2008年にブロックチェーン技術に関するホワイトペーパーが発表されて以来、ビットコインなどの仮想通貨による取引は完全に匿名で非公開だとうたわれてきた。本当のところはどうなのだろうか。
2022年初め、マンハッタンで暮らす夫婦が36億ドル相当(当時のレートで約4160億円)のビットコインを押収された。2人は2016年に香港の仮想通貨取引所「Bitfinex」で起きたハッキング事件にからみ、マネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑いで逮捕、起訴された。これは米司法省が押収した金融資産としては、過去最大の額となる。
この事件では、当局は総力を挙げて不正資金を追い、複数の国にまたがる複雑な取引網をたどって6年後、ついに盗まれたビットコインにたどり着いた。最近の研究では、取引データに含まれる意図しないパターンを用いることでビットコインを追跡できることが実証されている。このパターンはデータセットが大きくなるほど増えるだけでなく、特定し、追跡することができる。
仮想通貨を使えば、インターネット経由でピアツーピアの直接取引が可能だ。理論的には当事者間で取引が完結するため、銀行も政府も仲介業者も必要ない。取引のプライバシーと匿名性を確保するには完璧な仕組みのように思えるが、マンハッタンでの逮捕劇などの事例が示しているのは、仮想通貨取引の別の顔だ。
ビットコイン人気が一般投資家にも広がるなか、個人間で完結できるという仮想通貨取引の原則が怪しくなっている。もし取引を追跡できるなら、ビットコインのような仮想通貨が確保するのは匿名性ではなく、疑似匿名性だ。
匿名性と仮想通貨の関係を明らかにするため、米CNETではブロックチェーン技術の専門家2人を招いて話を聞いた。ひとりはバブソン大学で仮想通貨やブロックチェーンについて教えるSteven Gordon氏、もうひとりはメアリービル大学のデジタルトランスフォーメーションの責任者で、ブロックチェーン技術の導入に取り組むFeng Hou氏だ。
以下は、その記録である。
答えはノーだ。マンハッタンの事件が証明したように、ビットコイン取引は追跡できる。2021年Colonial Pipelineに対するハッキングでも、当局は身代金の一部を取り戻すことに成功した。
「仮想通貨がある程度の匿名性をもたらすことは確かだが、現時点では完全に匿名だと主張できる仮想通貨は存在しない」と、Hou氏は言う。
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