「トイレにこもっているときじゃなく、楽しい瞬間に通知が来てほしいね」と、友人はあるときメッセージを送ってきた。そして、毎日、いつ通知が届くかと待ち受けているのは、「ビックリ箱みたいだ」と言っていた。
筆者も、BeRealで「負けた」ことが何度かある。就寝後に通知が届いたり、カメラをオンにして「Zoom」ミーティングに参加中だったり、道路を運転中だったりしたときだ。一方、完全に「勝った」こともある。その日は、通知後2分間の制限時間が、ちょうど「スポーツの中で最も偉大な2分間」とうまく重なったのだ。テレビで競走馬のリッチストライクがゴールを決めたその瞬間に、ケンタッキーダービー用の飾り帽子を身につけてスナップ写真を撮ることができた。
BeReal上にいる筆者の友人は全員、この記事の掲載後にBeRealアプリを削除する予定だ。全員が問題としたのは、リアルさに関するまことしやかなうたい文句ではなく、通知の来るタイミングだ。
「通知を受けるのが、特に勤務中だったり夜間だったりすると、普段は写真を撮ったり投稿したりしない時間なので、ちょっとストレスになる」。ある友人はそう言っている。
「ソーシャルメディアに主導権を握られるのではなく、自分が主導権を握りたいということを、このアプリは改めて感じさせてくれる」、と話す友人もいる。
「毎日投稿しないと、後ろめたい気がした」。3人目はそんな感想をもらした。
Wordleが毎日、問題を解く時間を指定してきたら、皆今頃はまっていただろうか(クイズアプリの「HQ Trivia」がどうなったか、ご存じだろう)。
だが、筆者が個人的に興味を感じているのは、「Be(なれ)」の方ではなく「Real(リアル)」の側面だ。
BeRealの雰囲気は、リアルというより、実際には懐かしさがある。反Instagramというより、初期のInstagramを感じさせる。BeRealで筆者が気に入っているのは、ぱっとしない自撮り写真を投稿できること、いや、投稿しなければいけないこと、そして今や演出過剰となったネットワークの裏に潜んでいる、未熟な自己中心性を認めざるを得ないことだ。自分がランチに何を食べたかなんて、誰も気にしない。それでも、人に知らせたいものなのだ。筆者が最初の頃Instagramに投稿した1枚は、「Finger Hands」の指人形を写しただけの、何ということもない写真だった。ジョークグッズ店で見かけて、面白いと思ったのだ。そうしたものを投稿していた頃が懐かしい。
今では、日常生活で見かけるがらくたをInstagramに投稿しようなどとは、誰も思わないらしい。出かけた先の写真を投稿するのではなく、今や「Instagram映え」を求めて出かけるようになっている。Instagramはすっかり、インフルエンサーや「クリエイター」が「リール」やミームを投稿する場になってしまったが、BeRealは違う方向に進んでいる。アプリストアにある宣伝文句のとおりだ。「インフルエンサーになりたいなら、今のまま『TikTok』やInstagramをどうぞ」
それでもやはり、反動によってよりリアルなものが求められており、「気軽な投稿」や写真のまとめ投稿が一定の人気を集めつつある。筆者のInstagramのフィードには、「Instagramでの姿と現実の姿」という舞台裏の図式がよく分かるミームが多数流れてくる。また、「ストーリー」機能は、その一時的な特性と気軽さによって、「リアル」への欲求を部分的に満たしているのかもしれない。
そう考えると、BeRealはソーシャルメディアの変化の前兆というより、単なるギミックと言えるだろう。その点は残念だ。筆者と同じ30代の誰も同意してくれないかもしれないが、筆者はBeRealを何となく気に入っているからだ。「Snapchat」やTikTokのように、最終的には、Instagram自体のオプション機能として組み込まれたり、Instagramで再現されたりするのかもしれない。
あるいは、デジタル世界に出現した珍しいものという扱いで終わり、いつの日か「あの頃は楽しかった、懐かしいね」などと語られるようになるのかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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