「NFTブームは終わった」?--終焉説を信じるべきでない理由 - (page 2)

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年05月19日 07時30分

 今のNFT市場が好調だと言えば嘘になる。NFTが混乱のただ中にあることは事実だ。しかし「NFTは終わった」と宣言することは、もう1つの明白な真実――経済そのものが混乱状態にあることを無視している。

 現在の市場の惨状は2つのニュースと結びついている。1つは、5月4日に米連邦準備制度理事会(FRB)が約20年ぶりに0.5%の大幅利上げを決めたこと。もう1つは、11日に米労働省が発表した消費者物価指数(CPI)の月次データだ。このデータによれば、インフレ率はわずかに低下しているものの、さらなる利上げはないと市場が確信できるほどには下がっていない。

 こうした市場環境の下で、NFTだけが値上がりすることは考えにくい。ナスダックの株価指数も、11日までの1カ月で20%下落した。前月同日と比べて、Appleは12.5%減、Amazonは30%減だ。テクノロジー企業だけでなく、消費者向けの製品やサービスを扱う企業でも株価は軒並み下落傾向にある。Disneyは30日間で19.5%下落。Nikeは13.5%減、Adidasは10%減、Gucciを所有するKeringは13%減となっている。

 前述したように、Bored Ape Yacht ClubコレクションのNFTはほぼ半額になったが、同様にNetflixもサービス開始後初めて加入者が減少し、30日間で株価はほぼ半分になった。

 上がったものが下がるのは世の理だ。DappRadarによると、NFT市場は2021年に前年の260倍)に成長し、9400万ドル程度だった取引高は2021年におよそ250億ドルまではねあがった。NFTバブルの規模には異論があっても、投機がNFTバブルを生んだことを否定する人はまずいないだろう。

 同じことは企業についても言える。パンデミックの期間に、一部の企業では評価額が急激に上昇した。例えばAmazonの株価は2021年7月にコロナ前の倍となる3777ドルに上昇した。Apple、Netflix、Metaの株価も過去2年間で倍になり、Teslaの株価はパンデミックの期間に14倍に跳ね上がった。

NFTは死んでいない――少なくとも、今のところは

Yuga Labs
提供:Yuga Labs

 さまざまな意味で、NFTの運命を握っているのがBored Ape Yacht Clubを手がけるYuga Labsが開発中の新たなメタバース「Otherside」だ。同社は4月30日にOthersideのNFT土地証書を売り出した。その後10日間に、この仮想の土地をめぐって行われた取引は約10億ドルに及ぶ。

 過去最大級のこの取引がこの数週間うちに行われたことを考えると、NFTが死んだと言うのは無理がある。

 しかし今回の土地の売り出しは、仮想通貨の弱点も浮き彫りにした。この弱点は、現在のNFT市場の低迷にも寄与しているものだ。今回の土地取引では、イーサリアムの効率性の問題から、トレーダーたちは合計約2億ドルもの取引手数料、いわゆる「ガス代」を支払った。ブロックチェーンの混雑によって取引が失敗したにもかかわらず、数千ドルのガス代を支払ったトレーダーもいる。これらのガス代は、イーサの供給量を調整するために「バーン(焼却)」され、流通から除外された。これは数日分の市場活動が破壊されたことを意味する。

 その一方で、この新たなメタバースはNFTの進化も示している。これまでのNFTは、主にデジタル世界のステータスシンボルとして使われてきたが、Yuga LabsはBored Apeブランドを幅広い層に利用される大作ゲームに育てたいと考えている。Yuga Labsだけではない。大勢のNFTクリエイターたちがOpenSea市場を出て、消費者のリビングルームに飛び込もうとしている。その成否を決めるのは、大幅利上げがもたらす広範な影響よりも、むしろNFT自体の長期的な可能性だ。

 デジタルの猿は勢いを失ってはいるが、過小評価するべきではない。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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