マイナポイント第2弾を待ち受ける「茨の道」--1.8兆円を投じてもカード普及は限定的か - (page 2)

 「1つの物理カードにいくつもの公的証明書を詰め込むと紛失時のリスクが大きい」という点で多少の抵抗はあるものの、確かに“かさばる”カードを何枚も持ち歩くよりはコンパクトで便利だ。今後マイナンバーカードには運転免許証をはじめ、さまざまな証明書やサービス情報が合流してくることになるが、財布の中身はよりシンプルになるだろう。来年以降にはスマートフォンに入れるという話さえ出てくる。

 こうした夢を語る一方で、現実は非情である。下記は医療機関・藥局における資格確認の導入状況だが、現状で利用できる医療機関は2割程度だ。筆者が取材する範囲では、やはり大手よりも街の小さな診療所など中小の医療機関での費用負担が大きく、なかなか対応できないという実情があるようだ。

 導入を難しくしている理由の1つはセキュリティで、個人情報を扱う観点からネットワークの系統を他のLANと分離する必要があるなど、シンプルにリーダーなどの機材を導入すればいいという話でもない点が導入難易度を上げている。一方で政府は医療機関や薬局に2023年4月から導入を原則として義務付けるとしており、9ヶ月程度でこの導入状況が改善するとは思えない。突如普及のアイデアがひらめくわけもなく、やはり現実は非情だ。

医療機関や藥局における資格確認の導入状況
医療機関や藥局における資格確認の導入状況
医療機関と薬局には2023年4月以降のオンライン資格確認、つまりマイナンバーカードを利用した保険証確認手段への対応が基本的に義務付けられる
医療機関と薬局には2023年4月以降のオンライン資格確認、つまりマイナンバーカードを利用した保険証確認手段への対応が基本的に義務付けられる

 これを受け入れる医療機関側の反応もさまざまだ。この義務化にあたっては東京保険医協会など複数の団体から抗議が出ており、抵抗の姿勢を見せている。義務化表明以前から健康保険証とマイナンバーカードの一体化には反対意見を示しており、ポスターを作成して傘下の医療機関に配布、院内掲示で「マイナンバーカードは受け付けていないので、これまで通り保険証を提示するように」とのメッセージを出すようにしている。

 各医院の思惑はそれぞれだろうが、少なくとも一部には「マイナンバーカード」という存在そのものを嫌悪している勢力が存在している可能性が高い。保険証の役割が別の媒体で置換されようと役割そのものは変わらないわけで、「コスト負担」「フローの混乱」という観点からの批判は理解できるものの、それ以外の理由付けについては疑問を感じる部分が大きい。

医療機関に掲示されたポスターの例。これは昨年2021年8月に撮影したもの
医療機関に掲示されたポスターの例。これは昨年2021年8月に撮影したもの
マイナンバーカードとの統合とオンライン資格確認強制化に反対するポスターの例
マイナンバーカードとの統合とオンライン資格確認強制化に反対するポスターの例

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