Metaの最高経営責任者(CEO)であるMark Zuckerberg氏が手にするのは、大ぶりな仮想現実(VR)ヘッドセットの「Butterscotch」だ。試作機で、なおかつ研究専用となっている。しかしこれも、メタバース計画を実現するためにMetaが解こうとしているパズルの一片だ。
Butterscotchの画像の解像度は、Metaが消費者向けに販売するVRヘッドセット「Quest 2」の約2.5倍に達する。高解像度は、仮想世界をよりリアルに見せる上で非常に重要だ。動画でのプレゼンテーションに登場したZuckerberg氏は、これは20フィート(約6.1m)先の物体をはっきり見るのに十分な解像度だと述べた。
よりリアルなVR画像を生み出せば、離れている相手とも実際に同じ部屋にいるように感じられると、Zuckerberg氏は話す。しかし、さらにリアルな臨場感を得るためには、VRヘッドセットの解像度を向上させるだけでは不十分だという。
「最大限に没入感とリアリティーのある自己表現ができるようになれば、非常に大きな力となる。われわれは今、リアルさへ向けた大きな一歩を踏み出そうとしている最中だ」(同氏)
Metaは、仕事や遊び、交流のための仮想空間であるメタバースに関して、壮大な計画を立てている。しかし、長く困難なToDoリストの項目をすべてこなさなければ、そうした目標は達成できない。MetaがVRヘッドセットをさらに多くの人々に購入してもらいたいなら、動きを正確に追跡し、より快適に装着できるようにする必要がある。
プレゼンにおいて、Zuckerberg氏とMetaのスタッフは、同社の最も野心的なプロジェクトの1つ「Mirror Lake」の画像を公開した。Mirror Lakeは、スキー用ゴーグルに似た外観で、現実世界とデジタル世界を融合するMRの技術を備えたヘッドセットだ。
Mirror LakeのようなMRヘッドセットも、やはり初期段階にすぎない。Mirror Lakeはあくまでコンセプトであり、Metaはまだ実機を作成していないため、アイデアが実際にうまくいくかどうかは不明だ。
Mirror Lakeは、現実世界にデジタル情報を重ねて表示するサングラス型の拡張現実(AR)ヘッドセットに向けた一歩となるかもしれない。Metaは、これらのAR製品をいずれ市販化したいと考えているが、実際に家の外で装着するハードウェアとしては、まだ大げさすぎる。
MetaはMirror Lakeに、ハイダイナミックレンジ(HDR)を備えた網膜レベルの解像度のディスプレイ、アイトラッキング(視線追跡)、多焦点をもたらす技術、度付きレンズ、レーザーを利用して3次元画像を生み出すホログラフィックレンズを搭載したい考えだ。
Mirror Lakeでは今後、装着者の目や顔の表情を示すため、外側にディスプレイを搭載する可能性もある。このアイデアは、Metaが以前に提示したもので、Appleも取り組んでいると報じられている。
Metaはまた、これまでで最も薄くて軽く、PC用VRゲームもプレイできるVRヘッドセット「Holocake 2」を披露した。このプロトタイプは、同社が将来的により小型のVRヘッドセットを開発するのに役立つ可能性がある。また、ヘッドセットの重量が軽くなれば、仮想世界で過ごせる時間も長くなるだろう。
Microsoftの「HoloLens 2」に似たデザインを採用したこのデバイスは、ホログラフィックレンズを使用している。このレンズは従来のレンズの光学系を踏襲しているが、Quest 2などのVRデバイスで使われている曲面レンズより平らだ。Zuckerberg氏はほとんどのVRデバイスについて、分厚いレンズを使っているせいで前部がとても重たく感じられると指摘している。Holocake 2では、分厚いレンズを通して光を目に届けるのではなく、ホログラフィックレンズを介して光を届けている。また、目とVRディスプレイの間の距離を縮めることで、ヘッドセットの厚みを減らしている。
ただし、Holocake 2はホログラフィックレンズを機能させるためにレーザーを必要とするが、ヘッドセットで利用できるコンシューマー向けのレーザーを見つけるのはまだ難しい。ホログラフィック光学系を利用すれば、VRヘッドセットの厚みを減らすことができ、カメラやアイトラッキング装置、レンズなど、VRをより快適にできるテクノロジーを追加できる。
Metaの説明によれば、より優れたディスプレイを開発する上で、4つ課題があるという。それは解像度、焦点、歪み、ハイダイナミックレンジ(HDR)で、いずれも画像の明るさとコントラストを改善するのに欠かせない要素だ。
問題の1つは、VRヘッドセットの色域、明るさ、コントラストが、テレビやノートPC、スマートフォンと比べて大きく劣ることにあると、Reality Labsの責任者を務めるMichael Abrash氏は述べている。
Zuckerberg氏は、「Starburst」と呼ばれるプロトタイプのVRヘッドセットを手に取りながら、このデバイスには明るい光源が搭載されていると説明した。同氏によれば、Starburstは「きわめて実用性が低い」ものの、研究者らはこの重いヘッドセットを使用して、未来のデバイスの改良に取り組んでいるという。
さらにMetaは、「Half Dome」と呼ばれる別のプロトタイプも開発した。このデバイスは可変焦点レンズを搭載しているため、人々はVRの中で目の焦点を合わせやすく、近くにある物をより鮮明に見られるようになる。このレンズを使用した人は、疲れを感じたり視界がぼやけたりすることが少なかった。また、小さい物体を識別したり、VR内で文字を読んだり、周囲の状況にすばやく反応したりすることが容易になったという。
Metaは2022年後半にも、「Project Cambria」のコード名で呼ばれる新型の高価なVRヘッドセットを販売するとみられている。このデバイスは、同社初のアイトラッキング搭載VRヘッドセットになる予定だ。その後については、今回披露された次世代のディスプレイテクノロジーがヘッドセットに搭載されるのか、また搭載されるとすればいつになるのかは分かっていない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス