マイナポイント事業の第2弾が6月30日からスタートした。第1弾ではマイナンバーカードをキャッシュレス決済事業者のサービスと紐付けることで、2万円の買い物(あるいはチャージ額)あたり5000円分のポイントが付与される仕組みで、主にマイナンバーカードの交付促進とキャッシュレス決済の普及の両立を狙ったものだった。
しかし、ポイント付与条件の制限で当初参加できたキャッシュレス事業者が限定されていたこと、そしてマイナンバーカード受付処理や交付窓口が混雑し、申請しても交付まで数ヶ月待ちといった混乱がみられた。
こうした混乱にもかかわらず、一連の施策はマイナンバーカード普及促進には一定の効果があったようで、6月1日時点での申請数5882万枚に対し、交付数は5660万枚となっている。ただし申請数だけでも人口の約46.4%であり、国がマイナポイント事業第2弾の目標としている「マイナンバーカード普及率ほぼ100%」にはまだまだほど遠い状態だ。
加えて、昨年2021年終了時点でのマイナポイント申請数は2532万件であり、同時点のマイナンバーカード交付数の5187万枚に対して普及率は約49%の水準に留まる。つまり、第1弾の時点ではマイナポイント利用の比率は2割程度の水準に留まっている。この第2弾が今後どのように推移していくのか、現状を俯瞰しつつまとめてみたい。
昨年末に通過した2021年度の補正予算案に約2.8兆円のデジタル関連支出が含まれているが、このうち6割強にあたる約1兆8000億円がマイナポイント関連に該当する。
第2弾では「健康保険証利用」と「公金受取口座の登録」でそれぞれ7500円分、計1万5000円分のポイントが付与されるが、第1弾に該当するマイナンバーカード取得のポイント5000円分を加えれば、1人あたり2万円のポイントが与えられることになる。
もっとも、カード取得ですでにポイントを獲得している人たちが2500万人程度いるわけで、実際には今回の施策での1人あたりの平均付与ポイントは2万円未満ということになるが、補正予算案で用意された金額からの概算で約9500万人分の枠が確保されていることが分かる。
総務省の大臣官房地域力創造審議官の馬場竹次郎氏によれば「先着9500万人までというわけではなく、あくまで今回の予算枠で想定する期間での取得見込みを盛り込んだもの」ということだが、これではマイナンバーカードの普及率が75%の水準に留まる。つまり、少なくとも次の施策がスタートする2023年半ば以降までは75%が上限となる。
もちろん「マイナポイントの予算を使い切ったので、もうマイナンバーカードの交付数は増えません」というわけではないが、政府として100%という数字はあくまで究極の目標に過ぎず、実勢として、多くてマイナンバーカードの交付数は6から7割の水準に留まると政府がみていると考えていいだろう。
ただ、仮にマイナンバーカードの普及率を今回の第2弾施策で7割弱の水準に伸ばせたとしても、おそらく目標としている健康保険証利用と公金受取口座の登録が実際にどの程度行われるかはかなり未知数だ。
筆者の推測だが、現状を見る限りではかなり茨の道になるのは明らかだ。マイナンバーカード取得だけで得られた5000円分のポイントとは異なり、今回加わった2つの項目は抵抗感を覚える人が利用者ならびに、それを受け入れる医療機関側の両サイドで少なくない。
マイナンバーカード登録でマイナポイントを得た人の割合が、現状でカード取得者に対して5割程度の水準に留まっていることを考えれば、この2つの“紐付け”を行う人の割合はさらに下がるのではないかという筆者の見立てだ。
まず公金受取口座の登録の部分だが、「政府に銀行の取引情報を握られるのではないか」との懸念の声を頻繁に聞く。
この公金受取口座の話が出てきたきっかけは、コロナ禍に突入した2020年の「特別定額給付金」にさかのぼる。台帳登録されている人物1人あたり10万円を一律配布するという施策だが、還付処理を行う自治体では居住者それぞれの銀行口座情報を持ち合わせておらず、その事務手続きのために膨大な業務が発生したことが問題となった。
当然人手が必要なため、処理にかかる時間とコストは膨大で、「還付を行うための口座情報をあらかじめ把握しておきたい」と考えるのは自然な流れだろう。この過程で省庁を跨いで事務業務を効率化するための「デジタル庁」が誕生し、さらに今回のマイナンバーカードへの紐付けという話が出てきた。
つまり、公金受取口座の登録というのは「政府(や自治体)が個人に還付を行うための口座情報を把握しておきたい」というもので、あくまで「還付」という目的の1点のみに絞られている。総務省の関係者も毎回「還付以外の目的は考えていない」と言及しており、口座の取引内容の把握は否定している。結局のところ、これは「政府の言い分を信用するか」というだけであり、それに同意するなら登録して7500円分のポイントを受け取ればいい。最終的に公金受取口座の登録がどれだけ行われたかは、政府の信用度バロメーターとなるだろう。
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