「Cambria」「Quest 3」--Metaの次期VRヘッドセットに期待できること - (page 2)

アイトラッキングの仕組み

提供：Facebook

　詳細は公表されていないが、VRのアイトラッキングはほぼすべて、赤外線カメラによって目の動きを測定することで実現している（目の画像を撮影するトラッカーもある）。アイトラッキングは便利な機能だ。例えばアイトラッキングを利用した中心窩レンダリングは、視野の中心部分のみを高解像度で描画することで、少ない処理能力で優れたグラフィックスを生成できる。これはバッテリー持続時間の延長、パフォーマンスの向上、ヘッドセットの小型化につながる。

　アイトラッキングを利用すれば、アバターのアイコンタクトを強化し、映像のリアリティーを高められるだけでなく、ハンドトラッキングやコントローラーと組み合わせることで、操作精度も向上する。体の動きに制約がある人でも目でVRのインターフェースを操作できるため、アクセシビリティーも向上する。

　Metaは目だけでなく顔の表情をトラッキングする機能も実装する予定だ。このフェイストラッキングを使えば、ユーザーの感情や表情をアバターにマッピングできるようになるが、こうしたトラッキングは同時に、プライバシーに関する懸念も生み出す。Metaはトラッキングデータの用途を明確化し、制限すると約束しているが、同社にはユーザーデータを不適切に取り扱っていた過去があるため懸念はぬぐえない。

ゲーム機とは別物

　もしCambriaの価格が800ドル（約10万円）を超えるなら、Quest 2ほどの人気を集めることは難しいだろう。しかしMetaは、Cambriaのポイントはそこではないと示唆しているように見える。そうであれば、ゲーム開発者はこの新型ヘッドセットにQuest 2ほど注目しない可能性がある。

　MetaはVRプラットフォームを通じて、多くのゲームやアートプロジェクトに資金を提供してきた。しかしCambriaの目的は新しいゲームを生み出すことではないようだ。Metaが注目しているのは、むしろビジネス、トレーニング、フィットネス、ARクロスオーバーといった、メタバースのビジョンを実現するためのアプリだ。その意味では、Quest 2は当面（少なくとも「PlayStation VR 2」が登場するまでは）最高のVRゲーム機器の座を維持するだろう。

　The InformationはCambriaに関する最近の記事の中で、この新型ヘッドセットの最大の強みである高いディスプレイ解像度、アイトラッキング、パススルー技術を利用したMR体験は、仕事や未来のVRに対するMetaのビジョンを前進させる手段になると強調した。Cambriaと競合するハイエンドのVR・AR製品、例えばVIVE Focus 3やHololens 2、Varjoのヘッドセットなどは、明らかにビジネスユースを想定している。Metaのヘッドセットはゲーマーの関心を引くことに成功してきたが、企業ユーザーを説得し、ビジネス用途での採用を促すことは容易にはいかないだろう。

Quest 2を買うべきか、Quest 3の発売を待つべきか

Quest 2
提供：Scott Stein/CNET

　現在、手に入る情報から考えると、Quest 2の正統進化となる後継機が出るのは2023年以降となりそうだ。Quest 3はQuest 2と同等の価格で発売され、Quest 2を置き換えるものになると予想されるが、おそらく2022年内には登場しない。また、CambriaはQuest 3ではないと考えられている。もしCambriaの価格がMetaの言う通り、高い水準に設定されるなら、ほとんどの消費者にとってCambriaはQuest 2の競合製品にすらならない。しかしCambriaに搭載される先進的な機能、例えばアイトラッキングやMR、優れたディスプレイなどは、将来発売される手頃な価格の製品に部分的に採用されていくはずだ。

　CambriaとQuest 3が別物だとすれば、購入計画は立てやすい。Cambriaに関心を持つのは、予算に余裕のあるマニアかビジネスユーザーに限られるだろう。Quest 2の魅力である299ドル（日本では税込3万7180円）という価格に対抗できるVRヘッドセットは当面出てこないはずだ。

　Quest 2は、今も抜群の費用対効果を持つヘッドセットであり、Metaは定期的にソフトウェアをアップデートして新機能を追加している。いくらだろうと最高品質のヘッドセットがほしいという専門家でもない限り、年内に発売される見込みのCambriaを待つ必要はないだろう。ただ、「PlayStation 5」を持っている場合は、「PlayStation VR 2」の詳細が分かるまで購入を待ってもいいかもしれない。