「NFTブームは終わった」?--終焉説を信じるべきでない理由

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年05月19日 07時30分

 NFT(非代替性トークン)は今、活気を失っているように見える。

Bored Ape Yacht Club
提供:Yuga Labs

 世界最大のNFT市場、「OpenSea」で5月8日に販売されたNFTの総額は5200万ドルにとどまった。これは1日当たりの取引高としては2021年12月以降最も少なく、取引高が1億ドルを下回る日が数えるほどしかなかった4月と比べると、大幅な減少だ。

 取引高の減少は、NFTの価格が急落していることを意味する。4月に40万ドルで販売された「Bored Ape Yacht Club」コレクションのNFTは、今やその半額で取引されている。他の人気コレクションも似たり寄ったりの状況だ。Moonbirdsのピクセルアートのエントリー価格は、4月時点の11万ドルから4万5000ドルに急落。女優のリース・ウィザースプーンが支援する「World of Women」コレクションのエントリー価格も、3万4000ドルから1万ドルに低下した。

 混乱しているのはNFT市場だけではない。仮想通貨のビットコインやイーサも大幅に値下がりしている。11日、ビットコインは2020年以来初めて2万8000ドルを割り込み、イーサも11月の4600ドルをはるかに下回る、2000ドル近くまで下げた。今のところ、Web3の熱狂は感じられない。

 NFTの取引高が激減しているのを見て、The Wall Street Journalは5月上旬、NFTの売れ行きが「失速」していると報じた。また、Fortuneは100万ドルで販売されたCryptoPunksのNFTが半年後にはわずか14万ドルで売却されたことについて、「NFTの死」を意味するのだろうかと問いかけた。これは別の意味での熱狂を巻き起こした。投機家たちがNFTの終焉は近いと騒ぎ始めたのだ。

 「NFT市場は崩壊しつつある。デジタルの岩と猿は結局、価値の保存手段としては適切ではなかった」というツイートには、1000以上の「いいね」がついた

 こうした意見にも一理はある。NFTは2010年代に生まれた技術で、注目されるようになったのはここ1年ほどだ。仮想通貨の投資家にほぼ支えられているため、NFTの価値が長期にわたって続くかは疑問の余地がある。ブロックチェーンデータの分析会社Chainalysisのエコノミスト、Ethan McMahon氏は「NFTは市場が成熟していないため、ユーザー心理の変化に翻弄されやすく、変動性が非常に高い」と指摘する。

 しかし、現在の悲観論には過度の確証バイアスが働いているように見える。購入されるNFTの数が減っていることを根拠に、NFT市場は破綻に向かっていると主張する人々は、何千点もの安価なNFTではなく、少数の高額なNFTに資金が集中しつつあることに気付いていない。4月には、トレーダーは例えば4000ドルのNFTを100点買う代わりに、40万ドルのBored Apeを1点だけ買うようになっていたということだ。

 同様に、数カ月前に目をむくほどの高値で購入されたNFTが、現在でははるかに低い価格で売られているといった特殊な例も参考にはならない。NFTは変動性が高く、トレンドの変化にあわせて投資先はめまぐるしく変わる。1年前に290万ドルで落札された、Twitter創業者Jack Dorsey氏の初ツイートは、4月中旬にわずか280ドルで落札された。では、これはNFTの終焉を意味するのだろうか。同じ週に、Moonbirdsのフクロウのピクセルアートが7600万ドルもの売り上げをたたき出したことを考えると、答えはノーだろう。

 NFTを嫌う人は多い。環境負荷が高い上に、現時点では基本的に著名人や、暗号資産で富を築いた富豪たちのステータスシンボルにすぎないからだ。人間は、自分の嫌いなものが滅びるといううわさを信じやすい。

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