員たちに電話をかけたと伝えている。AppleのCEO、Tim Cook氏も6月にワシントンを訪れた。

 Googleの広報担当者Jose Castaneda氏は、Pichai氏のワシントン訪問に先立ち、米CNETに対し、「当社は両党の議員と定期的に会い、経済成長や中小企業支援、移民法改革、サイバーセキュリティといった問題について意見を交換している」と述べた。「今後も当社製品を使用する個人や企業に関わる問題に取り組んでいく」

 Amazonの広報担当者も、同社のCEOは「顧客に影響する可能性のある政策課題について、両党の議員と協議している」と述べた。Appleについては、以前にコメントを求めたが回答は得られなかった。

 今期の議会に提出されている法案は、米国の巨大テクノロジー企業の慣行に関する超党派による調査の集大成と言うべきものだ。この調査の結果は、下院司法小委員会が2020年に発行した反トラスト法に関する報告書にまとめられている。この450ページに及ぶ大部の報告書は、Amazon、Apple、Google、Facebook(現Meta)は、その独占的な力を使って競争を妨害していると結論付けている。

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