しかし、家庭外のすべてのエンターテインメントと同様、ロケーションベースVRのさまざまな分野も壊滅的な打撃を受けた。バーチャルゾンビと戦ったり、「スター・トレック」の惑星を訪問したりできる600平方フィート(約55.7平方m)の6人部屋を各地で展開するSandbox VRは、Justin TimberlakeやKaty Perryなどの出資も受けていた。そのSandbox VRの米国子会社が2020年8月、破産保護を申請した。The VOIDもSandbox VRと同様のベンチャー企業で、かつてはDisneyと提携して「スター・ウォーズ」やMarvelの大ヒット作の没入型コンテンツをファンに提供していたが、ほぼ同時期に債務不履行に陥った。テクノロジー系メディアのProtocolによると、The VOIDの複数の地主が同社の設備を放棄物件として競売にかけたという。
しかし、世界各地で社会活動が再開するにつれて、ロケーションベースのVRは復活した。THE INFINITEなどの体験が複数都市の巡回を開始しただけでなく、Sandbox VRも破産保護からの復活を果たし、チケットの売り上げはパンデミック前の水準を上回っている。意地悪な運命のいたずらで、新型コロナウイルスによって文字通り空っぽ(void)になったThe VOIDも復活を目指しており、報道によると、2022年中の再開に向けて2000万ドルを調達したという。
必然的に、テクノロジーは進歩し、現在はロケーションベースの体験の領域である先進レベルの没入型要素が、より高度かつ低価格になって家庭でも利用可能になるだろう。しかし、筆者が話を聞いた専門家たちは、共有体験の魅力が消滅することはないと考えている。
Eckert氏が言うように、テレビが発明されても、映画館はなくならなかった。映画館のサラウンドサウンドと大きなスクリーンは、私たちを魅了し続けている。友達と一緒に映画を見に行ったり、暗闇の中でほかの観客と一緒に笑ったりすることの社会的な満足感についても、同じことが言える。
「ロケーションベースVRでは、それ(社会的な満足感)が『キラーアプリ』である」とEckert氏。「確かに、1人で出かけて、踊ったりすることもできる。しかし、友達と一緒に行った方がいつだってはるかに楽しい」。ロケーションベースVRを楽しむことも、少なくともVR内の人間がぎこちない漫画のようなアバターから進化するまでは、そうした身体的な体験を共有したいという人間の衝動を満たすものだ。
THE INFINITEが存在しているのは、クリエイターが同じ衝動を感じたからだ。ISSプロジェクトを主導したFelix & Paul Studiosの共同創設者でクリエイティブディレクターを務めるFelix Lajeunesse氏は、ISSから最初のVR録画が地球に送信されたとき、「われわれは、その映像の感情を揺るがす力に本当に感動した」と述べている。
そのISSの映像は、「Space Explorers: The ISS Experience」と呼ばれるVRシリーズで、すでにエミー賞を受賞している。ところが、THE INFINITEは、すでにVRを利用しているゲーマーやアーリーアダプター以外の人々もこのVRシリーズを体験できるようにする義務があると感じた。
「それを世界の人々と共有したかった」とLajeunesse氏は述べている。ロケーションベースの共同体験という方法によってだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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