「メタバース」ほど過剰に取り上げられている新興技術は少ないだろう。調査会社GlobalDataによると、2022年第1四半期に業績発表資料でメタバースについて触れた企業は前期比40%増だったという。それほどの盛り上がりを見せているのだ。
こうした動きは、Metaの創業者で最高経営責任者(CEO)、Mark Zuckerberg氏のメタバースへの傾倒が注目を集めたことに続くものだ。メタバースは、同社にとっての楽しい気晴らしのように見えていたが、今や会社の将来を定義するものとなり、Zuckerberg氏はメタバース構築に数百億ドルを投じると約束している。
他のテクノロジー企業も集まってきている。MicrosoftとチップメーカーのQualcommは、メタバースのためのアプリケーションとハードウェアをどのように開発し、顧客にどのように利益をもたらすかに取り組んでいる。
大まかに言うと、メタバースとは3次元の仮想世界からなるネットワークで、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術を使って、従来の平面的なインターネットよりもリアルな方法で人々がつながるのを支援するものだ。
この分野の開発初期段階で最前線に立つのはテクノロジー企業だが、異業種の一流企業もメタバースの概念を模索し始めている。しかし、普及するにはまだ時間がかかりそうだ。GlobalDataは、B2Bのメタバースが主流になるのは、「少なくとも10年先」だと指摘する。
ゲームとエンターテインメントが、メタバース型の技術を最初に活用するであろうことは明らかだ。Merlin Entertainmentの最高技術責任者(CTO)、Lee Cowie氏は、同社がこの分野について情報収集を続けており、メタバースの技術がどのように開発される可能性があるのか探っていると語る。
同社が運営するテーマパーク、LEGOLAND Windsor Resortで最近公開されたアトラクションでは、モバイルアプリに搭載されたARを利用できる。なお、同社は、VRの乗り物も提供している。
誕生したばかりのメタバースへのこうした試験的な取り組みは、今後の方向性を示しているとCowie氏は語る。だが、メタバースへの旅は始まったばかりだ。
「メタバースが大ブームを巻き起こすのか、単なるバズワードやマーケティングの一種に過ぎないのかを判断するには時期尚早だ」とCowie氏は言う。
「しかし、勢いは十分で、人々が関心を持ちたくなるようなものになると思っている」
他の業界関係者の間でも、こうした見解が一般的なようだ。
ビッグテックによる投資は、メタバースがいつの日か成功することを意味するが、明日からすぐにリアルな仮想空間で同僚や友達と交流できると期待すべきではない。
Gartnerの著名アナリスト、Mark Raskino氏は、人間の視野を没入感のあるリアルな画像空間で満たすことは、非常に困難な課題だと指摘する。
「私は、いつか完全な没入型の3Dメタバースで仕事をする日が来ると確信している。だが、実現するのは2020年代ではない。おそらく2030年代でもないだろう」
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