実際、メタバースの開発ペースは遅いので、急いで参入する必要はないと考える企業もある。
TrainlineのCTO、Milena Nikolic氏は、同社ではまだメタバースに適したユースケースが見つかっておらず、様子見していると語った。
「メタバースは明らかに今の流行語だ。メタバース内の鉄道で旅行したいと思う人々もいるだろうし、最終的にはTrainlineがそれを実現するだろう。だが、今のところ、検討はしていない」
このように、ビジネスリーダーからの主なメッセージは、企業はメタバースに関心を持ってはいるが、メタバース研究に投資する前に強力なユースケースを望んでいる、ということだ。
ソフトウェア開発とデジタルマーケティングを手掛けるTechteeの創業者でクリエイティブディレクターのTobi Ajala氏は、大手企業がメタバースの応用を検討する支援をしてきた業界の専門家の1人だ。
Ajala氏は、今年の初めにVodafoneが開催したConnected Consumer 2030に登壇し、同氏の取り組みから見えたことを語った。それは、人々がメタバースに触れるのは、VRやARなどのツールを日常生活で使い始めるところからで、メディアで一般的に認識されているような方法ではないということだ。
「最終的にはメタバースで長時間過ごすことになると思うが、想像しているような、スウェットを着て快適なイスに座って1日18時間ディスプレイの前にいること──ではない」と同氏は語った。
「本質的には、日常生活でスマートテクノロジーを使うようになるということだ。実生活を楽にするコネクテッドシステムが登場するだろう」
そうしたスマートテクノロジーの発展が利益をもたらす可能性のある分野の1つは教育だ。テクノロジーは、生徒に没入型の学習体験を提供するのに役立つだろう。
サイードビジネススクールの最高情報責任者(CIO)を務めるMark Bramwell氏は、同校のIT部門とマーケティング部門が、ARやVRを通じて授業を実施するためのメタバースの利用方法について、「予備的な話し合いを始めている」と語る。
同校のMBAコースに在籍する60カ国340人の学生が英国へ移動する準備支援など、具体的な応用を検討しているという。
また、「メタバースによるゲーミフィケーションの要素を取り入れたバーチャル入学式を提供できないかと考え始めている。新入生たちが同級生と会い、仮想世界でビジネススクールを見学できるようなものだ」とBramwell氏は語る。
「そうすれば、実際に顔を合わせる時、少しは気兼ねや怖さが減るだろう。柔軟に考えれば、未来のバーチャル大学は、すべてがオンラインと仮想空間で完結するメタバース上に存在する可能性がある」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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