初代の「iPhone」は、15年前の6月29日に米国で発売された(日本では7月11日)。Steve Jobs氏が初代iPhoneを発表した時、同氏はこの新製品を、「iPod」、携帯電話、インターネット通信機器の3つの機能を併せ持つ革新的な製品として大々的に宣伝した。初代iPhoneのサイズは1つだけで、選択できたのは、ストレージのサイズを4GBにするか8GBにするかだけだった。
当時、折りたたみ式携帯電話とiPodを持つ代わりにiPhoneを持つことは、一部の人々にとってiPhoneを購入する十分な理由になった。私のような人間にとっては、iPhoneの主な魅力はタッチスクリーンだった。非現実的で未来的に思えたものだ。
Appleの製品マーケティング担当バイスプレジデント、Bob Borchers氏は次のように述べた。「iPhoneのユニークさは、そもそもの最初から、シンプルで強力で魔法的な体験を作り出すために、ソフトウェア、サービス、ハードウェアを1つに融合させることだった。そして、初代iPhoneのマルチタッチとピンチ&ズームは、そうした融合の始まりだった」
15年後の現在、Appleは8モデルのiPhoneを販売している。そのうち5モデルは過去10カ月以内に発売されたものだ。少なくともそのうちの1モデルは、世界中のほぼすべての主要な通信キャリアの回線で動作する。今では、多様な色、仕上げ、サイズの筐体と、多様なストレージ容量から選べる。ストレージは最大1TBだ。ディスプレイはiPhoneのマジックを体験できる主な舞台だが、もはや最大の魅力ではなくなっている。
過去15年の間に、iPhoneの魅力は単なるデザインとハードウェアスペック以上のものにシフトしてきた。iPhoneと「iOS」は今や、「iMessage」「FaceTime」「Siri」「Apple Music」「Apple Pay」などのAppleのサービスや、高性能なカメラ、「Uber」「TikTok」「Twitter」「WhatsApp」などのアプリへの入り口になった。iPhoneは良くも悪くも、写真、音楽、会話、アイデア、ゲーム、ID、仕事、SNS、ショッピング、スマートキー、財布の集積地になった。
iPhoneは2022年、洗練されたメタルとガラスの筐体を超えて、世界中に広がり続けている。「Apple Watch」や「AirPods」のバックボーン的な役割を果たしており、うわさされている拡張現実(AR)メガネのような未来のApple製品でも何らかの役割を果たす可能性がある。
iPhoneは、Appleの各種デジタルサービスの基盤としても機能する。これらのサービスは、競合するモバイルデバイスと差別化するためにますます重要になってきており、iPhoneとともに近年急速に進化している。
見失ったiPhoneを見つける機能として2010年に提供開始された「探す」は、Apple製デバイスや、Appleの小さなトラッカー「AirTag」を付けた物を見つけるためのネットワークに進化した。VanMoofの自転車「S3」など一部の製品には「探す」が搭載されているので、AirTagを付ける必要がない。2021年時点で、Appleの「探す」ネットワークには何億ものデバイスがあり、そのほとんどはiPhoneだ。
Appleは6月7日に開催した年次開発者会議「WWDC」でiOS 16を発表し、提供開始から約10年になる「Appleウォレット」とApple Payの機能を拡張した。Appleは、物理的な財布を時代遅れにしようとしている。新機能「Apple Payで後払い」は、Apple Payでの支払いを6週間にわたる4回に分割できる。利息も手数料もかからず、完全にiPhoneだけで実行できる。
実際のところ、Appleのこれらのすべてのサービスを使うには、iPhoneが必要だ。長年の間、多くの人にとって高価格なiPhoneは、手の届かない存在だった。それは、最上位モデル「iPhone Pro」については今でも言えることだ。だが、最近アップグレードされた「iPhone SE」は、iPhoneをさらに普及させる機会を生んだ。iPhone SEは、2022年のiPhoneを定義する最も純粋な例だ。SEは、iPhone 8の筐体にiPhone 13のガラス仕上げとプロセッサーを融合させたモデルだ。429ドル(日本では税込6万2800円)という価格は、人々をAppleの体験に誘導する最も手頃な手段となっている。
私は3月、iPhone SEの発売前にBorchers氏と話し、なぜSEに「A15 Bionic」チップを搭載するのか尋ねた。
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