筆者はこれまで、「リアル」といううたい文句に納得できたためしはない。したがって、「BeReal」というソーシャルメディアアプリのことを初めて耳にしたときも、これは試してみなければ分からないと思った。
BeRealは、リアルさを追求するだけでなく、「リアルであれ」という、命令形をその名に冠していることからも分かるように、「アンチInstagram」をうたうアプリだ。「Instagram」のような「グラム」、つまり友人の生活の一片を切り取った写真が延々とフィードされる「記録」という基本コンセプトをとりながらも、もっとゲーム的な要素を取り入れ、(少しでも)偽りを減らそうと試みている。最近これが、Z世代の間で広く人気を呼びつつある。
仕組みはこうだ。毎日、ランダムな時刻に、BeRealアプリ上の全ユーザーにプッシュ通知が送信される。「Time to BeReal(リアルになる時間です)」という通知だ。通知が届いたら2分以内に、前面カメラと背面カメラの両方で写真を撮り、フィードに投稿しなければならない。投稿しなければ、友人の投稿を見ることはできない。アングルを気にして何枚か撮り直したりすると投稿が遅れてしまい、「○○ just posted late(○○が遅れて投稿した)」と友人に通知が届いてしまう。次の日に新しい通知が届くと、全ユーザーの前日の写真は消去される。
ゲームの要素があるのは、BeRealの投稿が1日1回に限定されているからだ。リアルさは、いつどこで写真を撮るか選べず、フィルターを使って肌をきれいに見せたり、アボガドトーストなどの色を補正できない点にある。
実のところ、筆者には、単語当てゲームアプリの「Wordle」とよく似ているように感じられた。1日に2分だけ、ちょっとしたお楽しみのタスクをこなす小休止の時間。それが終わればまた、退屈な日常、悪いニュースばかりのオンライン、あるいは、おそらく他のソーシャルメディアアプリのどれかに戻っていく。そして、重要なのは、Wordleと同じように、1日に1回しか「挑めない」ことだ。
友人を誘うために、まず、いくつかの既存のグループチャットで探りを入れてみた。このアプリは、純粋なソーシャルフィードというより、グループ活動として楽しめるような気がしたからだ。同じ理由で、筆者は今でも時々、Wordle(あるいは、「Worldle」「Heardle」や「Antiwordle」)の結果をテキストメッセージでやり取りしている。結果をTwitterに投稿する人もいるが、筆者には理解不能な行動だ。
筆者自身はZ世代ではないので、賛同し参加してくれる友人が多くないことは分かっていた。勧誘の成功率は50%というところだった。ある友人は、新しい写真共有アプリというと、まず人工知能(AI)の学習を疑ってかかるという、いつもの習慣から脱却できなかった。「何かの罠という感じがする」と答えた友人もいる。筆者の配偶者にいたっては、既読スルーだった。
誘いに乗ってくれた友人何人かが、果敢にも投稿を始めた。ノートPCとか猫とか、プロテインパウダーとか、そんな写真が多い。筆者の写真はといえば、前面カメラに写るのは筆者のくたびれた不機嫌そうな顔ばかり、背面カメラは息子が子供用チェアのトレーをケチャップで汚しているところだった。我が家にディナーに来ていた客がバルコニーから撮った風景をInstagramに投稿した(もちろん、大いに加工して)ことがあるのだが、同じ風景を投稿したこともある。客人の撮った写真の方が、断然良かった。
BeRealには、Wordleと同じようなはっきりとしたクリア目標があるわけではない。だが、3つのことをクリアできると特別な達成感があることはすぐに分かってきた。面白い図を撮ること、写りのいい自撮り写真を撮ること、時間内に投稿することだ。もちろん、運の要素はある。通知が届いたときに、ちょうどクールな場所にいるとか、ソファでごろ寝していないとか、あるいは友人の1人が心配していたように、トイレにいたりしないとかだ。
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