「Meta Quest 2」(旧「Oculus Quest 2」)は、驚異的なヒットを飛ばしている仮想現実(VR)ヘッドセットであり、発売から2年近く経った今も私たちのお気に入りのVRデバイスだ。Meta(旧Facebook)は、その次期バージョンを待ち望む市場の声にどう応えるのだろうか。テクノロジー系メディアThe Informationの最近の記事によると、Metaは今後数年間に4つの新型ヘッドセットをリリースする見込みだ。例えば2022年には、2021年に発表されたヘッドセット「Project Cambria」がいよいよ登場するが、この新型ヘッドセットは厳密にはQuest 2の後継機ではない。
Project Cambriaは拡張現実(AR)とVRのハイブリッド型ヘッドセットであり、価格も機能もQuest 2をはるかに上回る。優れたVRデバイスであると同時に、改良されたカメラを使って、現実世界の映像とVRを組み合わせた複合現実(MR)を表示できる。
また、新搭載のセンサー技術、特にアイトラッキングによってVRの体験が強化され、アバターの表現も充実する見込みだ。もっとも、アイトラッキングの実装は、データのプライバシーに関する懸念ももたらす。
CambriaはQuest 2のようなスタンドアロン型デバイスになると予想されている。ただし用途によっては、Quest 2と同様に、PCや多少はスマートフォンとの接続が必要になる可能性がある。初期に発表されたデザインモックアップを見る限り、CambriaはQuest 2よりも小さくなりそうだが、The Informationの最近の記事によるとバッテリーが大きくなるため、Quest 2より重量は増える可能性があるという。また、レンズが顔に接する部分が小さくなることはすでに確認されている。これはレンズとの距離を縮めることでリアルな3D効果を実現する「パンケーキレンズ」の採用によるものだ。
大容量のバッテリーはヘッドセットの後ろ部分に搭載されると予想されているため、外観は既存のOculus VRゴーグルよりも、むしろMicrosoftのARヘッドセット「Hololens 2」に近くなりそうだ。バッテリーをヘッドセットの後部に積んでいるVRデバイスは、他にもHTCの「VIVE Focus 3」(とMeta純正のQuest 2用バッテリー付きストラップ)がある。
The Informationの記事をはじめ、最近はCambriaを「顔のためのノートPC」と表現している記事が多い。これは、この新型ヘッドセットがほぼ単体で機能することを示唆している。ただしQuest 2と同様に、一部の強力なアプリを動かすためにはPCとの接続が必要になるだろう。
Metaの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏は2021年、米CNETとの会話の中で、Questの“プロ”バージョンはセンサー技術に重点を置いたものになると語っていた。Cambriaには、視線や顔の表情に加えて、健康やフィットネス関連のトラッキング機能も搭載されるとみられている。MetaのVRプラットフォームは以前からフィットネスを重視しており、ペアリングした「Apple Watch」で心拍数を計測するサブスク型フィットネスサービスも買収している(『Oculus Move』アプリはAppleの『ヘルスケア』と同期可能)。Metaは独自のスマートウォッチを開発中だとも報じられている。
Project Cambriaでは、改良された外部カメラを使って周辺環境をカラー撮影し、それをヘッドセットの内蔵ディスプレイに表示する。Quest 2でも外部の環境を見ることはできるが、解像度は低く、映像は白黒だ。Quest 2は、こうしたフィードに部屋の境界線等のVR映像を重ねることで、一種のMRを作り出す。Cambriaでは映像のリアリティーが大幅に増すとみられている。
筆者は、フィンランドの企業Varjoが開発した超高性能VRヘッドセット「Varjo XR-3」を試用したことがある。Varjo XR-3は、LiDARとカメラを使って現実世界をスキャンし、そこにVRを重ねることでMicrosoftやMagic LeapのARヘッドセットと同様の説得力のある映像を生み出す。おそらく、MetaのCambriaが目指しているのは、これに近いものだ。
Metaが理想とする先進的なARグラスはまだ実現していないが、Cambriaは開発者が手(と視線の)トラッキング等を使った、AR的な体験を生み出すためのツールキットとなるだろう。
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