オンライン会議には「バッファが必要」--村上臣氏が大切にする生産性の上がる働き方

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2022年07月07日 09時00分

 大学在学中にITベンチャーの電脳隊に参画し、その後ヤフー、ソフトバンクでフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行期にモバイル戦略などを担当した村上臣氏。ワイモバイルの立ち上げに携わった後、2017年にビジネスプラットフォームのLinkedIn日本代表に就任し、さらに2022年、同氏はそのLinkedInを後にし新たなチャレンジを始めている。

村上臣氏
村上臣氏

 これまで数々のキャリアを重ねてきたなかで、同氏は「企業」や「働くこと」についてどのように考えてきたのだろうか。その話からは、1人1人が仕事や人生にどう向き合っていくべきかだけでなく、企業のこれからのあるべき姿も浮かび上がってきた。

 前編では、村上氏にこれまでのキャリアを振り返ってもらうとともに、企業選びの際に大切にしていることなどを聞いた。後編では、同氏が働き方において大切にしていることや、誰でも実践できる自身のキャリアを振り返るコツなどを聞いた。

オンライン会議には必ず「バッファを作る」

——ご自身の働き方において大切にしていることはありますか。

 僕は、寝る時間と起きる時間が1年365日ほぼ変わらないんです。土日でも23時に寝て6時半に起きる生活をずっと続けています。若いときは金曜日に夜ふかしして、土曜日の午前中はずっと寝る、みたいなこともしていたのですが、そうすると土曜日にほとんど何もできなくなる。なので、一定のリズムで淡々とやるように変えたら、これが自分に合っていて、土曜日は急にできることが倍に増えたように感じました。

 本業以外にもいろいろな会社を社外取締役やアドバイザーとしてお手伝いしていますが、平日はほぼ本業にコミットしているので、副業など個人の仕事は土曜日にして、日曜日は家族を過ごす、みたいなことが多いですね。

——仕事への向き合い方としてこだわっていることはありますか。

 その場その場で出せる最大限のバリューを出したいと思っています。たとえばミーティングでも、出席するからには何かバリューを出したい。本業か副業かに関わらず、自分にどういうことができるのかをすごく意識するので、そのためにもミーティングの前に5分でも10分でも、必ず考える時間を持つようにしています。ミーティングの参加者、テーマをもとに、自分がそこで何を言えるのかと。なので、ミーティングが連続するときも、間に15分なり30分なりのバッファを設けます。

 コロナ禍の初めの頃は不安だったので、隙間なく予定を入れて1日10回以上ミーティングすることもありましたが、全然パフォーマンスが出なくて、ただ疲れて、今日の自分は何か意味あることができたのだろうか、とヘコんでいたりもしました。それもあって、今は短時間でもいいから必ずバッファを作ってフォーカスタイムを設けます。チームメンバーにもおすすめしていますし、そういう環境になると生産性がめちゃくちゃ上がるんですよね。自分が不要なミーティングならできるだけ出ない、と決めることもできますし、なるべく少ない人数で濃い会議をした方が生産性は高まります。

 LinkedInのときもそうでした。経営層との会議は、事前に議論の元になるドキュメントを用意するのが前提で、むしろ用意しないと会議が開けませんでした。会議が始まると5分でディスカッションに移りますし、本当に忙しくてドキュメントを読めていない人がいるときは、「ごめんちょっと5分ちょうだい」と言って、一生懸命ドキュメント読んで内容を把握して、即ディスカッションに入る。あとはひたすらQ&Aです。

 日本だと通常、会議が30分あったら最初に15〜20分はプレゼンターが説明して、残りの10分がQ&Aみたいな感じになりますよね。でも、それだとQ&Aが明らかに足りない。わざわざみんなで集まって会議するのは、複数の人の目でいろいろなインサイトを得たり、フィードバックを得たり、深く議論したりするのが目的です。それができない、または必要ないのであれば、チャットかメールで報告すればいいと思うんです。

自分を知るために年に一度「職務経歴書」をアップデートする

——個人の転職、あるいは企業の採用活動をよりよくするために、LinkedInでの経験も踏まえてアドバイスできることはありますか。

 先ほど言ったような、組織と従業員がよりフラットな関係になっていくことは、すでに起こり始めていて、それに加えて専門性を求めるジョブ型雇用もやってきます。そうなったときは特に企業側の意識改革が重要で、なかでも面接官にとってそれは不可欠です。日本全体が人材不足に陥り、大きな需給ギャップが生まれていることから、採用される応募者側の方が立場としては強くなるからです。

 したがって、会社はいかに人から選ばれる組織になるかを考えなければなりません。そのために企業は採用マーケットをより深く理解する必要がありますし、それこそ競合会社がどういった採用をしているのか、どんな福利厚生にしているのかも調べる必要があります。選ばれる企業になるためにどう取り組むのかは、これから一段と大事になってくるでしょう。

——その企業側の目線とは反対に、今の会社や働き方に悩んでいる転職志望の人はどんなことを意識する必要がありそうでしょうか。

 僕から言えるのは、自分のことをよく知りましょう、ということです。会社に対する不満や業務における難しいこともあると思いますが、いったん自分を客観視してみた方がいいと思うんです。僕が著書「転職2.0」でも"自分を知る”ところから章立てを始めているのはそれが理由で、たとえば自分のキャリアをちゃんと振り返っているかどうかがすごく重要です。

 それをしっかりできている日本の方は少ないと思います。なぜなら転職回数が圧倒的に少ないから。何度か転職した人はわかっていると思いますが、面接などではいろいろ質問されますし、そのなかで自分の強みをアピールする必要がある。おそらく多くの人が新卒のときには体験しただろうけれど、転職したことのない人はそれ以降はやっていないんですよね。

 そういうことを毎年のように自分と対話する形で整理してみるわけです。この1年間で自分は何がどれぐらいできるようになったのか、逆に何をやろうとして駄目だったのか、といったような振り返りを大晦日ぐらいにすべきだと思います。ちなみに僕は20代の頃から毎年やっています(笑)。

——ちなみに、村上さんご自身はどのように振り返っていますか。

 職務経歴書をアップデートしていますね。いざ転職しようとしたときに職務経歴書を1から書くのは大変ですが、毎年ちょっとずつアップデートすればそう時間がかかるものではありません。特に外資系企業の場合はCV(英文レジュメ)を提出する文化があって、「CVを送って」と言われたらすぐに提出して、急に面接に入ることもよくあります。チャンスが来たときにポンとすぐに出せるものがあった方が強いですよね。依頼されてから準備するのだと、時間がかかって他の人に決まってしまうかもしれません。転職する気は全くないとしても、何かあったときの保険として、頻繁にアップデートしておきたいですよね。

 それと、アップデートすることによって自分と冷静に向き合うこともできます。俯瞰的に自分の経歴を見たときに、なんかいまいちここがイケてないな、みたいなこともわかります。目標にしているような人がいれば、その人が自分の年齢のときにどんなことをしていたのか調べて、自分の経歴と比較することもできます。もし本当に気になるのであればその人にアプローチして話をしてもいいと思いますし、メンタリングしてください、みたいなお願いをしてもいいかもしれません。

キャプション

——自分が何か目標にしているものがあるとすれば、そこに対して足りないものを確認して埋めに行くという行動もできるわけですね。

 そうなんです。自分の現在地点がわからないとそのギャップが見えないんですよね。ギャップを見るためには2つの点が必要で、1つがどういうポジションになりたいか、もう1つは今どうなのか。この2つがあるとギャップが見えるので、そのギャップを小さなステップにブレイクダウンして進めることもできますし、じゃあもう少し英語できるようにしようとか、そうなれば給料が上がるかもしれないなとか、こういう経験を積むことで自分のやりたいことができる会社で働けるかもしれないなとか、わかるようになる。ただなんとなく英語がんばろう、駅前留学しよう、みたいに漠然とやっているだけだと、進捗が見えないのでいつまでも前に進まないんですよね。

日本の「働き方改革」は先が長い

——日本全体の「働き方改革」という点で、今の日本の企業がどのような状況にあると考えますか。また、その中で村上さんはどのようにコミットしているのでしょうか。

 コロナを経て少しは変わったけれども、日本の働き方改革はまだまだ先が長いなと感じています。LinkedInは、そのど真ん中にアプローチしてきたわけですが、退任してしまったので、それを続けるためにはどうすればいいか考えていたときに、たまたまランサーズの社外取締役にお誘いいただきました。フリーランスという1つの働き方を提案しているランサーズと一緒に、働き方改革の領域に引き続き貢献できるかもしれないと思っています。

 LinkedInもランサーズも、目的として一貫しているのは個人のエンパワーメントなんですよね。LinkedIn創業者のリード・ギャレット・ホフマンは、組織と従業員個人はもっとフラットな関係になって、互いにWIN-WINを目指すべき、ということを提唱しているのですが、僕もその考え方がすごく好きです。

 今の日本の大企業の多くは終身雇用という強力な保障を従業員に与えているがために、会社が上から目線でくる。総合職だと基本的に会社の命令は聞かなければならず、転勤を嫌がったらクビにできるぐらいの権利を持っている。そういった組織と個人の意識の違いが存在することが、コロナによってさらに明確に見えるようになってきたと思います。

——働き方や採用において、他の先進国と比べて日本に足りないものは何だと考えますか。

 フリーランス率は先進国の中で日本が圧倒的に低いですよね。このコロナ禍で海外のクラウドソーシングサービス「Upwork」などが伸びていますが、これは時間や場所の壁がテクノロジーで乗り越えられるようになったのも大きな要因でしょう。各分野のスペシャリストがさまざまな企業に関わっていくような動きは、日本でももっとあってしかるべきかなと思います。

 これは個人的な推測ですが、日本の多くの方にとっては転職するより副業をする方がハードルが明らかに低いと思うんです。今、上場企業の半分ほどが副業を許可していると言われていて、さらに上場企業に勤める正社員の数は2000万人程度とされていますから、全員が副業すれば1000万人規模です。専門性と豊富な経験を持っている大企業の1000万人が、スタートアップやNPOや行政で力を発揮できるようになれば、ものすごく違う世界が生まれると思います。週1回でも他の場所で働くようになれば人材不足が一気に解消するのではないでしょうか。

 国内の人口が減る未来は確定しています。定年を延長して女性がカムバックしやすくするところは政府も頑張っていますが、そんな風に1人が複数の企業で働くというところにも、もう1つ大きなチャンスとしてあると捉えたいですね。

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